悲しさから始まる救いを循環させて
「あんたは覚えてへんやろうけど、私もその優しさに救われている一人やから。だからあなたは何をしても許されるのよ。」
論理もくそもない、傲慢な言葉の羅列。
だからの先が一つも繋がっていないのに。
なのにこんなにも暖かくて優しくて泣けてしまいそうで少し悲しい言葉はない。
私は人に恵まれている。
私の周りには素敵な人しかいない。
でもだからこそ。
ちゃんと言っておきたい。
覚えていなくてごめん。
忘れてしまってごめん。
思い出させてくれてありがとう。
でも、あなたが肯定してくれるその優しさこそが、ずっとわたしを世界の端っこに追いやってきた張本人なんだよ。
「〇〇(わたし)は、ここぞという時に、その人に最適な言葉を選ぶのが上手だよね」
そう言ってくれた人は精神を病んで連絡が取れなくなった。私の言葉はあなたの支えになりましたか?少しでも、薬や睡眠に変わる、治療に繋がりましたか?その言葉はあなたの心をじんわり温めましたか?
私はもはや、人と向き合っていないのです。
「あなたはそういう星のもとに生まれてきてるのよ。認めた方がいい。でもそれはあなたが素敵だからなんだよ。それだけは間違えないで」
たとえ、そういう星のもとに生まれてきていたとしても、私には辛いのです。私の見えない範囲で泣いている人がたくさんいること。遠く離れた海の向こうで動かない家族を抱いている人がいること。日々、目の輝きをゴミ箱に貯金していく友人や家族がいること。毎日毎日、長方形の箱の中で自分のスペースを確保するために意地も肘も張り合う人たちのこと。助けられないその全て。
それなら全て終わってしまえば良いと思っていた。ううん。思っている。
でも終わりなんてこないことも知ってる。
だったら目を閉じようと思った。ぎゅっと目を閉じた。次は耳を塞ごうと思った。そうして感受を止めて、一人になれる場所で静かに生きようと思った。そこでなら、私は傷つかないで済むから。
そう、もう傷つきたくなかった。
「ちょっと待ってよ。どうして、そんなトゲトゲの言葉をテーブルの上に置くんだよ。そんなことを言うと、悲しむことがいるってみんなわかってるじゃん。」
「まって違うんだよ。今この人が言ったことはね、君が解釈したような意味じゃないの。待って、言葉だけを受け取らないで、言葉の裏にはもっと大切な思いがあって、そこを読み取らなきゃ。」
「その言葉は、あの人にとって致命傷となるって空気が言ってるじゃないか。どうしてそんな明白な逆鱗に触れようとするんだ。」
「いや、今あなたが放った言葉の色は青色で形は三角じゃないか。そして鋭角はあなた自身に向いてるじゃないか。どうしてそんな自分だけを傷つけて周囲を守ろうとするんだ。それになんで、その孤独に周りの人たちは気づかないんだ」
ああこれって私だけなのか。
「身体が動かないくらいに〇〇との話が効いてます(笑)。きっと考えないように蓋をしてた部分があったんだろうなと思ってます。」
ああ、またやってしまった。
相手と対等に向き合えば向き合おうとするほど、
こうしてまた、言葉が私を追い越してしまう
この大好きな人に、言ってはいけない言葉を言ってしまった。
どんな悪口よりも、陰口よりも、非難よりも、妬み嫉みよりも、心に傷を残すのは存在を揺るがすような言葉だ。
人は妥協の内に生きている。妥協し忘れた人、妥協を母胎に置き去りにしてきた人は子どもと呼ばれたりする。
妥協という蓋をこじ開けるのは、一人の人間の存在を揺らがすような言葉だ。
時に言葉は暴力になる。
暴力的な言葉として有名な罵詈雑言たちは実は大した暴力ではない。
なぜなら、それらはカスタマイズされていないから。
本当に暴力的な言葉は時として、もっとも優しい形をしている。
綺麗な花にこそ棘があるみたいに。
「あの時、一人やったわたしの所に来てくれてありがとう」
本当に辛いのは、あなたを大切にしてくれる人がいるのに、世界に誰もいないように感じてしまうこと。
そんな気持ちを味わうのは私だけで十分なんです。
ずーーーーっと小さかった頃から、わたしはそうだったから。
わたしはみんなとは明確に違っていたから。
だからこそ、みんなにはそこに近づいてほしくなかった。
わたしのいる場所では奇数の座席表は、必ず偶数になる。
私はよくわからない。
同じ思いをしてほしくないから。
その一心で身体を動かす。
でもそれを優しさと呼ぶのなら。
それは優しさなのかもしれない。
そうするとやはり、優しさは悲しさの裏側にある。
悲しい人ほど優しいのかもしれない。
きっと、私はまた忘れてしまうけど。
でも私こそ、みんなに救われていること。
それだけは覚えておきたい。
私の悲しさが誰かを救って、その誰かに私は救われる。
こんな悲しさから始まる素敵な循環。
こういうのがもっと溢れてても綺麗だなって思ったりした。
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