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全頭脱毛症は、遺伝します。 ―――ただし、遺伝性疾患ではありません??―――
※本稿は、2020年3月に私設ホームページで公開した論考の転載です。
遺伝する脱毛症としては、男性型脱毛症と先天性乏毛症が有名ですが、全頭脱毛症および円形脱毛症も、遺伝することが判明しています。
私が実際に治療した全頭脱毛症の患者さんのなかには、親子例の4例、兄弟例の3例が存在します。 全頭脱毛症は、比較的珍しい疾患であり、これだけ家族内発症があれば、どう見ても何らかの遺伝があるのは、間違いありません。 日本皮膚科学会の、ホームページにおいても、円形脱毛症の遺伝について言及されています。
では何故、全頭脱毛症は、遺伝性疾患ではないのでしょうか?
これは、遺伝性疾患の定義のためです。 単一の遺伝子の異常によって生じる疾患を、遺伝性疾患とします。 全頭脱毛症は、複数の遺伝子が関与しているため、遺伝性疾患には分類されません。 複数の遺伝子が関与している疾患は、多因子遺伝疾患と呼ばれ、通常は遺伝性疾患に含まれません。 アトピー性皮膚炎、糖尿病、男性型脱毛症は、多因子遺伝疾患です。 平たく言いますと、「その疾患になりやすい体質が、遺伝している」ということです。 なお、先天性乏毛症は、単一の遺伝子の異常によって生じるため、遺伝性疾患です。
最後に、「遺伝子」という用語は、正しく理解されていない場合が多いですので、簡単に説明しておきます。
「遺伝子」とは、「何らかの機能を有するタンパク質の合成に使用されるDNAのひとかたまり」を意味します。 人間の遺伝子の総数は、21000~23000個とされています。