ジャック・アマノの“アメリカNOW” ジョー・バイデンの指名した女性副大統領候補はカマラ・ハリス
民主党の大統領候補ジョー・バイデンのパートナー=副大統領候補が発表された。彼が悩みに悩んで選んだのは、カマラ・ハリスというカリフォルニア選出の上院議員(55歳/女性)で、カリフォルニア州検事総長を勤めた後に国政に出てきた人。母親がインド人で、父親はジャマイカ人。サン・フランシスコの近くのバークレイで生まれた移民の二世で、アフリカ系ではないものの“黒人”、しかも“アジア系”というカテゴリーの人。有色人種の女性が副大統領候補になるのは今回が史上初めてで、それを喜ぶ声がアメリカ中で湧き上がっている。現職大統領サイドは、ドナルド・トランプ&マイク・ペンスの白人男性コンビで再戦を目指す予定なので、対立の構図くっきりだ。
副大統領候補発表翌日の新聞3紙。全国紙のUSAトゥデイと、地方紙のインディアナポリス・スターは彼女の記事が一面トップ。ウォール・ストリート・ジャーナルのトップはティックトックのユーザーデータ収集問題だったけど、ハリスの記事は4ページ目に続いた部分まで含めると最大(タイトル写真)
バイデンは随分前から、「自分の副大統領になるのは女性」と言っていた。そろそろそういう時期だと思う。前回の2016年大統領選ではヒラリー・クリントンが女性初の大統領を目指し、惜敗。2008年には共和党側がジョン・マケイン大統領候補がアラスカ州知事だったサラ・ペイリンという女性を副大統領候補に指名したが、彼らは”初の黒人大統領候補”だったバラク・オバマに敗れた。
バイデンは、女性を選ぶ……からもう一段進んで、黒人女性を選んだ。この夏からのブラック・ライヴス・マター(BLM)運動の大きな盛り上がりが影響したのだろうね。黒人の地位改善に人生を捧げ、ジョージア州選出下院議員も務めたジョン・ルイス下院議員が先月亡くなったことも、「副大統領候補には黒人を」という声を大きくさせ、ハリス以外にも何人かの黒人国会議員と、オバマ政権でアドヴァイザーを務めていたスーザン・ライスが候補になっていた。白人女性の候補だとエリザベス・ウォーレン(マサチューセッツ州選出上院議員)が実力も知名度も抜群と見えていた。彼女ってクリントンの副大統領候補選びでも名前が挙がってたなぁ。女性だけのコンビは先進的過ぎ……と見送られたみたいだったけど。まぁ、ウォーレンはかなり左寄りだし、71歳という年齢とダブルで引っ掛かったと思う。バイデンて、もし当選すると就任時点で歴代最年長の大統領になる=78歳。副大統領も揃って高齢ってのはアウトでしょ、若さ=強さも=正しさのアメリカ的に。その点、ミシガン州知事のグレッチェン・ウィットマーは48歳と若いし(綺麗だし)、彼女を迎えれば前回トランプの取ったミシガン州を奪い返せるし……と最後の最後まで選考に残っていたようだった。もし彼女を選んでたら、バイデンて黒人社会の反発を買ったり、大統領選への彼らの興味が削がれたりしたんだろうか。いずれにせよ、ハリスは国政経験者である点でウィットマーを上回ってたと思う。
「バイデンとハリスは法人税を上げる」とアピールするリズ・チェイニー。父親は元副大統領。ジョージ・ブッシュ(息子の方)政権を支えたディック・チェイニー。彼女は現在、ワイオミング選出下院議員。アメリカも政治家の世襲、多いね
日本でもタレント議員てパターンがあって、知名度で票を集めちゃうとこがあるけど、今回の大統領選にカニエ・ウェストってラッパーが立候補してること、日本で報道されてるかな?
「政党(パーティー)名は?」と記者に聞かれて、「バースデイ・パーティ」と真顔で答えた黒人シンガー。娘にノースって名前をつけた(苗字とくっつけてみてください)のと思考はほぼ一緒かと。あの人、トランプ陣営に全面的な協力を得ての立候補なんだよね。バイデンから少しでも黒人票をひっぺがせたら……という寂しい発想の産物。
こちらも政治家の娘。サラ・サンダース・ハッカビー。見たことあるでしょ。ドナルド・トランプ政権でホワイトハウス報道官をしばらく務めてたから。共和党で大統領候補にもなったことのあるマイク・ハッカビーが彼女のお父さん。いま彼女は父と同じくアーカンソー州知事になることを目指して活動中とか
副大統領候補って、ひとつ間違うと敗因になる。ペイリンとか、その代表例かと。クリントンの選んだケインもインパクト弱かったし、ペンスってトランプの勝利にどこまで力を発揮したのか……と思う。ハリスというチョイスはどういう結果に繋がるんだろう。
健康不安説も流されているバイデン。大統領に就任した後に彼の身に何かあったら、副大統領が大統領職を引き継ぐ。ハリスがアメリカ大統領になるということ。史上初の女性大統領はそんな形で誕生する可能性もあるわけで、今回、副大統領候補に選ばれたのは、大統領候補に選ばれた……と考えられなくもない。一期目を終えるとバイデンはもう82歳。二期目に挑戦しなければ、民主党はハリスを大統領候補として戦うことになるはず。
親・共和党で憎・民主党のフォックス・ニュースは、バイデン/ハリスのコンビが決まるや、さっそくネガティヴ・キャンペーンを開始。看板番組ハニティーは、マイク・ペンス副大統領を発表翌日の晩に登場させちゃうって
ウィルス対策に失敗して16万人以上が死亡し、失業者が5,000万人以上出て、トランプの支持率は年代を問わず下がっている。そういうニュースがある反面、35歳以上のトランプ支持は今でもまだ半分近くあるというデータが報道される。唖然とするよ、「知り合いが死んでも、職を失っても、民主党政治になるよりマシ」ってことだから。オバマ政権時代ってそこまで酷くなかったって感じてたけど。民主党には思想が大きく左寄りの人も確かにいるけど、バイデン&ハリスは党内では保守派で、トランプ&共和党よりマトモな政治をやってくれそうだけど、当のアメリカ国民はそう考えてはいないみたいね。民主党に対する不信感が強いのは、黒人にも、貧しい人にも、広く、平等に……ていう彼らの政策(=例えば国民健康保険)を、「自分の財産を奪うもの」と捉えてるからなのか。「税金がまた高くなるゾ」なんて大統領が言うと、モロに信じちゃってる。アメリカ人て露骨に「カネ、カネ、カネ!」だから、生き方、考え方の根本が。お金は幸福な人生に必要なものだけど、度を越しちゃってる感じ。そして、その傾向は近頃さらに強まっている。
以上 第24回終了