漢方薬の副作用:肝機能障害
※本稿は、2022年3月に私設ホームページで公開した論考の転載です。
漢方薬といいますと、「副作用の少ない安全な薬」と漠然と思っている人が多い印象があります。 これは、あくまでも相対的なお話です。 漢方薬にも、死に至るような重大な副作用の報告は、あります。 肝機能障害は、その一つです。 今回、漢方薬で治療中に、重篤な肝機能障害が生じた症例を経験しましたので、ご紹介します。
朝、診療前に、検査会社よりファックスが届いているのに気づきました。 それは、前日の血液検査の緊急報告でした。肝機能の数値を見て、驚愕しました。 劇症肝炎を示唆する数値だったのです。 患者さんに電話して、命の危険があるから、速やかに当院を受診するように指示しました。 紹介状を渡して、その日のうちに、総合病院に入院となりました。
患者さんが食欲不振を訴えた日の1か月後に、会社の健康診断が予定されていました。 薬物性肝障害の既往歴があったため、1か月間待つのは危険と判断して、血液検査を勧めました。 患者さんは、しばし悩んでいましたが、幸いにも当日検査を受けることになりました。 もし、1か月間様子を見ていましたら、肝障害で死去していた可能性が高いと考えられます。
漢方薬の肝機能障害の報告は多数あります。 ただし、漢方薬以外に多数の西洋医学の薬を内服している高齢者の報告が多く、持病のない50歳以下の人の報告は少ない印象です。 そのため、少し油断していました。 既往歴があった訳ですから、通常より慎重に漢方薬は投与されるべきでしたし、 治療開始1か月後には、副作用チェックのために検査をするべきでした。
私は、漢方薬を投与している時は、必ず体調の確認をすることにしています。 これは、その漢方薬が患者さんの体質に合っているかどうかの確認と、副作用チェックのためです。 今回は、この習慣のおかげで、難を逃れることができました。 もし、あなたが皮膚科医院で漢方薬で治療を受けている場合、医師が体調の確認を全くしない場合は、 注意が必要です。 体調に異変がある場合は、必ず医師に申し出てください。 そしてその時、「漢方薬には、大きな副作用はないから心配ない」と返答するようであれば、 その医師は確実に、やぶ医者です。医師をかえた方が賢明です。 なお、今回の原因生薬は、「黄ごん」と推定されました。 肝機能障害の報告が最も多い生薬は、黄ごんです。 黄ごんを含む漢方薬を内服している時は、特に注意が必要です。
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