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KURKKU FIELDS 体験レポート

千葉県木更津市にあるKURKKU FIELDS。
「いのちの手触り」をコンセプトに掲げ、持続可能な「循環」を「食」「農業」「アート」など、多角的な視点から体験できる施設です。

UMINARIは「海洋ゴミ問題」を解決するために活動しているNPO法人ですが、実は「海」と「土」には深い関わりがあります。例えば、化学物質を含んだ農薬が川から海へと流れて海を汚染していたり、埋立地など陸から出たゴミが海の環境を悪化させていたりなど多岐に渡ります。

普段はビーチクリーンなど海の近くで問題に向き合っていますが、「土」から環境問題を見つめ直したいと思い、KURKKU FIELDSで探検してきました。

ガイドツアーに参加して学んだことの中から6つご紹介します。

香って学ぶ、とある果実について

まずはスタート地点のすぐ近くにある植物から。
「これは何の木でしょう?」
ヒントは、葉っぱの香りにあるということで、UMINARIメンバーも顔を近づけてみました。すぐに何かわかるほど、強い爽やかな香り。答えは、「赤ちゃんレモン」でした!

黄色のレモンが採れる時期は真冬の12月から1月で、一年を通して販売されているものの多くは輸入されたもの。輸送途中でカビが生えたりしないよう、防腐剤が使われていることが多いそうですが、こちらのレモンは化学肥料などをは使わずに栽培しており、皮ごと食べても安心。

いつも口に運んでいるものがどこから来ていてどのように生産されているのか改めて考えてみようと思いました。

動物の〇〇が大活躍!

ガイドの吉田さんのお話を聴きながら、施設の裏道を歩いていると​​カラフルな建物が見えてきました。

この建物は、牛や鶏などから出る「糞」を堆肥に変えているところです。驚くことに、糞の匂いは全くと言っていいほどしませんでした。堆肥について詳しくお話をお聞きしました。


KURKKU FIELDSでは、ミルクの恵みがあるのと同じように「糞尿も恵み」だと考えているそうです。牛が40頭、鶏が900羽いる施設からは、1日1000kg、年間で約300tもの糞が出るのだといいます。

糞を発酵させて堆肥にしてから畑にまき、その土で新たに作物を収穫することで、栄養素が土、農作物、動物の間を循環する仕組みになっています。

発酵の方法は「糞」「水」「酸素」「おがくず」の4つを混ぜること。必要なものはたったの4つだということに衝撃を受けました。

これらをバランスよく配合すると、微生物のはたらきで発酵、発熱し、温度が70℃近くまで上がります。60℃以上になるとそこに生息できる生物は限られるので、元々糞の中にいた人や畑にネガティブな影響を与える微生物は殺菌されます。その後は徐々に畑にポジティブな微生物相が増え、半年ほど発酵と熟成をすることで畑に撒ける堆肥になります。

KURKKU FIELDSは有機農業をしているため、化学合成農薬や化学肥料を使っていません。人で例えると「薬を使って健康を保つ」というよりは「食事や運動で健康を保つ」ような感覚で、質の高い堆肥作りに取り組んでいるそうです。

吉田さんが実際にかき混ぜるところを見せてくれました。なんと、堆肥からは「湯気」が上がっていて、その温度はなんと70℃前後になるそうです。発酵が進むと微生物が有機物などを分解することで熱を発し、温度が上がるのだそうです。
吉田さんが手に抱えてきた堆肥の中からはキノコが飛び出してきて、堆肥が生きているということを初めて感じました。

不要なものや汚いものと捉えられがちな糞ですが、正しく扱えば、微生物の力によって豊かな恵みを畑に届けてくれます。多くの微生物の営みのもとに私たちが普段食べる野菜があるのかもしれません。

本当の豊かさとは?

次に足を止めた場所は、小さな木の建物の前。こちらは、「タイニーハウスビレッジ」という宿泊施設です。

タイニーハウスは、「小さくてシンプルな暮らし」の象徴としてアメリカを中心に広まりました。大量消費社会から脱却して小さな家にタイヤをつけて暮らすような人が増えたことを「Tiny House Movement」といいます。

ここKURKKU FIELDS内には、タイニーハウスのように「本当の豊かさとは?」を問い直す仕掛けがたくさん施されています。

タイニーハウスは全部で6棟あり、1部屋ずつ内装が異なるそう。毎回違う部屋に宿泊して違いを楽しんでいるリピーターさんもいるのだとか。秘密基地のようなタイニーハウスに宿泊したくなりました。

排水を綺麗にする仕組み

タイニーハウスの隣には、「ビオトープ」がありました。ビオトープとは、生物の生息空間のこと。実はこの池はタイニーハウスや後述するシャルキュトリーから出た排水が水源になっているのだとか。

