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底に溜まる黒い何か。
暗雲立ち込める外、窓に打ちつけられる雨粒を指でなぞる。
無数の雨粒は重力に従い、スッ…と窓を滑る。
2つ別々の水滴は進むにつれてひとつになった。
ふぅ、と自然に止めていた息を吐き出す。
2人で、生きていこうと約束した真夜中を思い出す。
お互いに自分の思いを他人に伝えるのが下手くそで。
お互いに自分が他人(ひと)から傷つけられることに怯えて。
あの時信頼出来る相手は目の前の相手しかいないと確信したのに、
さぐって、さぐって、さぐって、また探って。
お互い自分をさらけ出す事は弱みを見せることだと思った。
腹の底の読み合いが止まらない、ふたり。
さぐって、探って、さぐって、またさぐる。
彼は言った。
飽きられたくないから1μmずつ距離を縮めているつもり。
私は言った。
貴方を飽きることなんてないのに。
そうして少しの間をおいて、
私は言った。
仕事再開したら私の事すっぱり切りそうだもんね。
彼は言った。
あながち…、やらないとは言えないね。
どうして、そんなことないよと言ってくれないの。
どうして、はっきり否定してくれないの。
そう言いかけた口をつぐみ、口角を上げる。
「ほら、やっぱりね!そういうこと言うと現実になるよ」
明るく応える。
努めて明るく、あかるく、明るく。
また止まっていた息を吐き出す。
彼のいる寝室へ戻ろうかとぼんやり考える。
窓の外、暗雲立ち込める空模様、先程よりも激しい雨音に耳を傾ける。
ゴロゴロと落雷のような音が混じっている。
カーテンを閉め、喉に引っかかる何かをごくんと飲み込む。
まだまだ2人で生きることを諦めない。
まだまだ2人の夜は終わらない。