Innovation Design(イノベーションデザイン)さんに学ぶ、「食を通したサステナビリティ」について
UMINARIメンバーがサステナビリティの本質を探るため、様々なお店・人・場所を訪ねて取材する新企画「u-journal」
第2回目の取材先は、株式会社Innovation Design(イノベーションデザイン)さんです。
Innovation Designさんは、【「ひと」と「地球」の未来を描く】をビジョンに、ショップやレストラン、コンサルティング事業などを通してサステナビリティの実現に取り組まれています。
Innovation Designさんのホームページ
1月(緊急事態宣言の発令前)にInnovation Designさんが運営されているhaishop cafeにお邪魔して、サステナブルデザイン室長の表秀明さん、haishopブランドマネージャーの和田奈央さんにお話を伺いました。
サステナブルデザイン室長 表秀明さん
(写真中央右)
haishopブランドマネージャー 和田奈央さん(写真中央左)
※撮影時以外はマスクをつけてインタビューを行いました。
今回の取材では、「食」に関する事業にフォーカスを当てながら、UMINARI3本柱の1つである「日本性」について主にお話を伺いました。
※UMINARI3本柱の詳細は「UMINARI取材班です!」の投稿をご覧ください。
〈サステナビリティへの歩み〉
Innovation Designさんがどのような経緯でサステナブルな事業を行っているかについて、簡単な年表を作成しました。
〈目次〉
・Innovation Design × 日本性
・組織のあり方
・今後の眺望
ー 食を通した循環社会の実現に向けて ―
〈記事のポイント〉
・「日本人らしさ」を軸に社会問題に取り組む
・ 社員全員で同じ意識を持ち、
「横の繋がり」でサステナブルに働く
・「共感」を広げて、
仲間とともに地球のために動く
【 Innovation Design × 日本性 】
サステナビリティのヒントは、
昔の生活にいっぱい眠っている
—「日本性」に関して質問です。Innovation Designさんが運営されているレストラン、KIGIに関するIdeas for goodさんの記事を拝見したのですが、KIGIでは、店のコンセプトや内装で『日本性』にこだわっているのではないかと思いました。
また、余った食材を「OSUSOWAKE」、その場で食べきれなかった料理を「ORIZUME」としてお客さんにお持ち帰りいただいていますよね。
サステナビリティに日本性が大切だと考える理由と、日本性の中で何を大切にされているかについてお聞きしたいです。
表さん: 日本性は、気持ちとか文化みたいなところがあると思います。そのOSUSOWAKEも古き良き日本文化ですよね。
今の発達している社会だと、お隣さんとの関係って希薄になっているじゃないですか。でも改めて日本人の文化って見直した時に、隣の人が困っていたら助けていましたよね。醤油切らしちゃったんだけどちょっと貸してよ、という風に。僕、埼玉の田舎育ちなので、そういう近所づきあいがまだギリギリあったんですよ。
古き良き日本文化ってもっともっと勉強すればするほど出てくるんじゃないかって。(サステナビリティの)ヒントは昔の生活にいっぱい眠っているなと思っています。
KIGIの店内(ホームページより)
和田さん:例えばお着物を何代にもわたって使っていくという文化もそうですよね。おばあちゃんが着てお母さんが着て、そういう一つのものを大切にする気持ちなどもつながると思います。
私が大切にしている考え方で「足るを知る」というものがあります。あれも足りないこれも足りないではなくて、今あるものを大切にして感謝して生活するんだということです。そういう気持ちの原点は、昔の生活にあるのではないかなって感じます。
表さん: それと、和田がhaishopで扱っている商品とかも、日本の商品はクオリティが高いって話をしていました。
和田がずっとドギーバックをやりたいって言っていて。haishopで折り畳めるお弁当箱を販売したり、KIGIでは「ORIZUME」として食べきれなかったご飯をお持ち帰りしていただいたりしています。
昔日本では結婚式などで、食べきれなくて余ったごはんを家で待ってる家族のために持ち帰る素敵な文化があったんです。だから海外のドギーバック文化を真似するのではなくて、折り詰め文化を参考にしようとして始めました。
haishopでの取材風景
〈学び〉
日本人の昔の生活や思想は、人との繋がりやモノを大切にすることからサステナビリティに通じているのですね。海外の取り組みをそのまま取り入れるのではなく、「日本人らしさ」に焦点を当ててみると、様々な発見がありそうです。
【 組織のあり方 】
日本人らしくあることの大切さ
— 事業と関係の深い、日本性はどのような経緯で取り入れることにしたのですか?
表さん:Innovation Designとしても日本人らしくあることを大切にしています。素直にありがとう、ごめんなさいが言えるかどうかなどですね。Innovation Designの人間がこうあるべきだと、48項目にまとまっている本があります。ここに書いてあるものが僕たちの源です。
「マテリアル」と呼ばれる、Innovation Designさんの本の一節。
社員全員がサステナブルデザイナー
社員全員でサステナブルに取り組む
— Innovation Designさんは組織の中で、どなたもしくはどの部署が中心になってサステナビリティに対して取り組んでいるのですか?