排水は「バイオジオフィルター」と呼ばれる微生物や植物のはたらきを利用した仕組みで浄化しています。排水から出る栄養素を活用してクレソンやマコモなど、野菜を含めたさまざまな植物を育てています。栄養素が吸収されると水は綺麗になり、さまざまな生物が生息できる環境に変わります。

水面に顔を近づけてみると、おたまじゃくしが何匹もいました。ビオトープで生活するカエルやトンボなどの生き物は畑の害虫を食べるので、人間にも恩恵をもたらしてくれるといいます。

自然の力で水を浄化するバイオジオフィルターですが、排水が綺麗になり過ぎてしまうと、海に流れるミネラルが減って海苔の漁業者さんが困ってしまう事例があるといいます。複雑な自然のつながりを理解して、多角的に物事を捉えることが必要だと感じました。

バイオジオフィルターは、人間の生活排水を微生物と植物を活用して綺麗にすること。化学物質を使わなくても自然の摂理のままに行動すれば、自然も人間も本来の姿のまま生きられるのではないかと考えさせられました。自然の仕組みは思ったよりもシンプルなのかもしれません。

有害鳥獣の表現は適切?

KURKKU FIELDSの魅力の1つの「食」。ダイニングレストランやパン屋さん、ソーセージのお店などがあり、自然の恵みを生かした絶品料理を楽しむことができます。

下の写真はイノシシ肉を使ったハンバーガーとソーセージ。新鮮な野菜も添えられています。肉は木更津市内でとれたもので、命を絶ってから30分以内に運ばれてきたものを食肉として活用しています。



UMINARIメンバーで実際にいただきました。海外で修行を重ねた技術のあるシェフのよって調理された肉は臭みが全く残っておらず、とても美味しかったです。

イノシシと聞くと「害獣」や「有害鳥獣」をイメージする方も多いかもしれません。確かに、畑を荒らすなど人間の生活に害をもたらすこともあるでしょう。

吉田さん曰く、KURKKU FIELDSで運営している解体施設には、シーズンに入ると一ヶ月あたり100頭前後、多いときだとたった一ヶ月で260頭以上もの駆除されたイノシシやシカが届くそうです。一般的には有害鳥獣の食肉としての利用率は1割ほどで、そのほかは捨てられてしまっているそう。

この事実を知ると、イノシシなどは、「生きているだけなのに人の都合で捕まってゴミとして捨てられている」とも捉えられます。

イノシシなど動物の暮らしを尊重したいものの、農作物を守るためにやむを得ず殺さざるを得ないことが現状です。これまではそうして殺された動物のほとんどがゴミとして処分されてきました。
KURKKU FIELDSでは、やむを得ず捕まえざるを得なかった動物をゴミにせず、命の恵として最後まで美味しくいただくための取り組みをしています。

イノシシが毎月たくさん届いていることや、利用率のあまりの低さを知ったことは、人間の生活を守りながら、野生動物との共生はできないのかと深く考えるきっかけになりました。

ゴミを出さないダイニング

KURKKU FIELDSは食に情熱をかけています。食べるだけでなく、調理した後のゴミも循環させています。

野菜の皮などの野菜クズはミミズコンポストを使って土に還しているそう。「土」については先述したように牛や鶏の「糞」が活躍していますが、すごい力を持って野菜クズを分解してくれる生物が「シマミミズ」です。

野菜クズに「落ち葉」とともに混ぜるとミミズコンポスト内部はミミズにとって楽園のような環境になり、活動が活発化し健康な土を作ってくれるといいます。写真中央の薄赤く、細長いものがシマミミズです。

ミミズのコンポストは嫌な匂いがしません。施設近くからシマミミズを100匹捕まえて、入れるとどんどん繁殖するそうです。

野菜クズを、可燃ゴミとして燃やして処分するのではなく、シマミミズが土に変えてくれるのは、手間があまりかからず環境にいいなと思いました。ミミズにとっても居心地がよいなら安心です。


まだまだ、お聞きしたお話はたくさんありますが、今回は6つについてご紹介しました。

フィールドツアーでは、「食」や「農業」「豊かな生活」など様々な切り口で「循環」についてお話をお聞きしました。人を含めた全ての生き物が一つの循環の中で複雑に結びついてて、それをひとつずつほどきながら学ぶことができました。

陸上の循環は海を含めたより大きな地球全体の循環の一部なんだと感じました。座学ではなく、実際に足を運んで体験できたからこそ心に深く響いたのではないかと思います。

素敵な学びを下さったガイドの吉田さん、ありがとうございました。

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