回想録 14才チクッて刺さって落ちられない
14才
久しぶりにやっとの思いで登校した朝。
担任の先生に準備室に呼びだされ、すごい威力で殴られた。
身体は飛んで、壁でバウンドして落ちた。
「人生をなめんなよ」
「サボりがそんなに楽しいか?お前に将来はないよ!!!お前に入れる高校なんてひとっっっつもないよ!!!」
それをたまたま廊下からみていたaくんが興奮ぎみに、「井上、ふっとんでたね!人がとばされるとこ、初めてみたよ」と言った。
(わるい意味ではなくて純粋に。その後も思い出深い出来事として語られる)
(そしてこの先生は体育会系でも殴ったりするタイプでもなく、細身で英国製のスーツを好む、インテリでジェントルなタイプだったから、aくんは尚更驚いたのね)
14〜15の頃が、たぶん一番きつかった。
よく身体から抜けていて、自分がどう存在しているのか、わからなくなりがちだった。
だからなのか妖精をよくみたし、桜の木の人と会ったのもこの頃だ。
ここがなにかのポータルなのか。
さまざまな次元があらわれては交差した。
チクッて刺さって落ちられない
螺旋階段の中を落下する。筒みたいな空洞になっている。
背中が下の状態だ。速度があるので手足は垂直みたいになる。
四角い小窓が並んでいて、様々な時代の様々なシーンがみえる。嫌なんだよ。わたしはここに来たくないんだよ。毎晩毎晩なんなんよ。
あそこに入ればその時代にいけるんだな、、、とは、なんとなくわかるけれど絶対しない。
だって帰れなくなったらどうするの??わたしはわたしをまもりたい。
そしていつも、一番下までは落ちられない。
途中でかならず刺ささるから、わたしはそこで眠れない。
雪が降る日の窓も危険。
部屋の南側にある小さな窓だ。
あちら側が映っているから目を向けない。
あわてず、さわがず、気づかないふりをする。
やばいなあ、、、
これではふっと
連れ去られてしまうやもしれぬ。。。
そんななか、わたしはこの世界に留まるための、ルーティーンを生み出した。
病院の売店でカバヤのまん丸いフルーツキャンディを買い込み、枕元のガラス瓶に満杯詰める。
(マスカット味とモモ味を同量)
身体をぎゅっと丸めて防御の姿勢。ダンゴムシの固い甲羅をイメージだ。
そして飴を口に入れる。
この形と大きさがちょうどいい。まんまるは力学的にも一番強い。
そして3つは一緒に入れる。
ひと晩でひと瓶なくなることもある。
全力で噛み続けることで、なんとか夜を切り抜けた。