KURKKU FIELDS 取材記事
「欲望が地球環境を守る未来が来るのかもしれない。」そう話すのは、KURKKU FIELDS運営のキーパーソンである小林真理さん。小林さんの熱い想いや大切にしているもの、働く方々の様子について、インタビューをさせていただいた内容を、ご紹介していきます。
市販のオレンジジュースではなく、一生に一度でいいから和歌山の絞りたてのミカンジュースが飲みたい。この場所で働く小林さんの想い。
――KURKKU FIELDSはどのような経緯で誕生した場所なのでしょうか。
この場所が出来る前、株式会社KURKKUは都内でオーガニックレストランなどを経営している会社でした。そのうちに、もっと自分たちで自生していこう、「食」についてもっと根源的なところまで掘っていこう。という想いが生まれ、有機農業を営むことから誕生した場所がKURKKU FIELDSです。
―― 小林さんはどのような想いで参画されたのですか。
KURKKU FIELDSで働く前、私は都内で貿易関係の仕事をしていましたが、そこで感じたことがKURKKU FIELDSに参画するきっかけのひとつになっています。
食べ物が世界の裏側から運ばれ、食品が簡単に捨てられていく実態を目の当たりにし、このような食の在り方ではなく、本当に美味しいものを、つくった人の顔が分かるところで食べたい、そんなふうに思いました。
大量につくられている市販のオレンジジュースを飲むんだったら、私は一度でいいから和歌山のみかん農家さんの横でみかんをそのまま絞ったみかんジュースを飲みたいって思いますし、そのような価値観を持った人が増えたらいいなと思い、ここに来ました。
―― 参画されてから少し経った今、どのような想いで働かれているのですか?
ただ消費されるための「食」を生み出すのではなくて、作る側も楽しく、食べる側も楽しくなるような「食」をこの場所で提供していけたら良いなと思います。ここにいる人がワクワクしながら働いて、その楽しさがお客様にも伝わる場所にしていきたいですね。農業ってすごくクリエイティブな仕事だと思うので。
ーー素敵。農業がクリエイティブというのが面白いですね。
もっとクリエイティブに。という想いはこの施設の他のところにも現れていますよ。
現代の仕事の大半ってマニュアル通りに、いつも同じ結果になるようにって求められることが多いですよね。しかしここでは、マニュアルのようなものを出来るだけ作らないようにしています。そういった決められたもの以外の中にも、美味しさや楽しさが感じられるということを伝えたくて。
だからこそ、まず来たらこうしてくださいとか、この順路を通ってくださいとか、そういった指示はできるだけしないようにと決めています。
自分で楽しみを見つけて自分の人生を豊かにしていくような生き方をする人が増えていったらいいなって思っています。
生き物と共にある暮らし。ここだからこそ気づく変化。
――UMINARIは海について活動していますが、海と土は繋がっているからこそ、農業に関しても他人事ではないと思っています。ここで農業をしながら過ごされている中で、気候変動の影響を感じる瞬間はありますか?
わかりやすいところでいうと、来るはずのない時期に台風が来たりすることですかね。
しとしとと降る雨ではなく、いきなりどかっと降ってピタッと止むような雨が降ると、土の表面が流れてしまうんです。土の表面って一番大事な部分で、農家にとってはそれが商売道具みたいなものなので、流れてしまうと本当にショック。あとは暑さですね。トマトも36度を超えると花が落ちちゃうので。昔はそんな温度にならなかったけど、今はすぐ36、37度になってしまいます。もうちょっと暑くないと育つんだけどな。と思う時もあります。
でも、ここに長くいてたくさんの生き物と共に過ごしているからこそ、気候変動の影響を受ける弱い立場としてだけではなく、生き物が持つ強さのようなものも感じているんです。
ここにある川や池を観察していると、そこにいる生き物が急に増えたり減ったりすることがあります。例えば、近くの田んぼに水がはられてカエルがそっちに移動したりだとか、田んぼの水が抜かれるとこっちの水辺に生き物が増えたりと様々です。そういうのを見ていると、生き物ってすごいなっていう気持ちに変わってきます。人間は別に何も教えてないし、あっちに水辺があるよって言わなくても自分が生きられる所を見つけて、勝手に来るんですよね。私たちはこうゆう場所があったら生き物が育つだろうなという環境を作っておくだけで、生き物たちは大体反応してくれるので、本当にすごい。
人間が暮らすことによる自然への影響って、プラスチックを作ったりとか、ゴミを捨てたりとかそういったネガティブなイメージが大きいですが、人間が暮らすことで自然や生き物へのポジティブな反応を生んで、生き物を集めることができたら素敵だなって。この場所はそんな場所でありたいなと思っています。
自然環境を守ること。未来の世代に向けたメッセージ。
――「続いていく未来」というのがこの場所のひとつのキーワードだと聞きました。サステナブルな未来を生きる子供たちに、こんな風に育ってほしい。という想いがあればお聞かせください。
何か教育していきたいというよりは、出来るだけ自然の近くにいてほしい。自然の力を感じる環境で、育ってくれるといいなと思うし、もし難しかったら、こういった場所にきて感じてみるのもいいかなと思います。
長期的にみて、人が地球上に住んで、美味しい空気を吸って、美味しい水を飲んで、美味しいものを食べて気持ちよく過ごすためには、この環境が続いていかなければなりません。だから私はこういった環境をつくり守り続けるということに、自分の人生を使いたいと思って今ここにいます。仕事がたくさんある都内で、オフィスで働く人が多いですが、今行動することが未来を作るためにはとても大切なことだと思うので。
もちろん、この価値観が全てじゃないし、それぞれ好きなことも違うので、子供たちにはできるだけいろんな大人に触れて、いろんな考えを知った上で自分で生き方を選んでほしいと思います。
欲望が地球を守る?
小林さんが考える「欲望」の可能性
―― 御社の他のインタビューを拝見している中で、「環境と欲望」の間に未来を作っていく鍵があるんじゃないか、という言葉があったのですが、一見矛盾するこの2つの言葉の中にある可能性について、小林さんはどう考えていますか?
人間の欲望は、環境を破壊する原因にもなりますけど、いつかは地球を守る糧になるかもしれないと思っています。矛盾する二つの考えの中で、いかにバランスをとって暮らしていくか、ということはもちろんなのですが、大きなパラダイムシフトを産む可能性もあると思っています。
例えば、まだ分からないことを分かりたいという思い(欲望)が強くて、だからこそ「宇宙に行きたい」などと思ったりもしますよね。月を歩くことや火星に住むなんてこと、実現しそうにないからこそ実現させたいと願い、宇宙開発などにお金が投じられているんじゃないかって。
他の星にはない、美しい自然があるこの地球に住み続けたいという欲望が多数を占めた段階で、「地球に住みたい」という欲望が生まれて、環境問題に対して、もっとお金が投じられたりするかもしれない。こんな欲望の転換のようなものが生まれれば、環境問題への人々の見方も変わるのではないかなと思っています。
―― 考えたことなかったけれど、確かにそうかもしれない。
土だって宇宙みたいなものですよ、地球が何億年前からあった証ですから。
自然に囲まれた温かい環境で、走り回る子供たちの声を聞きながら行われた今回のインタビュー。自然の恵みと共に日々を過ごし、その温かさや変化を肌で実感されている小林さんの一つ一つのお言葉が胸に響き、美しい自然と共にある未来を想像したくなる、そんな時間でした。
ご協力いただいた小林さん、KURRKU FIELDSの方々、本当にありがとうございました。
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