テリトリー圧縮技術はどこまで行けるのか?

 ■TYPE :テリトリー系列
 
 テリトリー系列は圧縮ができる。
 これは一応(少なくともアルター内では)【女教皇】考案の技術体系らしく、現段階での使用者はかなり少ない。BBB、月影、あとはビシュマルくらいのもの。
 見逃せないのは、【凍竜王】がこれに似たものを使っていることだ。

「案の定か。これはテリトリーの圧縮に近い技術だな。展開していたスキルに濃淡を作って、この空間上に置いたんだろう?」
 (『ロボータの冒険』超獣・竜王・ポメラニアン 地上最悪の決戦編⑥)
 
 【鮮血帝】は一体どこでそれを知ったんだというのは一先ず置いておいて(レジェンダリアにも別口で発明者がいるのか?)、竜王気とテリトリーは似たような扱いができる。圧縮技術は、“形のないものなら制御の自由度が高い“という触れ込みだったのだから、別におかしくはない。

〇キツネーサンは【冰竜王】みたいに結界内で効果の濃淡を作ることはできるのでしょうか?
(=`ω´=)<圧縮するのが限度や
(活動報告 2021年04月10日 (土) )

 やはり同様の技術なのだ。
 そうなってくると次の発想が浮上してくる。テリトリー系列は、果たして“神装”に至れるのだろうか?

 ◆

 ■竜神装

 竜神装の定義は次のようなものである。
 
 (=ↀωↀ=)<《竜王気》単体で無から有を生む物質化現象
 (AE『ロボータの冒険』超獣・竜王・ポメラニアン 地上最悪の決戦編⑩ あとがき)

 つまり、魔力と魂力によって成るエネルギー(竜王気)を凝縮、高めていけばそれは神装という形で具現化する。ならば、テリトリーだって圧縮技術の果てには実体化が成されるだろう。
 ここで他系列のことを考えてみたい。特に五大系列だ。
 大雑把に言って、アームズは器物、ガードナーは生物(自立稼働)、チャリオッツは騎乗物、キャッスルは建築物として有形のものになっている。そこのところがテリトリーとの違いで、つまり圧縮技術の余地の有無なんだけれど、ここで発想を変えてみたい。
 テリトリーの圧縮技術を極めていけば、他の系列のような形で物質化するのではないか。

 現時点で出てきている圧縮を見てみると、初心者だろうBBBは置いておいて、
・《月面除算結界》の“夜”、“燕”、“枝”(及び《陽寝墨の皮衣》も近いものだとの記述アリ)
・クナイ型《合葬(アンサンブル)》
・拳に炎を集める《爆炎哮(レーヴァテイン)》
となる。特に【暗殺王】のクナイ型は分かりやすい。<エンブリオ>なら間違いなくアームズになっているだろう。
 つまり仮説として、テリトリーの圧縮を極めた先には、<エンブリオ>同様四つのTYPEを持つ具現化があり得るのではないかと考えたい。
 
 ◆

 ■疑義

 ところがこれ、ちょっと大きな穴がある。
 圧縮の強化率はかなり高い。《竜神装》では【塊竜王】が神話級と同等レベルかそれ以上にまで強化され、自壊しかけていた。古代伝説級が神話級相当になるのはかなりの大変化である。

(=ↀωↀ=)<ところで伝説級の数倍が神話級なら(=ↀωↀ=)<……逸話級の十倍ってどうなると思います?
 (『ロボータの冒険』超獣・竜王・ポメラニアン 地上最悪の決戦編⑧ あとがきより)

それはつまり、ステータスだけならば神話級の領域ということ。
 (同章⑨ 【塊竜王】の推定による)

 逸話級の十倍は神話級に匹敵し、これは伝説級の数倍とほぼ等しい。丼勘定だが、つまり神話級と古代伝説級の差は最低でも二倍はあると見積もっておいてよいだろう。たかが二倍と侮るなかれ、この領域の連中のステータスは万単位で数えられる。それが二倍、三倍。ピグミーマーモセットがニシローランドゴリラになるようなものだ。【塊竜王】は《竜神装》によって、AGI80000の【バーストライカ】を遥かに下回るところから、その目で捉えられない速さにまで自分を強化した。

AGI八万の【バーストライカ】ですら見逃すほどの速度で、《竜神装》が間合いに入っていた。
 (同章⑩)
 
