汗疹(あせも)に保湿薬は、なぜ効くのか?
※本稿は、2016年5月に私設ホームページで公開した論考の転載です。
正確に言いますと、「汗疹(あせも)に保湿薬が効くと思っている人が、なぜ多いのか?」 となります。ちなみに、私は汗疹に保湿薬は、無効と考えています。汗疹の病態から考えて、理論上は、保湿薬が汗疹に有効なはずがありません。これについては、以前に詳細に解説しました。
現実には、汗疹に保湿薬が有効と考えている人は、けっこう多いようです。保湿効果のある入浴剤やローションには、効能にあせもと書いてある場合がしばしばあります。このような事実の裏には、何か意味があります。皮膚科の教科書やネット上では、「保湿薬がなぜ汗疹に有効なのか」について納得のいく解説を、私は見たことがありません。
今回は、その意味について、医学的に解説してみたいと思います。
誤解が生じる主たる原因は、「皮膚科学では、どのような発疹を汗疹と定義しているか」を、多くの人が理解できていないことにあります。
汗によって生じる皮疹は、基本的に次の2つがあります。
実際には、もう少し多様であり、
に分類できます。
汗をかいた後に、わきの部分が赤くなって、ひりひりするのは、汗疹ではなく、汗の刺激による一次刺激性接触皮膚炎です。学問的には、あせもではありません。しかし、一般の人は、これをあせもと認識するのが普通です。
汗をかいた後に、シャワーを浴びますと、皮膚の脂が減少し、皮膚は乾燥します。特に乳幼児では、乾燥しやい傾向があります。皮膚が乾燥した状態では、汗による一次刺激性接触皮膚炎が発症しやすくなります。保湿薬で皮膚の乾燥をおさえますと、皮膚炎は生じにくくなります。つまり、保湿薬は、一次性刺激性接触皮膚炎の予防となります。
以上をまとめますと、
さらに平たく言いますと
となります。
一般の人からみますと
になってしまう訳です。