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コロナワクチン接種群と未接種群との死亡率の単純比較では結論は出ない

「コロナワクチン接種後死亡の症例報告が多いこと」や「死亡事例の救済認定数が多いこと」という事実のみで薬害とすることは 適切ではありません。 薬害とするには、コロナワクチン接種群の死亡率と未接種群のそれとを比較をすることが必須です。

ここで重要なことは、接種群と未接種群の死亡率を単純に比較しただけではエビデンスとは認められないという点です。 バイアスの補正をしなければエビデンスとは認められないのです。 生データでは、バイアス補正が困難な場合が多いため、 特に注意が必要です。また、コロナ感染者は除外して分析する必要があります。

ワクチン推進派は、「コロナワクチンと接種後死亡とには関連性がない」ことに関して十分なエビデンスがあると主張しています。 しかしながら、日本のデータ分析に関しては、甚だ不十分と言わざるを得ません。 重篤な副反応は高齢者に多く、そして日本の高齢者医療は欧米とは大きく異なっているため、 日本においてワクチンの安全性を主張するのであれば、 当然日本のデータを用いて分析しなければなりません。 欧米の分析を用いて日本においてのワクチンの安全性を論じることは問題があります。

日本の発生率の比較に関しては、 論文が1編公表 されているのみであり、しかもこの論文のmethodには重大な欠陥があることが判明しています。 また、この論文は一地方都市に限定した分析であり、大きな規模の研究ではありません。 更に言いますと、前回の論考で指摘した 偶発性の検証 については、日本においては全く分析されていません。

唯一の論文 の内容をチェックしてみます。

日本の一都市のデータを調べた研究で、対象は約18万人であり、規模は大きくありません。 結果は、コホート研究において、接種後死亡のIRR(incidence rate ratio),adjusted は1回目接種:0.27 [0.21-0.35]、2回目接種:0.26 [0.20-0.34]でした。 これは、接種群の死亡率が未接種群のそれの約4分の1であることを示しています。 コロナワクチンを接種すると死亡率が約4分の1に低下したという実に奇妙な結果なのです。

なぜコロナワクチンを接種すると死亡率は4分の1にまで大幅に低下するのか?

論文では、「healthy vaccinee effect」の可能性があると説明しています。 これは、「健康に注意を払う人ほどワクチン接種を受ける傾向にある。そのため接種群の方が健康状態が良い人が多く、死亡率が低くなる。」という仮説です。

しかし、「healthy vaccinee effect」で死亡率が4分の1まで低下するとは、私には到底考えられません。 私は低下した原因を次のように推測します。

コロナワクチンは、全身状態が悪い人には接種しないことが推奨された。 そのため、未接種群には全身状態が悪く1~2か月以内に死亡するリスクが高い人が多く含まれていた。 (疾患重症度バイアス)

「この疾患重症度バイアスの結果、未接種群の死亡率は接種群のそれの約4倍となった。」 と考えた方が説得力があります。 論文では、罹患している疾患に基づくバイアスの補正が実施されています。 問題は、この補正を診療報酬明細書データを用いて行った点です。 診療報酬明細書には疾患名は記載されていますが、その重症度は記載されていません。 したがって、この論文では疾患重症度バイアスは適切に補正されていなかったと私は推測します。 なお、このバイアスが適切に補正されていないという問題は、 私が公表した3編の論文( 論文1論文2論文3 )で指摘しました。

疾患重症度バイアスの補正は容易ではない

未接種群において全身状態が悪いために接種しなかった人の割合については全く調査されていません。 したがって、このバイアスを補正するには病院や診療所のカルテを一つ一つ調べるしかありません。 数万人のカルテを調べるには大変な労力が必要ですし、病院が情報提供に協力的でなければ 実現できません。 日本でこのバイアスを補正することは極めて困難なのが現実なのです。 したがって、接種群と未接種群との死亡率の正確な比較は、 日本政府が莫大な予算をかけて本気で取り組まない限り、ほぼ不可能と言えます。

なお、前述論文のデータは2020年9月から2021年9月にかけてのものであり、 現在、死亡数の激増が問題となっている2022~2023年のデータではありません。 2022~2023年のデータにおいても同様の検証がなされるべきです。 そして、既に説明したように、 疾患重症度バイアスの補正は必須です。 また、コロナ感染者は除外して分析する必要があります。 単純比較では意味がないのです。 日本政府やワクチン推進派は、コロナワクチンには重大な懸念はないと主張するのであれば、 日本の2022~2023年のデータを用いて、適切なバイアス補正をした 疫学研究を実施して、説得力のあるエビデンスを示すべきです。

以前にも解説しましたが 「発生率の比較において有意差がないことを、関連性がない」と解釈することはできません。 有意差がない場合は、関連性は不明であるため、多くの場合更なる分析が必要です。 1つのp値のみで科学的結論を出すことは慎むべきです。 発生率の比較で有意差がない場合には、偶発性の検証も実施が必要です。 多角的に分析しなければワクチンの安全性は担保できないことを、 ワクチン推進派は理解するべきです。

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