善き教師の条件
善き教師の条件を一つだけあげよと
言われたら、「苦労している人」と
答えるわけである。
苦労に苦労を重ねた苦労人である
こと。これが、善き教師の条件と
考えるわけである。
苦労をしてきたから、人間の痛みが
わかるのである。
苦労をしてきたから、人間の汚さが
わかるのである。
苦労してきたから、自分の弱さが
わかるのである。
そして、苦労を糧にし、乗り越えて
きた人は、人間の暖かさを知り、
感謝の念が深くなるからである。
それゆえ、苦労人の教師は、
どこか人間的な深みを感じさせる
のである。
しかし自分が、実際に教師に
なった時、どれもこれもまったく
持ち合わせていなかったわけである。
両親が、我が子に苦労させまいと
懸命に努力したからである。
だから、教師になり、苦労三昧の日々を味わったわけである。
そうやって、自分の甘さが、
日々削られていったのである。
今思えば、実にありがたいこと
だったのである。
人生というものは、帳尻があっているのである。