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コリン性蕁麻疹の漢方治療と、発疹の多様性

※本稿は、2015年1月に私設ホームページで公開した論考の転載です。

2012年に当サイトにて、コリン性蕁麻疹の解説を発表しました。その後、徐々にこの疾患で当院を受診する患者さんが、増えてきました。抗ヒスタミン薬(または抗アレルギー薬)単独では、あまり効果がありません。漢方薬を併用しますと、ほとんどの場合、良好にコントロールできるようになります。また、その発疹には多様性があることも判ってきました。

コリン性蕁麻疹の特徴

1)運動、温熱、精神的興奮などで症状が誘発される。
2)皮疹は、数ミリ大の点状膨疹(少し赤く、小円形に少し隆起した状態)を呈する。  
3)かゆみではなく、ピリピリ、チクチクなどの不快感が主訴の場合がある。
4)皮疹は、1~2時間以内に完全に消退する。

典型的な皮疹は、点状膨疹ですが、それ以外に、「鳥肌状」、「皮疹なし」、となる場合があります。皮疹は、汗の出口周辺の炎症に起因するものです。炎症による発赤が少ないと鳥肌状となります。発赤も浮腫もごく軽度ですと、皮疹なしでピリピリ感などの自覚症状のみの訴えとなります。

 一般的な鳥肌は、寒さに伴う毛孔の隆起によるものです。これに対し、コリン性蕁麻疹では、汗孔が隆起して鳥肌状となります。また、運動・温熱などで誘発され、1~2時間以内に消失するという点も普通の鳥肌とは異なります。皮疹はないと訴える患者さんの場合、実際には多少鳥肌状になっている可能性もあります。寒い時期であれば、多少鳥肌になっても、病的な現象とは感じないのだと推察されます。

 皮疹がなくピリピリ感のみの訴えの場合、皮膚科医でも、コリン性蕁麻疹と診断しないことが有りえます。皮膚医以外の医師では、原因不明の知覚異常として処理される可能性が高いです。以前に解説しましたように、症状発現時に発汗は、しばしばありません。発汗にこだわりすぎますと、診断を誤ります。もともと、コリン性蕁麻疹という疾患自体が、皮膚科医以外の医師ではあまり認識されていません。そして、それに加え皮疹の多様性があるため、誤診率はかなり高いのではないかと考えられます。

 軽症のコリン性蕁麻疹の発症頻度は、意外と高いのではないかと、私は最近思っています。入浴時に、多少ピリピリしますが、数分~1時間でおさまってしまえば、わざわざ病院・医院まで行かないかもしれません。放置している人が多くても不思議ではありません。また、ほとんどのコリン性蕁麻疹は、自然治癒する疾患ですので、放置してもあまり医学的に問題にはなりません。いずれは自然治癒しますので、ステロイド剤の内服など副作用のある薬剤を使用すべきではありません。漢方薬を用いて、日常生活に問題のない程度に症状を軽減させ、自然治癒を待つという治療法は、理にかなっていると言えます。


最後に、いくつか実際の症例を、ご覧にいれます。

症例1 29歳 男性

 1週間前より、入浴時に、かゆみ~ピリピリ感が生じるようになった。皮膚は、赤くなることはなく、鳥肌のような状態になった。1時間以内に、症状は消退した。当院受診、抗ヒスタミン薬を1週間分投与した。効果は、全くなかった。漢方薬を2剤併用した。2週間後、徐々に改善し、ピリピリ感は減少した。1か月半後、入浴しても、ピリピリ感は全くなくなり、鳥肌になることもなくなった。

症例2 43歳 男性

 3か月前より、入浴時・暖房などで急に暖まった時に、チクチクした強い不快感が生じるようになった。皮疹は何も生じなかった。汗がでると、チクチク感は軽減した。通常10分程度で、チクチク感は消失した。抗アレルギー剤と漢方薬3剤で治療を開始した。1か月後、軽度のチクチク感は生じるが、許容範囲内の不快感となった。その後、秋から冬にかけて、特に寒い日は、若干悪化した。平均すると、去年の冬より、安定した状態を維持できるようになった。

症例3 12歳 男性

 10か月前より、入浴時や運動時に強いかゆみを伴う点状膨疹が生じるようになった。20分~30分ほどで皮疹は消退した。当院受診、抗アレルギー剤投与にて、皮疹は生じなくなった。4か月後、冬となり、入浴時・運動時に点状膨疹が再び生じるようになった。漢方薬を3剤併用とした。1か月後、多少の膨疹は生じるが、かゆみが軽減した。運動時の悪化は、なくなった。3か月後、入浴時に軽度の点状膨疹は生じるが、かゆみはあまりなく、良好にコントロールされるようになった。


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