シビウ(ルーマニア)週末旅行
2023年5月26日から29日までルーマニアのシビウに行ってきました。マイナーな旅行先なのもあってあまり記事が多くないので、コロナ後の情報更新もかねて記事にしました。
なおドイツ在住でドイツの地方空港からシビウに直接飛んだので、日本から訪れる場合は現地までの移動などについてはあまり参考にならないかもしれません。【ドルトムント空港→シビウ空港と出入国】と【ビザ、健康保険・ローミング・コンセントなど】はその場合読み飛ばしていただければ。
【なぜシビウ】
2月末にイスタンブールに行って以来旅欲が収まらなかったので、春と初夏のドイツは祝日も多いしどこかの週末でちょっとどこかに行こうと思っていました。検索していると、隣町のドルトムントからルーマニアにたくさんフライトがあることを発見(なぜこんなにあるのかはわからない)。まだ行ったことないのでそれじゃあルーマニアということで。ドルトムント空港も使ったことないし。
ブカレストはもちろんクルジュ・ナポカ(Cluj-Napoca)やヤシ(Iași)、トゥルグ・ムレシュ(Targu Mures)もありましたが、大好きなDachaugen(ダッハアオゲン:屋根にある目の形の採光口・通気口)が多いのと街並みが異世界感なのと歴史的にドイツとのかかわりが深そうなのでシビウにしました。
【Wizz Air】
今回はWizz Airで飛びました。ヨーロッパの格安航空会社です。ライアンエアー的な。座席指定や預入荷物が追加料金なのはもちろん、機内持ち込みでも無料なのは40*30*20cmという小さいサイズのみ。でも3泊4日だからリュックだけで十分だし、デュッセルドルフ空港からのフライトは数が少ないとか高いとか色々合わず、Wizz Airデビューを決めました。
ちなみに予約の際にいろいろ売り付けてきたりしれっと有料のものも一緒に予約させようとしてきますw以下、ちょっとびっくりした注意点:
・空港チェックイン料金€40
オンラインかアプリでチェックインしない場合、空港チェックイン料金€40が取られます。事前に空港チェックインサービスを買っておくと€13なので、オンライン/アプリでチェックインできない場合は事前に買っておきましょう。アプリの場合はアプリ内でボーディングパスを呼び出して提示すればOKですが、オンライン(ウェブサイト)の場合はボーディングパスを印刷して持って行きましょう。さもなくば空港チェックイン料金が降りかかります。
・非EU市民
非EU国のパスポートの場合、オンライン/アプリチェックインでもカウンターに出頭してパスポート(と必要な場合はビザ・滞在許可)を提示しなければなりません。これは料金はかかりません。
お金とサービスについてはシビアですが、変にごねられたりということはなかったです。オーバーブッキング、運休、遅延などが出た場合はどうか分かりませんが……。
【ドルトムント空港→シビウ空港と出入国】
ドルトムントの隣町ボーフムの自宅から公共交通機関でドルトムント空港へ行きました。自宅最寄り駅→S-Bahn(都市近郊列車)→ドルトムント中央駅→地下鉄→Aplerbeck停留所→バス490番→空港という流れです。ドルトムントの中央駅から空港へはシャトルバスがありますが、これは通常の公共交通機関には属しておらず(つまり学生定期が使えず)€10かかるのでケチりました(ドイツ語通じるし、ドルトムントは割と知ってるし)。
初めてのドルトムント空港、めちゃくちゃ小さかったですwチェックインカウンターでパスポートとドイツの滞在許可を見せ、セキュリティを抜けてパスポートコントロールへ。しかし、パスポートコントロールのところに誰もいない!他数人と一緒にウロウロしていると、空港職員らしき人が通りかかりましたが「え、オレ出入国の人じゃないよ。というか、先行きなよ必要ないない。」いや…パスポートコントロールがないわけないだろということでボックスの裏のゲート前で見張っていると、Polizei(警察)と背中に書いてある人がボックスに来たので戻ってパスポートと滞在許可を見せ無事終了…。
ルーマニアはEUですがシェンゲンにはまだ加入していないので、ドイツからでもパスポートコントロールがあります。
何はともあれ無事に飛び、シビウに到着。着陸時に拍手する陽気な搭乗客ばかりでした(着陸拍手、初めて見たよ……)。
もちろん今度はルーマニアへの入国手続きです。一緒に着いた人たちはほとんどが地元民のようでした(手に持ってた身分証にルーマニア国旗がついてる、そしてお迎えがある人が多かった)。「ルーマニアは初めてか」「滞在目的は何か」「どこに行くのか」「シビウだけなのか」「どこに泊まるのか」とまあ割とちゃんと質問されましたが、やましいことは何もないので普通に答えて終了。揉めたり高圧的な感じはなかったです。
【シビウのバス】
