ダイダラボッチvsポール・バニヤン(3)
承前
「どおりゃああああっ!」
「キャオラァァァァァッ!」
太平洋を挟んで赤城山とアパラチア山脈が空を舞い、互いに衝突しました。ものすごい衝撃がびりびりと伝わり、ポールくんのりっぱなヒゲを揺らします。
続いて浅間山、磐梯山、榛名山が飛んできました。ポールくんもロッキー山脈を投げようとしましたが、すでに投げていて手近な山がもうありませんでした。
仕方がないのでポールくんは手にした斧を振るい、浅間山、磐梯山、榛名山を真っ二つにしました。半分にされた山々はそのまま足元の地盤にくっついてしまったので、ポールくんはこれを新しいアメリカの山だと決めました。
もうひとつ槍ヶ岳も飛んできましたが、これはトゲトゲしてて危ないのでサッと避けます。遠くから物を投げてばかりのダイダラちゃんに、ポールくんはいらいらしてきました。
「おいコラ臆病者!オレが怖くてそんなとこで縮こまってんのかァ?姿を見せやがれ!」
臆病者と言われてはダイダラちゃんも負けていられません。ダイダラちゃんは体をおおきく膨らませて、空を覆わんばかりになりました。アジアのあたりから西海岸まで腕が届きそうな勢いです。
「誰がビビってるってぇ?ナメんじゃねぇぞヒゲ!」
「うわ〜ビックリ〜!まさかそんな…」
ポールくんは顔を覆ってしょげてしまいました。降参してしまうのでしょうか?
「本気を出してもそんな大きさなんだ〜!!」
ポールくんは舌を出してダイダラちゃんを煽りながら巨大化していきます。あっという間にダイダラちゃんと同じサイズになってしまいました。
「いや〜ビックリだわ〜。大したことないわ〜。」
「あァ?ナメんなよ!まだいけるわ!」
ダイダラちゃんはカンカンです。そのまま更に体を膨らませてゆきます。雲もはるか下に見えるようになりました。
「…グワーッ!酸欠グワーッ!」
「ヒャヒャヒャ!ひっかかりやがったな!」
大きくなりすぎて成層圏を突破してしまったダイダラちゃんは大慌て。あわてて身体を戻しますが、戻る途中にポールくんから何発かいいパンチをもらってしまい、太平洋にダウンしてしまいました。
ざばーん
ざばーん
ざばーん
大津波はまだ生き残っていた地上の生き物を根こそぎさらってしまいました。みれば大陸の形もすっかり変わっています。
適度な大きさに戻った2人は太平洋のど真ん中でまたもや殴り合いをはじめました。そろそろ2人ともなんで殴り合ってるのかわからなくなってきましたが、お互い負けを認めるのは嫌なので昼も夜もなく殴り続けました。
地は裂け空は落ち海は濁り、黙示録の光景が地上を埋め尽くす時、天界からいくつかの視線が2人を見ていました。
「そろそろシメるか。」
「うむ。」
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