
Photo by
aso_izumi
名無しさん
↑前回の続き。テーマ「魂を売る人たち」第10回。
2ちゃんねる(現5ちゃんねる)と聞くと、無秩序で品性の欠片もない罵詈雑言が飛び交う怖い場所――そんなイメージがある。まあ、だいたい合ってる。
匿名とはいえ、本気で追跡すればリアルの世界よりも簡単に身元を特定できるが、よほど悪質でない限りはそこまでされない。だからこそ、今日も無責任な書き込みが掲示板を賑わせている。
嘘をついても、他人を傷つけても、お咎めを受けにくい。僕は好まないが、それがストレス発散になる人もいるのだろう。そういう人たちにとっては、まさにうってつけの居場所となる。
逆に、どれほど誠実で役に立つ書き込みをしても、その人の評価には繋がらない。スレッド内では感謝されるかもしれないが、それは「名無しさん」に対するものであって、個人の功績として認められることはない。
にもかかわらず、有用な書き込みをたまに見かける。年齢も職業もわからないが、少なくとも僕と同じ人間に生まれ、限りある命を燃やして得た知識を、何の見返りもなく提供しているモノ好きがいる。
たぶん、徳の高いお坊さんでも、慈愛にあふれる聖人でもない。どこにでもいる普通の人が、そのような振る舞いをしている。
だったら僕もなれるはずだ。その輝かない星に。
つづく