空港サイトによると自販機でチケット(約50ユーロセント相当)を買って中心地行きへのバスに乗れるとのことで、バス停へ。しかし券売機がない。これはアプリを入れるパターンかと思いつつ、バス停のベンチに鎮座する現地民っぽくないオジサンにきく。彼(後にドイツ人と判明しなーんだドイツ語で話せるじゃん!と意気投合)も同じ状態だったらしく、バスの運転手から買えるんだろうと予想し2人で5レイ札を握りしめ運転手さんへ突撃。運転手さんは「カード」とだけ返答……。そしてバス発車。カードってプリペイドカードがあるのか?じゃあどこで買えるんだ?バス発車したけどこのままじゃ無賃乗車(検札されたら罰金……)。
とオロオロする我ら外国人旅行客を救ってくれたのは、スマホでマシンガントークしていたお姉さん。車内の黄色い端末で+ボタンを押して「1(人分)」と表示されたところでデビットVISAカードをかざし事なきを得ました。
なおレシートやチケットは発行されません。検札しないのかな……。料金は5レイ。別の機会に券売機で買ったところ3レイでした。停留所に券売機がある場合は現金もしくはカードで買えます。細い紙切れだったら車内の黄色い端末に突っ込んで打刻、カードっぽい形なら黄色い端末にかざすだけです。
【旧市街】
ドイツとかヨーロッパによくあるタイプの街です。教会、広場、そこに立つ飲食店とホテル、石畳、異世界転生感ある古い建物、城壁。お城はないです。シビウの特徴だと思うのは、ローマカトリック、ルター派、東方正教会それぞれの教会が1つの旧市街にあること、城壁と塔が残っていること、Dachaugenです。
三位一体教会は入場料無料です(お布施ボックスがあるので、無理のない範囲で入れていきましょう)。ルター派教会は教会と塔合わせて入場料15レイ(約3ユーロ)。釣銭があまり用意されてないっぽかったのとカード払い無理そうだったで、小銭を持って行きましょう。
東方正教の教会は今回行けなかったので、また次の機会に…。
お気づきかと思いますが、ドイツ語名がある名所ばかりです。シビウ自体がHermannstadt(ヘルマンシュタット)というドイツ語名を持っています。街のいたるところに解説パネルがありますが、いつもドイツ語での説明がありました。
後述のAstra博物館の職員さんによると、シビウの始まりはドイツ人(ザクセン人)の入植だそうです。彼らは誰かを追い出したり服従させたのではなく、何もなかったシビウに入植したのです。今で言うスタートアップと表現していました。彼らの多くが職人や商人で、ギルドを作り、街を発展させたと。Oberstadtにはドイツ人が、Unterstadtにはユダヤ人が多く住んでいたそうです。
【屋外民俗博物館Astra】
宿のおばちゃん激推しだったので行きました。ルーマニアの農村を再現した博物館です。各地から移設した建物がたくさん!市街地ではなく空港と同じくらい離れたところにあります。市街地の端っこから出るバスでアクセスできますが、博物館の入り口前の停留所Muzeul Astraまで行くのは数本ごと。他は一つ前のDumbravaまで(この停留所からすぐのところに動物園があります)。日曜日で本数が少なかったので、Dumbravaから1キロほど歩きました…。でも森の横なので気分はよかったですね。
入場料は大人35レイ(約7ユーロ)。20時まで開館しています。とんでもなく広いので、めちゃくちゃ歩く覚悟で来てください。5時間ぐらいいましたが、全部は見切れませんでした。レストランやカフェがあるので、補給は大丈夫です。
展示されている建物の中も見れるかどうかは、修復作業が終わっているか、自由に出入りできる物件か、そうじゃない場合は(見張りもかねて駐留している)職員さんがいるかによります。職員さんも人間なので、常にいるわけではないのです。ちなみに制服とか民族衣装を着ているわけではないので、職員さんなのか、休憩してる客なのか分かりませんw職員さんがいたらイベント発生だと思ってくださいwみなさん親切でたくさん説明してくれました!英語はまず通じましたし、ドイツ語を話す人もいました。
写真で紹介したのはほんの一部です。本当に一日コースです。
観光地化している歴史地区は往々にして都市のものばかりです。以前西洋史を専攻していて「都市と農村」という2つの世界があったことなんて耳タコだったのに自分自身、実は今回ここに来るまでこのことに無自覚でした。全く違う歴史の姿が見れます。実際に田舎に行くのは大変ですが、こうして集めてくれているとアクセスしやすいので、ぜひ!説明を読んだり聞いたりしなくても、眺めながら散歩するだけでも楽しいです。
【ルーマニアの料理とビール】
お待たせしました、ご飯の時間です!今回はチョルバ(Ciorbă)、サルマーレ(Sarmale)、ママリーガ(Mămăligă)、ミチ(Mici)/ミティティ(Mititei)を食べてきました。どれも美味しい!
