回想録 11才17才n君


あの夜n君と会ったのは、久しぶりのことだった。

n君は幼稚園からの同級生で、小学校では席が近かった。

あれは6年生の夏。
掃除の班が一緒で、一緒にグラウンドにかけていく。
隅の方には白い登り棒が7本あって、
夏草の緑に映えてとてもきれい。
それぞれに掴まりながら、夕方に再放送していた、TVドラマの話をする。
お互いに楽しく見ていたから、いつもずっと喋っていた。


なのにその日の光景は、いつもと違うものだった。
・・・あれ。おかしい。

もう届かないんだ。だって次元が違うんだ。
別の世界に切り離された、2本となりの登り棒。


会話は時差なく成立する。
声はスムーズに届く。
でももう、n君のいる場所はここではなかった。
予感は誤魔化しようもなく、
どうすることもできないことだった。


再会は、それから6年後。
高校3年生の8月の夜。

終電のとまる無人駅がどこか、全然わからなくなっていた。
街灯もろくにないような田舎道。

怖いね〜〜〜
困ったね〜〜〜

なんて思っていると、ひゅっと光が出てきて輝いた。

ぴゅーっと動いて、くるくる回っておじぎした。
(僕に、ついてきて)

追いかけると、ひときわ大きな光は、目的の電車のものだった。

とにかく光は、私を駅まで案内して消えた。

そして私は、n君が亡くなったことを知る。
急カーブでの自動車事故で、後ろの真ん中に乗っていた彼だけが亡くなった。


6年前。
あの登り棒の、2本さきの世界のこと。
少なくともあの日から、n君はもういなかった。
隣にいると思っていたのに、どうやっても届かなかった。


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