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やっと二人きりになれたね
このセリフを言ったことがある、または言われたことがある人はどのくらいいるだろうか。僕は言ったことがある。あれは失言だった。
映画やドラマでときどき耳にする言葉だ。大勢での飲み会が宴もたけなわとなったあと、徐々に人が減り始めてテーブルに残される二人。帰り支度をする人らを横目に見ながら、隣の相手にだけ聞こえる声でそっと囁く。
飲み会ではなかったが、これと似たような状況に遭遇して、つい口走ってしまった。相手の女性とは同じ趣味の仲間というだけで、それ以上に親しいわけではなかった。二人きりになりたいと思ったこともない。
ただ、ドラマのあるあるとして、この場面ではこの言葉がぴったりハマるよねという軽口だった。「馬鹿じゃないの?」「それ、イケメン専用のセリフだから」みたいな冷たい反応を期待していた。
しかし、投げたボールは返って来なくて、僕は自分のやらかしに気づいた。困惑させてしまった。冷たい汗が出た。気まずくて相手の顔が見られなかった。
今で言うセクハラにあたるだろうか。いや、そうであって欲しい。もちろんセクハラが良くないのはわかっている。それでも女性の心を弄ぶ非道よりはセクハラのほうがいくらかマシに思える。