英文契約書にある「Credit」例文集(その1)
これまでも何回か取り上げた「Credit」についてです。タイトルは、「英文契約書にある「Credit」例文集(その1)」としてありますが、「Credit」の多様な使い方を契約書の翻訳という観点から英文契約書にかぎらず、様々な分野で遭遇した「Credit」の用法を参考に例文を作成してみます。「Credit」のいろいろな使い方を作成した例文を通して見てゆきます。
1.「Credit」の用例
Unrecognized net transition asset is credited to expense over 10 years on a straight-line basis. (未認識純資産は、10年間に渡り定額法で費用として戻されます。)
Some roads have improved greatly over the past 10 years, credited in part to the government infrastructure projects.(政府のインフラ整備プロジェクトのおかげもあり、一部の国々の道路はこの15年間でかなり整備されてきた。)
Thomas Edison is credited with the invention of light bulb. (トーマスエジソンは、電球の発明で知られています。)
The securities account of an investor in one clearing system may be credited during the settlement processing day immediately following the settlement date of the other clearing system.(一方の決済機関の投資家の証券口座は、もう一方の決済機関の決済日の直後の決済処理日に預けられる場合があります。)
the cash account will be credited for value on the settlement date.(現金口座には対価が決済日に入金される(払い込まれる)。)
Refund due on tickets paid for with a credit card can only be credited to the credit card account used for the original purchase. (クレジットカードで支払われたチケットに対して支払うべき払い戻しは、最初の支払いで使用したクレジットカードの口座に対してのみ入金できます。)
When interest rates rise, high interest rates are credited to interest rate-sensitive products. (金利が上昇すると、高金利が予定利率変動型商品に付与されます。)
If the mileage is not credited to your account within 3 weeks after your travel, xxx(旅行後3週間以内にマイレージが口座に入金されない場合は、…)
It is credited in income statement. (損益計算書に収益として計上)
It is cash flows debited or credited to an account. (口座に入出金されるキャッシュフロー)
Consumption taxes paid are not fully credited against consumption taxes received. (支払われた消費税が受け取った消費税に対して完全に計上されていない。)
2. 貸方・借方についての疑問
ところで「以前にも触れましたが、辞書を見ると「Credit」の持つ意味の1つに「ある金額を〕〈人の〉貸し方に記入する」=「credit a sum to a person’s account」とあります。貸方=Creditで借方=Debitです。
そこで「借方」と「貸方」という言葉が何故そう呼ばれるのか調べてみました。
なぜなら、「借方」と「貸方」という漢字の意味だけから見るとややこしいことになっています。例えば、貸借対照表では、自分が貸しているお金(貸付金)」なのに貸借対照表の左側の「借方」に書かれており、反対に「自分が借りているお金(借入金)」は貸借対照表の右側の「貸方」に書かれていることです。
以下は、ウィキペディアからの抜粋です。
「日本に初期の複式簿記と中央銀行システムを輸入したのは福沢諭吉で、「debit」「credit」をそれぞれ「借方」「貸方」と翻訳したのは彼である。初期の財務諸表や複式簿記は債権・債務を記載する目的が主であり、主に銀行の経理で使用されていた。それを相手方から見た視点で記録していたため、貸方には相手方が貸した分を記載しているという意味があった。時代が下り、簿記技術が発展し、記録する内容が金銭の貸借関係から拡大していくにつれ、単なる「右側」という意味のみの符号と化した。」ということで、今は、単に、「左側」、「右側」の符号になっているようです。
複式簿記が生まれた中世イタリアでは、帳簿の左側に「自分からお金を借りている人の情報」を、右側に「自分にお金を貸してくれている人の情報」を書いたからといわれています(諸説あるようですが)。
左 右
借方 Debit 貸方 Credit
貸付金 借入金
自分は貸している 自分は借りている
(相手は借りている。) (相手は貸している)
以前にも書きましたが、例えばAがBに商品を販売し、その代金を後払いにした場合、Aは、Bに対する売掛金(債権)を有し、BはAに対する買掛金の支払い義務(債務)を負っています。この状況は、この売買代金は、A(債権者)の立場では、「my credit to B」、一方、B(債務者)の立場では、「my credit from A」とすることができます。https://www.ings-web.co.jp/archives/736 「Credit」は双方向で使用されています。
いずれにしても「Credit」は、奥の深い言葉です。
参考図書
ウキペディア:「借方」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2020年11月26日 (木) 16:55 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/借方
新英和大辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
英文会計入門(日経文庫)他