水イボのイソジン療法は、なぜ有効なのか?
※本稿は、2020年5月に私設ホームページで公開した論考の転載です。
今回は、水イボのイソジン療法の有効性について考えてみたいと思います。 私は有効だと思っていますが、この有効性については、皮膚科医のなかでも、意見が分かれています。 患者さんは、イソジン液(ポビドンヨード外用液10%)には抗ウィルス作用がありますので、有効と考える人が多いようです。 私はこの考えには、否定的です。イソジン液の抗ウィルス作用が有効なのは、皮膚の表面に付着したウィルスに対してのみだと考えられます。 皮膚内部のウィルス封入体にまで、その作用が及ぶとは、考えられません。 しかし、実際にイソジン療法を行ってみますと、実感として治癒までの期間が短縮される場合が多いのです。
イソジン刺激療法、接触免疫療法とする考え方もあります。私は、これらの考え方にも否定的です。 後述しますが、ごく少量のイソジン液をつけるだけで有効な場合が多いのです。 接触免疫療法の場合、イソジン液の感作が前提ですので、論理的ではありません。
では、どういう原理で有効なのでしょうか?
私は、その原理を、暗示療法と推測しています。 イボに暗示療法が有効なことは、昔から知られています。 イソジン液には、抗ウィルス作用という、もっともらしい効能があります。 治療を受けている子供が、その効能を信じれば、暗示療法が成立するのです。 ちゃんと治療を受けていると子供が実感して、安心することが必要です。
治療するにあたっては、イソジン液によるアレルギー性接触皮膚炎をおこさないようにすることが大切です。 イソジン液は、ほんの少しつけるだけ(点状にうすく色がつく程度)で十分です。 たくさんつければ、有効性が増すという印象を、私は持ちません。むしろ、デメリットが大きくなります。 大量に繰り返しつけますと、イソジンの感作が生じやすくなります。 感作が成立しますと、アレルギー性接触皮膚炎が生じ、今後イソジン液が使用できなくなってしまいます。
イソジン液とスピール膏の併用を提案している皮膚科医もいます。私は、このやり方にも同意しません。 イソジン液をスピール膏で密封してしまいますと、感作が成立しやすくなります。 イソジンの感作が成立しやすくなる行為は慎むべきです。 私自身、大きめの水イボにスピール膏を使用することはあります。その場合、スピール膏単独で効果十分であり、イソジン液の併用の必要性を、私は感じません。
自然治癒する可能性のある疾患は、暗示療法が有効な可能性があります。皮膚科領域では、暗示療法が実践されることは、一般的にはまれです。 簡易な暗示療法には、様々な可能性があるように、私には思えます。