【宿のおばちゃん】
小さくて質素でいいから安く個室に泊まりたい。いつも通りのこの要望を叶えてくれる宿をBooking.comで検索しました。宿側としては直接予約したほうが手数料取られなくていいらしいのですが、初めて行く宿は詐欺予防とトラブったときのためにプラットフォーム介してます。普通のホテルもありますが、安く上記の要望を叶えてくれるのはどこも個人がAirBnBのように出しているところばかり。中には「銀行振り込みで支払い」というところもありました(!)「カード支払いができる」「チェックイン時間が厳しくない」ことを条件に絞り込み、Unterstadtにある小さなお部屋を予約。3泊で78ユーロでした(10ユーロ弱くらいBooking.comの割引が効いた)。ドイツじゃ1泊のお値段(ミュンヘンじゃ1泊にもならない)。個人じゃなくて「ホテル」のところでも3泊で150ユーロとか。お財布に優しい国です。ホストはおばちゃん。あいさつの後いきなり「マッキータ(マッシーナ)?」と聞かれ慌てる。おそらくクルマのことだと思いノー。その後も「ここがあなたのお部屋」「支払い?明日ね」「街まで歩いて5分」「アストラ博物館おすすめ!駅行きバスに乗って、公園で乗り換え」とかまあいろいろ話したんですが、ほぼ英語ナシ!でもところどころ英語ドイツ語ロシア語の単語混ぜてくれるし何よりイタリア語に似た単語があるからルーマニア語だけど大事なことはわかる!と思っていたのですが、街中で聞こえるルーマニア語、一言も拾えないんです(書かれていればわかる単語もあるけど)wそして気づきました、おばちゃんは最初ルーマニア語で話すもこちらが全然わかってないことが伝わり、英語ドイツ語ロシア語単語交じりの主にイタリア語で話していたことを…。むかーし履修していたイタリア語がここで生きるとは。言語の壁はあるが意思疎通はできる、親切で優しくて暖かい人…まさにホームステイ状態。固定宿に決定。勝手にシビウのお母さんと思ってます。
【シビウ空港→ドルトムント空港と出入国】
帰りたくない病を発症しながらも、大学も仕事もお家もドイツなので仕方なく帰ります。今回もバスで空港まで。早く着きすぎたので持参したベーグル食べたりコーヒー飲みながら気長に待ち、カウンターに出頭&書類提示、セキュリティ、パスポートコントロール、と無難に終了。出るときは何も聞かれませんでした(あるある)。
ゲート前で座っていると「そこの席空いてる?」とドイツ語で声をかけられました。顔を上げると、初日一緒にバスチケットオロオロしたオジサンが!旧市街の他に彼はブラン城(ドラキュラ城)に、自分はAstra博物館に行ったので写真の見せあいをしながら無事搭乗、飛行、着陸。ドイツ側の入国も無事終了。来たときと同じくシャトルバスの€10をケチって帰宅。ミッションコンプリート!
【ビザ、健康保険・ローミング・コンセントなど】
日本パスポートの場合、ルーマニアは90日までの観光滞在ならビザなしでOKです。EUだけどシェンゲン協定未加入です(確か少し前に加入申請して、クロアチアは通ったけどルーマニアはダメでした…)。
健康保険は、EU加盟国でドイツの法定保険が有効なので特に別途契約はなし。ローミングもEUのおかけでドイツのSIMのまま追加料金なしでローミングできました。いやぁ…EU同士だと楽ですね。
コンセントもドイツと同じ。日本の製品はアダプターが必要ですね。
【治安、言語、トイレ】
少なくとも旧市街(OberstadtとUnterstadt)は怪しい人やちょっと危なそうな場所というのは見かけませんでした。夜遅くになると公園はたむろしてる人がいたり、駅は別の雰囲気かもしれませんが。
観光スポットや飲食店、路上のお土産屋さんはどこも英語が通じました。親切な人が多く、それでいて押し売りとかもありませんでした。
広場や街角で公共のトイレもよく見かけました。
平和にゆっくり過ごせると思います。
【まとめ】
ドイツっぽいOberstadt、ルーマニア感のあるUnterstadt、ギルドが活躍した中世の都市を垣間見る旧市街、そんな都市に食料や資源を供給した農村の生活に浸れるAstra博物館、美味しいルーマニア料理、そしてDachaugen……大きな都市でも有名観光地でもありませんがその分ゆっくりと観光でき、魅力と学びにあふれる町です。旧市街とAstra博物館それぞれ1日ずつ取って見て回ると、都市と農村両方を体験できます。まさに異世界転生です。
*注記
・「中世」という語を何度も使ってますが、歴史上の時代区分としての「中世」として厳密に使っているわけではありません。旧市街や博物館で見てきたものは歴史上の区分としての中世が終わった後の時代のものも多いです。
・名所の名前などが日本語ではあまり定まってないようなので、説明プレートにあるドイツ語名やグーグルマップで出てくる名前を併記しました。