思春期の大罪(2/4)

秋になり、残り半年ほどで卒業間近となった頃である。当時、仲良く遊んでいた6,7人の男子グループがあった。僕らはこのまま平凡な日常を続けるのはどこか勿体なく、退屈に感じていたので、卒業までに、なにか刺激的なことをしようという話になった。そこで僕らはあるゲームを行い、敗者から罰ゲームとして好きな人に告白していくことにした。振り返れば、これは100%悪ノリでしかなかった。当然のごとく、このゲームを行うためには、好きな相手がいることが条件となるのだが、もちろん全員が全員いるわけではなかった。そのため、このゲームのために好きな人をでっち上げるはめになった友達もいたほどだ。僕もこのゲームになんとなく参加することになったのだが、その時はMさんに告白するなんて全く予想もしていなかったし、その時になったら適当に誤魔化せばいいかなと思っていた。第一、この時点では彼女のことを本当に好きなのかどうかまだ微妙な節があった。しかしその反面、心の奥底では、このゲームに参加することで、彼女と接点を持てるのではないかと言う期待も同時に抱いていた(のだと思う)。

こうしてゲームは始まった。始めこそ、恋愛成就ゲームとしてこのゲームはうまく機能していたと思う。現に成就した友達もちらほら見受けられた。しかし、途中から、おふざけ要素が混じり込み、もはやその人のことが好きかどうかはどっちでもよく、とりあえず、告白するという非日常を楽しむゲームと化していった。※1
幸い、僕の順番は最後だった。自分の出番が回ってきたのは冬ぐらいだったのだけれども、僕はなにかと理由をつけて告白をするのを引き延ばし続けた。やはり自分のなかで彼女のことが本当に好きかどうか曖昧なところがあって、どうせならばしっかり白黒をつけたい気持ちがあった。
また、告白によって、僕らの平凡な日常/たまに彼女を見かけるだけでよかった日常を壊すことになるかもしれないという怖さもあった。

それでも告白の日は刻々と迫ってくる。なかなか告白をしない僕を見かねた友達は、卒業式の後に校庭の片隅で告白する案を僕に持ち出した。確かにそれならば、たとえ面識が少なくても、ベタなシチュエーションの効力を利用することで、告白がスムーズに行えるかもしれない。あわよくば雰囲気に乗じて了承してくれるかもという算段があった。

しかし、日にちは迫れど、まだ僕の中で告白を決めかねている自分がいた。そもそも恋愛とはどういった感情を言うのだろう。恋愛に関して、経験も知識もゼロな僕は何とかして、自分の気持ちを整理しようと必死だった。そのぐらいの準備をしないと、いくらゲームとは言えど、彼女に失礼な行為であることは、中学生の僕でもさすがに自覚していた。そこで残された期日で、恋愛を学ぶ最速の手段はなにかと考えた結果、僕は一番身近にあった恋愛ソングを聴き漁ることにした。

※1 当時を振り返ると、ゲームの趣旨が変わることで、事実上、Mさんがこのゲームのために選ばれた犠牲、材料のような側面が現れてしまったのは、本当に申し訳ないに限りである。しかし、決してそのようなことはなく、この時、確かに僕は彼女に思いを寄せていたということだけは弁解しておきたい。

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