 もし仮に、<エンブリオ>五大系列のうちテリトリーが他四系列の前段階なら、大きな力の差が生じてしまうことになる。これはちょっと考えにくい。同じ次元で捉えるべきではないだろう。 
 そこへ行くとそもそも、なぜ圧縮技術の強化率だけがこれほどに高いのか?というところに疑問が浮かんでくる。効果範囲の小さな能力はいくらでもあるが、それによって得られる出力上昇と、圧縮による強化率は明らかに釣り合っていない。

 それでもビースリーは重力場の圧縮を成し遂げている。
 自らの周囲三六〇度全てに発生させていた重力場を、前方二二・五度に絞って発動する。
 範囲は十六分の一になり、圧縮過程でロスを生じさせながらも形成される重力場は……これまでを凌駕する。
 その重力、最大点で五〇〇〇倍に至る。
 (『第六章 私《アイ》のカタチ』第二十六話 此処からは――)

 範囲が1/16で効果量10倍(素の《天よ重石となれ》は最大500倍の重力を掛ける)、ロスがあるということなのだが、それでも破格である。初心者でこれだ。【塊竜王】【凍竜王】に至っては比べるべくもない。圧縮技術は強すぎるのだ。

 これに説明をつけるなら、おそらく難易度の差だろう。つまり圧縮技術は予め用意されたものではなく自前の研鑽が必要なので、その分だけ効果量が高いのだと思われる。これは逆説的にリソースの説明にもなっていて、つまり“習得難易度”はリソース的に価値を持つはずなのだ。
 現れる結果が同じでもそれをするのが難しいことほど出力が上がりうるのだとしたら、テリトリー以外の系列はプリセットされたものゆえに圧縮後テリトリーほどの高出力を持たないのだろう。
 これは、『Touch the GAME OVER』第十八話 炎――証明のあとがきにある、

 (=ↀωↀ=)<制御とか安全とか取っ払うと威力は跳ね上がります
 
と同じように解釈できる。要は制御能力をプリセットで組み込むことはその分だけリソースを使うことであって、だから五大系列は最終的にほぼ同等の出力を持っているのだろう。具現化するほどに高い圧縮率によって得られたリソースぶんの力が、その輪郭を保ち造るための制御の消費と釣り合っているので見かけ上変わらないように見えるのではないか。なにせ、非実体スキルを圧縮して具現化することはハイエンド並の才能か何百年クラスの研鑽が必要な技術なのだから。

 ◆

 では現実的に、テリトリー神装が可能なのは誰でしょうか。
 現存する<マスター>連中にはまず不可能だ。彼らはせいぜい六年程度の時間軸しか持たない。そして今のペースだとデンドロ終了まで長くても三年もかかるまい。その程度の時間では神装の発明は不可能だと思われる。仮に《竜神装》のことを見聞きして知っていても(“残滓”などがあればともかく)。
 では、<無限エンブリオ>はどうだろうか。
 彼らは少なくとも二千年の時間をあの世界で過ごしてきた(もっとも、演算能力の都合上それを最大限に使えたのは【無限増殖】くらいだろうが)。非実体の能力を持つと思しいのは【無限空間】【無限時間】そして【無限幻想】【無限変換】あたり。
 圧縮の概念を持たないということはおそらく考えにくい。なにせ<エンブリオ>全史からみて新参もいいところの【女教皇】が発明できたのだから、異大陸船でもテリトリー圧縮者はいたはずだ。
 ところが<無限エンブリオ>は圧縮すら使う様子がない。ましてやその実体化もなされない。これはなぜなのだろうか。勿論、あの管理AIが本気を出したシーンが皆無だから、とも言えてしまうのだけれど、ひょっとして彼らには高度な圧縮が不可能なのではないだろうか。
 <エンブリオ>は全員が自我を持っているわけではない。というかそのほうがむしろスタンダードなふうですらある。つまり、スキルの改造や研鑽は本質的に苦手なのかもしれない。<エンブリオ>は同調者なしには進化できないが、これが圧縮技術にも当てはまっているのなら、彼ら管理AIはそもそも圧縮が使えないか、使えても初歩的な操作に留まるのかもしれない。
 上でも考えたが、同調者の研鑽で高出力化するというのは、見ようによっては外部リソースの投入に似ている。外からMPやなにかのコストを取り入れることと同じように、高難易度な人間の研鑽という経験(情報エネルギー?)をリソースに変えているのならば、それがなくなった今、<無限エンブリオ>には圧縮による出力向上は見込めないことにならないだろうか。もちろん同調者が研鑽した結果の能力として遺されたものは別にしても。

 To be continued
 
 

 



 
 

 

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