中島みゆき 「傾斜」考
昔思っていたことをnoteに記しておこう第2弾です。
(第1弾はこちら↓)
「傾斜」は中島みゆきさんの9thアルバム『寒水魚』の中の2曲目にあります。
この「傾斜」の歌詞ですが、サビの部分にみんなの意識がいってしまって、この冒頭の部分はサラッと軽く流しているように思えました。
なので、昔引っ掛かっていたことを久し振りに検証してみます。
傾斜10度ってどれくらい?
坂道を車で走っていると『○○‰』と表示されていることがあります。何か%に「0」が多いぞ?と思って調べたことがあります。「‰」はパーミルと呼び、1000m進んだ時の高低差のことです。つまり上りでは、1km走って10m上がる勾配を、10‰と言います。そして、100m行って10m上がる勾配は、10%と言います。道路の角度は、勾配○%と「%」で表すことが多く、図形でよく使っていた勾配の角度「°」はほとんど使いません。サラッと読み過ごすと、「‰」や「%」と、角度の「°」を見間違えることも多いです。
この勾配の10%は角度で言うと、5.7°くらいで、角度10°の傾斜は、17.6%くらいになります。
つまり100m行って17.6mも上がる急坂を腰の曲がった老婆が登っていくわけです。想像が付き難ければ、10mだと約身長分176cm、上がることになります。結構急ですよね。(最後の勾配角度対応表 参照)
建築基準法ではスロープは12.8%以下、バリアフリー法の車椅子スロープは8.3%となっていますので、角度10 °はそれよりも急になります。
また、日本における公道の勾配は、道路構造令により上限が12%と定められているので、老婆は公道を上がっているわけではなさそうです。坂の多い長崎でさえ、平成24年に12%は無理なので、17%に置き換える条例ができたくらいですから、それでもギリギリ無理な坂道です。(12%を守るとかなり長い迂回路が必要になるのですがその迂回路を作るルートが無かったそうです)
なので、あまり気にも止めていなかった傾斜10度の坂道は、一般的にはあまりあり得ないくらいの坂道なのです。
となると、これは実際の坂道ではなく、老婆の人生の坂道になるのでしょう。
まぁ、実際は歌詞を見たらすぐに人生だな…と思うのですが、ちょっと裏を取って説明してみました。
そして、
坂を降りるということは、楽をすることかなと思いました。何度も降りたら元の位置に戻るには坂は険しくなります。
ただ、ここで「傾斜」を全否定してしまいますが、元の位置に戻る必要はあるのでしょうか。年をとって更にのぼらなくても良いんじゃないでしょうか。年をとっても自分を持つことは大事だと思いますが、ある程度切り捨てて坂を緩くする方法もあるんじゃないかなと思っています。
そう思っていたらサビになります。
俄然明るくなって注目を浴びた有名な歌詞です。
もうね。実際、年をとると確かに忘れっぽいんですよ。でも、若い頃は、そうじゃないですか?と言われても、強引に素敵だ!と言い張ってるだけじゃないか?と思っていました。
やっぱりそうでした。僕の場合ですけど。
年を取ってもそんなに大人になるわけでもないです。あまり変わらないことも多いです。人との付き合いが増えて、物事を行うスキルは確かに上がるけど、精神的なものは変わってないんじゃないかと思います。忘れっぽいのは確かだし、忘れっぽい!と言われて、クソッと思うし、イラッとくるし、でも忘れてるから仕方ないし、何なら忘れてるフリをする時もあったりして、そんなに素敵か?そうでもないぞ!と思うことの方が多いです。
そして体力的には、疲れやすくなって、年間を通すとほぼ日々最悪を更新します。体力は下り坂なのです。そんなのも含めると坂道をのぼる意味も考えてしまいます。何とかのぼらないで済む理由を考えています。
でも、悲しい記憶を忘れることを自分の飽和量を超えたから仕方ないよね…の考え方は好きです。
確かに人生の歌でしょうが、年をとるのは素敵でしょ?そう思わない?とか言われても、昔から思っていたのと変わりません。
僕は人生の最後の方になってまで、のぼらなければならなくなった傾斜10度の坂道の方が怖いです。
完
P.S.
道路構造令では公道で12%と書きましたが、大阪と奈良を結ぶ『暗峠』(くらがりとうげ)は国道なのに勾配37%もあるそうです。何故違法ではないのかというと、道路構造令は新設する道路もしくは改築する際に適用されるので、昔からある古い道路はこれが適用されていません。
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