僕の頭の中
映画『JOKER』を観てきた感想。
留意事項が三点。
1. ネタバレを含むこと (Spoiler Alert!)
2. バットマンとかアメコミはあんまり観ないので背景とかはわからない
3. 評価ではなくただの感想とか思いついたことをつらつらと書きおとすだけ
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本邦公開から二日後の日曜日。
六本木TOHOシネマズ21:05〜の回は前列からプレミアムシートまで満席、チケットは夕方には売り切れ状態だった。
アメコミファンが観にきてるのか、はたまたヴェネチア国際映画祭金獅子賞のおかげなのか、多分後者が多そうだった。
自分は、狂ったピエロが人を殺しまくるという大雑把なあらすじを聞きつけ観たくなった完全なニワカだった。
映画を観てわざわざ感想を文字に起こしたくなるのは久しぶりだったのでいくつかのテーマごとに頭の中を整理したい。
暴力riot
映画『JOKER』の最初の自分的テーマは暴力。
なぜなら、理不尽や不満を暴力でスッキリしよう/解決しようとする映画は時代にあっていると思ったから。
これまた浅い議論だけど、香港のデモを想起せざるを得なかった。
暴力による「意思表明」はなるほどスカッとする
暴力による何か「解決」はその一方で、とっても難しい
そういう感想を持った
また、暴力はどこまで正当化できるだろうと思った。
子供adolescenceによる暴力は?
精神異常者による殺人は?
貧者による権威(富者)への暴力riotは?
肉親への復讐は?
暴力自体よくないとかそんな綺麗事じゃない。暴力以外の手段がないように思える状況って絶対ある。と少なくとも自分の/彼の生い立ちを思い返すと俺は思わざるを得ない
香港の「デモprotests」もかなり過激になっていて、法的に誰が誰を裁ける状況なのか?そもそも裁かれるべき人間はいるのか?裁く主体は正統か?
モダニズムで非合理的なものは排除されたはずだった、あの共産主義という巨大な思想形態も合理化の暴力で倒したはずだったのに、ここ半世紀、世界中で非合理的なものの再興が目に付くようになった
暴力は意外にも、今世紀の重要なテーマかもしれない。
分断division
舞台となるゴッサムシティでは貧富の社会的分断がいたるところに見え隠れしていた
貧者は富めるものを心の底から嫉妬し、富豪は貧者を詰り、時に虐めた
そんな水面下の分断は、JOKERが証券社員を射殺したことで、目に見える形で現れる
こういう絶対存在しているんだけど、目に見える形に現れないような社会的、経済的、民族的、思想的、価値観的、政治的な、分断ってあるよね
グローバルな競争はそれを根深く、目に見える形へと変えがちかもしれない
一触即発の分断は真っ先にイギリスのRemainers vs Leavers が浮かぶ
Second Referendumが行われようものなら、Remainersの中からJOKERが現れ、深刻な分断にならないとも言えない
世界はいま、劇中のゴッサムシティの3歩くらい手前の状態にあるかもしれない
しかし一方で、全米で、全世界で大人気の道徳心理学者ジョナサン・ハイトはその著書'The Righteous Mind: Why Good People are Divided by Politics and Religion'(邦題『社会はなぜ左と右にわかれるのか―対立を超えるための道徳心理学』)において
心理学、哲学、社会学、政治学、人類学、遺伝学など最新の研究分野の膨大な実験結果から人間が左右に分かれる科学的根拠を見出した。
曰く、人間の正しさの基準(Righteous Mind)は6つありそれらの受容器に応じ人間は分断されるものだと主張する
(もちろん、経済的な格差は自分のリベラリズム的価値観からすれば正されるべきだが、、、)
問題は分断divisionを対立opposition, conflictに昇華させない社会のあり方を考えることだなと思っている。
多様性論の限界も指摘されたいま、何が最良なのか何もわからずにいる。
カリスマcharisma
アーサー/JOKERをカリスマcharismaに仕立てあげて運動の原動力とするのも時勢にあっていると思った。
こういうのは古代ローマから、いやもっと前からあったことかもしれないが
ここ5年ほどでこのcharismaに頼った権威へのカウンターは特に活発になってきているように思う。
ナイジェル・ファラージやドナルド・トランプ、グレタ・トゥーンベリのようなラディカルな運動の象徴的存在は常に人々the massを熱狂させる
近年のカリスマには頭の良さとかリーダーシップとか、マキャベリが『君主論』で語った「資質」は、この際あまり関係なくなってきているかもしれない
最近強調されるのは強い言葉で紡ぎ出されるストーリー性かなと思う。(これは根拠とか特にないけれども)
大衆の水面下にある不満や思いを爆発させるトリガーになる大きな何かを成せば彼/彼女はもうカリスマとして瞬く間に拡散していくのが、JOKERはとても今風だと思った
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終わりに
4chやTwitterを覗くと賛否両論が溢れているみたいだけど、少なくとも感想をネットに書きたくなるくらいにはセンセーショナルな作品だったと思うのでおすすめです。
最近の惰性的で生産性の低い毎日はスリルなくただこなしている感じがして大変辛い。
PEDROの『甘くないトーキョー』の歌詞が突き刺さる毎日
何を頑張ればいいかわからなくなっても
ただ辛くならないように
朝を迎えられるように
ここから出られるように 金さえあれば今すぐに
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