表さん:一般的な会社だと、営業部門、総務部門、経理部門などの縦割りが多いと感じます。そうすると、営業のことは総務知らないよとか、人事知らないよとかいうのがありがちですよね。
でもうちは、社員全員がサステイナブルデザイン室に所属しています。なので、キッチン・ブライダル・営業・レストランといったいわゆる縦割りの部門も存在しますが、社員全員がサステイナブルデザイナーです。
料理人兼サステイナブルデザイナー、ウェディングプランナー兼サステイナブルデザイナーといったように、社員全員が自分の部門だけでなく、横の繋がりを意識して仕事をするようにしています。
社員の皆さんでLCCコンポストを利用している写真(ホームページより)
— UMINARIと共通しているところがあるなと思いました。私たちも所属している事業部は違くても、メンバー全員がインパクトクリエイターズ( impact creaters = ICs )という横軸があります。
表さん:全く一緒ですね。インパクトクリエイターズ!?かっこいい!!!もしかしたら僕たちも来週から勝手にインパクトクリエイターズに変えているかもしれないです(笑)
表さん:企業がサステナブルに取り組んでも社内に浸透しないって多いと感じます。私たちの部署だけやって、他の部署で誰も共有してくれないというのは、結局縦だけで動いているからだと思います。
なので、(サステナビリティに関しても)横(社員)全員でやるものだという認識を浸透させることは、日本の多くの会社が抱えている課題かもしれません。
CSR推進室の責任者と現場の一体感が生まれないという悩みを抱えている企業も多い中で、UMINARIの組織の作り方は理想的だと感じました。横軸はとても重要ですね。
— ありがとうございます。嬉しいです。メンバーに共有させていただきます!
〈学び〉
サステナビリティは、会社の一部が推進するものではなく、社員1人1人が主体性を持って取り組む必要がありそうですね。大企業であっても、Innovation Designさんみたいに、社員みんなが主役で楽しみながら、社会に良い活動ができたら素敵だなと感じました。
【 今後の眺望 】
食を通した循環社会の実現に向けて、「共感」の輪を広げる。仲間とともに地球のために取り組みたい。
— KIGIさんではすでにTABETEの導入やコンポストの実施、OSUSOWAKEやORIZUMEなどを通して食料廃棄の問題に取り組まれていますよね。
今後、飲食業を通して進めていきたい食の循環はありますか?
表さん:KITCHEN MANEでは、地元の農家さんから季節ごとに採れるお野菜を規格外も含めて仕入れさせてもらったり、ご縁をいただいた三重県の二木島漁港の漁師さんからその時に揚った魚を稚魚も含めて仕入れさせていただいたりしています。いただいた恵みを大切にしながらメニューを作っています。
できれば休業しているKIGIも、再開した際にはその時に仕入れられた食材だけでメニューを作りたいと思っています。
表さん:あとは、サステナブルな飲食店を増やしたいとも思っています。KIGIやKITCHEN MANEだけだとインパクトが小さいじゃないですか。なので、それに賛同してくれる飲食店を増やしたいです。
グルメサイトのクチコミを気にするのではなくて、自分たちがどれだけサステナブルな店なんだろうって、もっと目を向けてもらえる仲間を増やしたいなと思っています。
KITCHEN MANEの店内(ホームページより)
— 飲食のコンサルティングはされているのですか?
表さん:今は飲食店へのサステナビリティについてのコンサルティングは行っていません。まずは自分たちがサステイナブルレストランとして成り立つように、行動を起こしていきたいと思っています。そうでないと信用してもらえないかと。
なので今年はサステナブルレストラン協会が定めている星を獲る、という結果を出せるようにしたいと思っています。
和田さん:審査項目は250項目あるんですよね(笑)
表さん: 星を取得できたら他の飲食店の共感してくれる仲間と「一緒にやろうよ」って言っていきたいですね。
UMINARIさんもミッションに共感した仲間の集団だと思うので、やっぱり共感っていうのは大事だと思います。
いい口コミ集めましょうよっていうのではなくて、地球のためにできること一緒にやろうよという感じにしていきたいですね。街のレストランがただ食事を提供する場所じゃなく、サステナビリティを感じたり、学べる場所になったりしたら、地球の未来も変わると信じています。
〈学び〉
自分たちだけでなく、「共感」を広げて、環境にやさしい取り組みを大きくしていく。様々な人と「共創」をすることで、サステナビリティがより広まりそうですね。
〈インタビューを終えて〉
今回は、株式会社Innovation Design サステナブルデザイン室長の表秀明さんとhaishopブランドマネージャーの和田奈央さんから貴重なお話をお聞きしました。
「日本性」や「組織のあり方」、「食を通した循環」などについて主にお話をお聞きし、たくたんの学びとともに、お2人のエネルギーにとても元気をいただきました。SDGsを知ってから約1年で様々な事業やプロジェクトを展開されていて、積極的に行動し続ける姿勢に感化されました。
インタビュー後には、haishopで扱っているReFOODやお菓子、KITCHEN MANEで提供しているお料理をいただきました。とてもおいしかったです。心にも環境にもやさしい取り組みを体験し、幸せな気持ちになりました。
ReFOODとして販売されているドライフルーツ
(みかん・りんご・バナナ・パイナップルなど)
2021年 3月22日に、UMINARIは法人化して3年目を迎えました。
携わってくださった方々への感謝を忘れずに、一歩一歩、着実に歩んでいきたいと思います。
表さん、和田さん、この度は素晴らしいお時間をいただきありがとうございました。