駆け出し百人一首(38)志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りて出づる有明の月(藤原家隆)

志賀(しが)の浦(うら)や遠(とほ)ざかりゆく波間(なみま)より凍(こほ)りて出(い)づる有明(ありあけ)の月(つき)

新古今和歌集 冬 639番

訳:志賀の浦よ。湖岸から水が凍りつき、漣は遠のいた。その波間から、これもまた凍りついたかのように昇っている有明の月。

Seen from Shiganoura, the shore of Biwa Lake, the morning moon is rising from the waves in the distance as if it were frozen.


志賀の浦は、琵琶湖の西岸のあたり。いまの県庁所在地・大津よりも北にあり、寒さの厳しい印象がある地名です。それで、岸から湖面が凍っていると詠まれています。
頻繁に、ではないものの、実際に氷が張ることもあるようです。ただし、歌合で「湖上の冬月」という題のもとに示された歌であり、湖畔に立って情景を目の当たりにして詠んだわけではありません。志賀の浦という地名から想像を膨らませたのですね。
このように、特定のイメージを喚起する力を持っている地名を「歌枕」と呼んでいます。


和歌の修辞法

凍りて出づる有明の月:澄み切った輝きの有明の月を、凍っているようだと喩えている。見立て。

#駆け出し百人一首 #新古今和歌集 #藤原家隆

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