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もんぺクライマー作成経緯

機能性とかわいいの両立

山、クライミング用のアイテムは現在ほとんどが無地、ロゴ物しかないです
10数年山やってると色目の流行りは変わるものの無地ものばっかのファッションに見飽きてきました
総柄かつシンプルなの欲しいなぁ・・・ということをずっと考えていたと思います

しかしそんなものは売ってません
理由は明白で、需要面は放り投げてしまっておくと生地とプリントの相性です
できなくはないけど、今使われているナイロンだと素材の特性を殺してしまうのでプリントするメリットがないと言うかデメリットしかありません
総柄そこまで需要ないし、利益を追求するのが民間企業なのでたいして利益出ないものなんか大手は作りません
そらそうだ

うなぎの寝床(久留米、地域商社)

自分の持ってる花柄もんぺ

今は無印でももんぺを売ってたりもしますが、約10年前くらいに久留米でできたうなぎの寝床さんが作ったムーブメントだと思っています
・地域文化商社 うなぎの寝床 https://unagino-nedoko.net/

代表の方のインタビュー


うなぎの寝床さんは久留米絣を使ったもんぺで、元々は柄入りで¥6000くらいの利益ほとんど出ないものだったらしいのですが、現代風な綺麗なシルエットに作り直し、写真も洒落ていて、かつきっちり利益を出せる洋服好きな老若男女から指示されるブランドになっています

利益出てなかったもので利益を出してる
ものの見方や考え方で変えられます
やらない理由探すよりやる/できるようにする理由と方法を考える
そして絶対に諦めない
どうにかするにはこれしかない


いきなり諦めた

三大絣というものがあります
備後絣(広島、岡山)
伊予絣(愛媛)
久留米絣(福岡)

2019年秋
今私が住んでいる愛媛にも伊予絣があり、調べていくと1社のみ今も織っている会社がありました
見学にお邪魔させていただいたのですが、昭和初期の木と黒い鉄でできた博物館で保存してほしいレベルの自動織機と手織り機で作られていて、消耗品として使うパンツにはコスト面や生産量もろもろで断念しました
当時は登山用ではなくただのクライミングパンツとして考えていたのですが、それでもストレッチ入れられない(その会社さんが新素材使いたくなさそう)、強度不足という問題が大きかったのもあったんですが…いきなり無理ぽ…

小紋って綺麗(現実逃避

伊勢型紙

西条市に伊予小紋さんという会社があり、そのHPを見て小紋というものを再認識しました(元々甲州印伝を調べていたことがあったため)
江戸小紋(着物)、甲州印伝(鹿革/漆小物)など和物で使われている柄で、かなり細かくて綺麗です
深堀していくと伊勢型紙というものにたどり着きましたが、下の画像と上の型紙見てください

プリント用のシルクスクリーンみたいなもんやろ?って思われるかもしれませんが穴が開いてるとこが白い…
仕組みとしては防染剤(ろう)を塗り、他を染める”ろうけつ染め”という技法で染められますが、普通に手で型紙合わせたり絶対にミスれないしかなりヤバイです

小紋

伊予小紋さんの生地高そうだから使えないだろうと思ってた時にたまたま会社の代表さんに会うことがあって値段聞いてみたんですけど、パンツ1本の売価が15万円超える計算になるので全然無理でした…手染めの反は高い…

この世界の片隅に

アマプラでやってたのでたまたま見ました
すずさんが着物を切って作業着(もんぺ)に仕立てなおしていました

あれ?。。。
そうか、もんぺ=絣ではない、というかwiki見たら絣で作ることもあるくらいな感じ
完全にうなぎの寝床さんの先入観にやられてました
”常識とはそれまで生きてきて収集した偏見のコレクションである”(多分ちょっと違う)とはよく言ったものです

まさか自分がコロナに翻弄されるとは

素材はいつもお世話になっているポリエステルの大企業の第一営業部(スポーツ用高機能素材を扱っている部門)に連絡してみると良い素材をアテンドしてくれた(担当営業の方めちゃ優秀)のでそれにボクストラと同じ方法でプリントすることを考えました
*あんまり言うと怒られるんですが、先端技術系の〇ーク、SDGSを昔からやってるパ〇〇ニア等先進的な会社へ生地/繊維提供してる企業です

この時点で考え始めてからすでに2年
すぐに那須様に型紙を作っていただきプリントテストを開始したのですが縫製工場が見つかりません
輸送関係とロックダウンも含め中国工場が使えず、国内の縫製工場も急遽戻ってきた大規模発注にキャパオーバーしており零細どころか個人など相手にもしてもらえず、行政や縫製工業組合、商工会にも頼りましたがどうにもなりませんでした

探しながら2021年の夏くらいにイラストレーターとのコラボなども考えナポさんや大窪さんに書いてもらっていたら、型彫師の那須様と所属されている凛九の方々がイラストレーターとコラボされてて凄い速さでアイテムが完売しているのを見て「このイラストコラボはやはり正しいしおもしろい」ニチャァ
みたいな感じで見ていました
*そこでハルカゼさん見つけました

マルシェル×凛九

そんな中、ある会社様に製造をお願いをすることができたのが2022年の1月
自分の中で2年かと思っていたのですが、気が付いたら3年経ってました(笑


結果

・もんぺ
・絣、伊予絣、久留米絣
・着物、伊勢型紙
・ボクストラ、機能性ポリエステル、昇華プリント
・この世界の片隅に、絣の概念の変化

映画を見た際に完全に点と点が線になったのがわかりました

左から麻の葉紋様、菊、雲海小紋


今回は型3種、全6種類作りました
大柄は使う方を選んでしまうと思いますが、小紋は遠目に見ると生地の色が薄く見えるだけで柄々しくないのでどなたでも使えると思います

例えば雲海小紋は遠目だと汚しの入っていない洗いこんだデニムっぽく見えて、近づいたらナニコレかわいい的な感じだと思います

雲海小紋


すでに麻チノをずっと履いてるんですが機能的にも見た目も普段履き、ボルダリングにも山にもかなり良いです
最初和柄を履いてる自分に慣れないのですが周りからの見た目は良いので是非履いてみてください
半日履いてたら慣れてきます

けっこうエゴサしてるので、インスタやツイッターで”もんぺクライマー”、”もんぺ登山”とかでタグ打って写真UPしてもらえたら反応すると思います
もんぺ登山とか、もんぺクライマー、多分流行りはしないと思いますがちょっと話題になったら楽しいな~とか考えてます

これが何の意味を持つのか

何もしなければ伝統工芸や日本の一部工場は人口減とともに消えてゆきます

個人的に職人や研究者に垣間見える”狂気じみた執念にも似た情念”が好きで仕方がないのもあるのですが、一部現代技術と融合しながら残っていくととても面白く、これからの若い世代に興味を持ってもらい残せるではなく広げられるのではないかと考えています

「現代的な懐古主義」というテーマを最近ずっと考えながらデザインをしているのですが、車や家屋が完全に効率のみ良いデザインが求められるかと言えばジムニーのような空力乗り心地一切無視の車がバカ売れしてたりします
*ジムニーはクロカンなので性能的には当然ですけど

伝統的なデザインと効率的なデザインを使いつつ、落合陽一さんも言ってたような日本ならではの発酵した面白いものを作るという文化をこれからの世代に引き継げれば、それがこれからの伝統工芸や工場を残していくキーになるのではないか、とモノづくりを通じて考えています


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