青春18きっぷで特急に乗った話
この歳になってから青春18きっぷを使って旅行をすることにハマった。時間はそれなりにあるので青春18きっぷのシーズンになる毎に、いそいそとどこかへ出かけて行った。
あるとき、飯田線という路線があることを知った。豊橋から辰野までの長大路線で、全線乗り通すと7時間くらいかかり(直通列車もある)しかもその中にはいわゆる「秘境駅」が多数含まれているという。これはぜひ乗りに行きたいと矢も楯もたまらなくなった僕は早速実行に移すことにした。
2020年8月、仕事終わりの金曜日に青春18きっぷを使って移動、23時を過ぎて豊橋に到着。そのまま駅前のサウナオーギに投宿した。昭和ストロング系のサウナで、入れ墨率が3割くらいだった(タトゥーではなく入れ墨)。もう今は無くなってしまい残念だ。
翌朝、豊橋駅から飯田線に乗ろうとしたが、あるはずの直通列車がない。どれもこれも水窪(みさくぼ)行だ。あれぇおかしいなと首を傾げながらなんとかなるさと乗り込んだ。しかし車内でスマホで調べるうちに、この1ヶ月前の豪雨で不通区間があることが判明した。完全に調査不足である。しかたがないので本長篠で折り返して豊橋に戻った。
とはいえこの日、上諏訪に宿を取っていたので、なんとかして上諏訪にはたどり着かねばならない。豊橋から名古屋に戻り、中央本線経由で上諏訪に向かうことにした。中津川まで快速、そこから塩尻までは普通列車に乗った。
木曽川沿いを進む線路は景色も良く、飯田線の代わりに列車の旅を堪能したがいかんせん天候が悪くなってきた。ポツリポツリと降り出した雨はいつしかザーザーという音に変わった。車内では、天候次第では列車が止まるかもなどという不穏な内容のアナウンスがなされ、そして藪原(やぶはら)という駅でとうとう止まってしまった。
1時間の降水量が規制値を越えたとかで、1時間の降水量が規制値を下回り、かつこの先の区間の安全を確認しないと運行を再開できないそうだ。いやぁえれぇことになったぞこれはと雨空を恨めしく見上げていたがどうしようもあるめぇ。車掌さんに、この駅で下ろされるということはあるのかと尋ねると「どれだけ時間がかかっても必ず終着駅まで運行するか、それが無理なら始発駅に戻ることになります。お客様にここで下りていただくということはありません」とのことであった。
地元の乗客は車内で電話をかけて、この藪原駅まで車で迎えに来てもらう算段をする人が出始めた。いつまで待たされるかわからないからまぁそりゃそうだろうなと思う。その内、隣のホームに特急しなのが滑り込んで来て停車した。藪原は特急停車駅ではないから、この大雨の影響を受けてのことだろう。せっかく特急に乗っているのに気の毒なことだと思う。
2~3時間ほど待っただろうか。雨足が落ち着いてこの先の区間の安全を確認したので運行を再開するとのアナウンスが流れた。この雨の中安全を確認した人がいるのかと驚き感謝した。ついで、塩尻以遠に向かう人は塩尻まで特急しなのをご利用くださいというアナウンスがあった。えっいいの?僕青春18きっぷだけどいいの?一応車掌さんに確認したら「かまいませんよ。どうぞ」とのことだった。うっひゃあ。ということで、青春18きっぷなのに特急に乗るという、ある意味飯田線乗り通しよりも貴重な経験をした。しかもどこに座ってもよいとのことだったのでちゃっかり指定席に座らせてもらった。
飯田線乗り通しはいつかリベンジするとしても、飯田線の不通といい、この日の中央本線の大雨による運行見合わせといい、山岳区間の鉄道の管理というのは本当に大変なのだなとしみじみと感じた。
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