最上のわざ
この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうなときに希望し、
従順に、平静に、おのれの
十字架を担う。
若者が元気いっぱいで神の道を歩むのを見ても、ねたまず、
人のために働くよりも、
謙虚に人の世話になり、弱って、
もはや人のために役立たずとも、
親切で柔和であること。
老いの重荷は神の賜物。
古びた心に、これで最後の
みがきをかける。
まことのふるさとへ行くために。
おのれをこの世につなぐくさりを
少しずつはずしていくのは、
真にえらい仕事。
こうして何もできなくなれば、
それを謙遜に承諾するのだ。
神は最後に一番よい仕事を
残してくださる。
それは祈りだ。手は何もできない。けれども最後まで合掌できる。
愛するすべての人のうえに、
神の恵みを求めるために。
すべてをなし終えたら、
臨終の床に神の声をきくだろう。
「来よ、わが友よ、われ汝を
見捨てじ」と。
「ホイヴェルス神父の詩」より
なぜ人は老いるのか。
いつも考えるわけである。
なぜ今まで容易にできたことが
できなくなるのか。
いつも考えるわけである。
周囲に迷惑をかけてまで、
生きたくない。
だから、ピンピンコロリ。
これがいいと、
いつも考えてきたわけである。
しかし、老いるとは、
まことのふるさとに行くための
準備期間なのだという。
この世に対する執着の鎖を
解き放すための貴重な時間。
これが、老いることなのだという。
最上のわざ
老いに抗うという、
この世の価値観にどっぷりと
漬かっていたならば、
決してたどりつくことの
できない真理なのである。