人間の一生
職業に上下もなければ貴賤もない。
世のため人のために役立つことなら、何をしようと自由である。
しかし、どうせやるなら覚悟を決めて十年やる。すると二十からでも三十までには一仕事できるものである。それから十年本気でやる。
すると四十までに頭をあげるものだが、それでいい気にならずにまた十年頑張る。すると、五十までには群を抜く。しかし五十の声をきいた時には、大抵のものが息を抜くが、それがいけない。「これからが仕上げだ」と、新しい気持ちでまた十年頑張る。すると六十ともなれば、もう相当に実を結ぶだろう。だが、月並みの人間はこの辺で楽隠居がしたくなるが、それから十年頑張る。
すると、七十の祝いは盛んにやってもらえるだろう。しかし、それからまた、十年頑張る。するとこのコースが一生で一番面白い。
~森信三~
このような道を歩むことができるのは、「仕事の目的」が、変化して
いるからである。
その時々の年代で、仕事に打ち込み、何かを成し遂げてきたならば、
目指すべき場所を失い、仕事に行き詰まることは当然なのである。
それゆえ、自らの仕事の意味を問い、その価値を問い、その目的を更新し
続けることで、あと10年、頑張ることができるのである。
もしもこういう姿勢で、仕事に取り組んできたならば、単なるJOBで、はじまった仕事も、VOCATION=天職のレベルに引き上げることができるのである。
ここにくればもう楽隠居のタイミングは、年齢でなく、天が決めるという
境涯である。