変化しているタデアイの栽培暦
ここ数年のタデアイ栽培シーズンで気になったことを簡単にまとめてみようと思います。異常と言われたここ数年の夏の暑さも、タデアイに含まれる色素の素の成分(インジカン)の生成量に影響を与えているかもしれないことについても触れようと思います。
ツバメと種まき
ツバメの飛来がタデアイの種まきを始める合図だと初めて聞いた時は、素敵な合図だと思いました(もう20年以上前の話です)。ツバメはフィリピンやマレーシアなどの南の国で冬を過ごし、3月ごろに2,000〜5,000kmを移動して九州に到達し、暖かくなるにつれ日本列島を北上して各地で子育てを行います。
これはつまり、畑に霜が降りなくなった季節であることの目安の景色として、伝えられていたのだろうと考えられます。だいたい3月末から4月初め頃のイメージですね。
発芽をした後は間引きをしながら適当な大きさの苗になるまで待ちます。この間、水を切らさないよう注意が必要です。本葉が3枚〜5枚になったら、3本ほどをセットにして、圃場に定植します。昔の人はここまでの作業をすべて露地で行っておりましたから、「霜が降りない」ことはとても大切なことでした。どんな作物を作るのにも共通していることですが…
現在はビニールハウスがあるので、種まきシーズンを多少前倒しにすることが可能です。我が家では、ビニールハウスで毎年2月に種を蒔きます。そして4月中に圃場への定植を完了させます。ツバメがやってくる頃は定植が行われている最中で、畑の害虫をたくさん食べてもらえると嬉しい、という状況になっています。
この栽培暦の変化は、ビニールハウスという文明の利器によって促されたものと考えて良いと思います。
収穫期の変化
このところの初夏からの気温の上昇のスピードと程度が、10年前とは違ってきていると感じています。2014年6月の平均気温は23.4度。2024年6月の平均気温は27.0度(気象庁:東京都)。4月中に畑に定植したタデアイの苗は、6月下旬には立派な株に育ち、収穫が可能となっています。
10年ほど前は7月に入って少ししてからが収穫シーズンだったのですが、少しずつ早くなっています。そして、暑いと感じる時季が長くなっていますよね。日中の気温が下がってくるとタデアイの花穂が出てくるのですが、いつまでも暑いので花穂もゆっくり出現しているように思います。
暑い時季が長くなるのは、収穫期が伸びるイメージでありがたく感じますが、この間、雑草との戦いも熾烈を極めます。特にイネ科の雑草はタデアイの株の合間からどんどん成長して、「あれは作物ではないですよね…?」と周りの人から訝しがられるほど逞しい姿になります。あっという間に。
夏の灼熱の日差しに焼けてしまったりしないほど強い雑草たち。タデアイに水切れはタブーなので、土が乾き切らないように管理しているとどうしても雑草も一緒に大きくなりやすい。だから除草作業をこまめにしないと収穫作業の際に邪魔になり、効率が悪くなります。
幸い、タデアイも極端な暑さの中で葉が日焼けするという状況は今までのところ見られません。ですから雑草の管理さえできれば、収穫に問題のない状況を保てます。問題は日中の明るい時間帯に気温が37度をすぎる日が増えたことです。この気温の中での畑作業は命の危険を伴うため、屋内での作業に集中することが多くなり、除草作業に当てられる時間に制限がかかります。そうすると、気がついた時には畝間に堂々たるイネ科の林が出現するという悲劇に見舞われます。今年の夏はその様子を呆然と立ち尽くして眺めながら、蜃気楼であってほしいと何度願ったことか…
そういった事情で、収穫期が長引いても収穫量が格段に増えるわけではなく、むしろ除草作業と収穫のタイミングを見計らいながら、短時間に少量ずつ収穫するという状況になっています。
いっそのこと、南米原産のナンバンコマツナギ(マメ科・低木)を栽培できたら良いのにと思うこともしばしばです。ですが、日本には冬がある…ナンバンコマツナギは冬に耐性がありませんから、これは無理な願いです。
ちなみに、沖縄本島で主に栽培されているリュウキュウアイは、我が家のビニールハウスで毎年自生しています。冬には枯れてしまうのですが、春になると芽を出して、秋が過ぎる頃までキレイに緑色のツヤツヤの葉を茂らせています。もしかしたらですが、今後はタデアイとリュウキュウアイの2種で栽培と顔料精製を試みていくのも良いかもしれません。
気候の変化とともに、そういったことも柔軟に考えていく必要がありそうです。植物の生態をよく観察しながら可能性を探っていきたいと思います。
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