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イツエとわたしの青③-『全部嘘だよ。』
2nd demo 『全部嘘だよ。』 2011.05.05
イツエについて語ろう、第3弾。今回は2つ目のCD『全部嘘だよ。』です。すでにタイトルに「嘘」という言葉を入れてしまっているな。
聴きたいタイミングが明確に決まっている3曲だと今、気づいた。あと、①を書いたときからわかっていたことだけど、回を重ねるごとに段々と「大好き」以外に言うことがなくなってきた。最後は記事ひとつに「大好き」としか書いていないようなことになるかもしれない。曲のここがどうで、みたいなことはやめてどんなことを考えながら聴いてしまうかを書いていこうかな。
生きているとときどき「全部嘘だよ」って言いたくなってしまうこと、あるよね。そんな器用に嘘なんてつけないのにね。
1. 言葉は嘘をつく
イツエの初MVが作られた曲、“言葉は嘘をつく”です。これを書くにあたってMVを見ていたら大事なことを言い忘れていたのに気づいた。話します。
イツエは「静と動」をテーマに始まったバンドだった。ボーカルと楽器隊、女と男、白と黒、静と動。このMVではそれがよく見えるでしょう? ライブでも大暴れしているメンバーの真ん中でふわふわ、くるくると比較的静かに歌う瑞葵さんがいる。衣装も楽器隊は黒、瑞葵さんは白だった。初めて黒と白を辞めたイツエを見たときはちょっと寂しかったな。そこから色々な顔が見えたんだけどね。
「人の痛みを知らないくせに傷つきたがる」という歌詞。自分が傷つけられたと感じたとき、この歌詞に縋るように聴いてしまう。私の痛みを理解しようともしないのに、自分が傷つくことばかり立派にやっちゃってさ、と思う。でも聴いているうちに、では私は、誰かの痛みを知ろうとしているのだろうかと気づく。私を傷つける人も、何かに傷つけられているはずだ。私が傷つけたことだってあるだろう。
もちろん自分の傷は痛がればいいけど、その人の傷にも目が向けられるといい。傷ついたときに攻撃的にならないよう、この曲を聴く。優しくありたい。それにしてもサビ頭のインパクト、すごいよね。ブレイクが入ってからサウンドと鋭い言葉が降ってくる。たまらなく好きだ。
2. 夏日
これはもう、タイトルの通り。夏日が来たら聴く。高校生のときはバス通学の日もあったから、よくこれを聴きながら窓の外を見ていた。通してずっと歌詞が好きだなあ。「君を愛してるよ 悲しみが君でも」という終わりで泣いてしまうことが多々ある。「幸福の裏側に」とか、それについて考えてしまう。
他人を愛することが、悲しみそのものなのかもしれない。幸福の裏側って、溶けて同じになってしまいそうなくらい表側と近かったりして。そもそも、幸福の裏側は不幸ではないんじゃないか。とか、ぐるぐる、考える。どうしても遠いあの日のこと、なくしてきた人たちのことを思ってしまう。
サビの歌詞を見てほしい。何かを愛することってこのくらい気持ちが入り乱れることなんだと思う。人間の心に起こる矛盾とか理不尽とかがちらつく言葉たち。ちょっと気づきたくないような、悲しいけど本当のことをゆらりとした音で軽快に聴かせてくるのです。
3. ある朝の情景
入りのギターよ。久慈さんのこういうところがとっても好きだ。「イツエ、戻ってきてよ」って1番に思ってしまう曲かもしれない。これも今、書いていて気づいたこと。これはいい朝日に当たったときに聴く。その気候は少し、じりじりと太陽に焼かれている自覚を持つようなものであってほしい。
歌詞に何度か「嘘」が入っている。探してね。「どうしたって世界は変わらないんだ」という言葉を高校生のときには諦めのほうで捉えていた。今考えるとそんなにネガティブな表情でもないのかな。私1人が動きを止めても世界は機能するんだから好きなことをしたらいいよ、と言われたことがある。そういうことだと思って聴くことにする。
バンドサウンドだけでいうと1、2を争うくらいに好きな曲。ひとつひとつ丁寧に音を拾って聴けば、イツエらしさが濃縮されていることがわかる。
全部嘘だよ。
最初のデモより何倍も自信をもってイツエを表現している気がする。この頃はまだイツエのライブを見に行けていなかったから、前回で話した『あの小鳥はいつ泣くの』とこのデモの曲はあんまり生で聴けていない。こんなことを言ったって仕方ないのだけど、もっと早くからたくさん聴きたかったな。
ワンマンのロングセットではデモの曲をやることもあったから、いつも期待して行っていた。懐かしいね。イツエのライブを見る前ってびっくりするくらい緊張するの。それで泣かされて、愛されて、感情に振り回されてボロボロになってライブハウスを出る。一言も話したくなくなってしまう。
高校生の間にイツエを見ていた人って多分すごく少なくて、私にはそれができた。幸せな出会いだ。
イツエの話をするとなると腰が重くなってしまう。気持ちが強すぎるからですかね。伝えたいようで伝えたくないような、不思議な気持ちになる。でも次も書きます。今回も読んでくれた人、本当にありがとう。
またね。
イツエ
公式サイト/Twitter/YouTube/SoundCloud
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