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過去の自分をみる

映画「クロスロード」は、理想でも、きれいごとでもない。リアルな青年海外協力隊を描いた作品である。

カメラマンの助手になったものの、
目標の見えない日々を過ごしていた
沢田は、自分を変えようと青年海外協力隊に参加したのである。

ある日、現地に住む少年ノエルと
出会い、沢田は、彼に写真のとりかたを教える。

その熱心な姿をみて、ノエルの
姉アンジェラは、「なぜ弟に写真を
教えてくれるの」と、尋ねるので
ある。

「それは、俺に似ているから。俺も父親が死んで、貧乏だった。でも、カメラマンという夢があった。ノエルにも、夢があればと思って」と、
沢田は、答えるのである。

しかし、沢田の思いに反し、ノエルは、彼のカメラを盗むのである。

弟の罪を、必死で謝罪する姉アンジェラに対し、沢田は、語るのである。

「いいんだ。ノエルを怒らないでくれ。写真が好きになったんだ。だから、カメラが欲しくなったんだろう。彼の夢を叶えさせてやってくれ」と。

この沢田の言葉に対し、アンジェラは、意を決して言い放つのである。

「どうやって?ノエルと自分は似てるって言ったわよね。あなたの家も貧乏だったって。でも、カメラは買えたんでしょ。ノエルと私には無理なの。
今日を食べることで、精一杯なのよ。夢をもち続けられるかぎり、頑張れる?私たちに、そんな余裕はないの。あなたは、何もわかってないわ。私たちの住む世界は、あなたの住む世界とは、全然違うの。さよなら。」と。

ショックを受けた沢田は、「俺にできるのはこれだけだ」と、アンジェラにカメラを渡し、その場を立ち去るのである。

こうして、沢田は「自分は、協力隊で何もできなかった。」という無力感を抱えたまま、帰国の途についたのである。

理想でもきれいごとでもない。
これが、現実なのである。

何もできなくて当たり前なのである。

むしろ何かできたと思うのは、勘違いなのである。

だから、協力隊でできることは、
ただただ学ぶことなのである。

赴任国と、祖国日本を比較して、
学ぶことなのである。

「夢は叶う」とか「夢を持つことは
大事」というフレーズは、一部の先進国のみ、ヒットするものなのである。

「夢を持つことができること」
「夢に挑戦できること」

これは、世界においては、特別なことなのである。

だから、日本人として、祖国日本を
学ばねばならないと思ったわけである。

そして、日本に日本人として生まれた、その意味をとことん追求したいと思ったわけである。

赴任国で、「何ができたか?」では
なく、「何を学んだか?」が、大事であり、帰国後に、「日本人としてどう生きるのか?」

これが、問われていると考え、
生きてきたわけである。

あの頃の思いを、映画「クロスロード」が、思い出させてくれたので
ある。

過去の自分との出会いは、自分を確かめることとなり、心の穏やかさをもたらすのである。

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