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万祝博覧会 〜海をまとう〜
夏の明るい陽射しに似合いそうな、景気の良い博覧会のご案内です。パッと心が晴れるような展示の数々に触れられること、とても楽しみです。
漁師の晴れ着 万祝(まいわい)
南房総の漁村が発祥と伝えられている万祝(まいわい)。江戸時代、青森から静岡の漁村に広がった漁師の晴れ着で、藍染の地に縁起物の図案を鮮やかな型染めで染め抜かれた晴れやかな装束です。
実は私は、つい最近この万祝を知りました。この度の千葉県立中央博物館での特別展の案内で初めて知ったのです。藍染の本を読んできた中で、万祝の話題を目にした記憶が無く、もしかしたら見落としていたのかもしれません…気になって、関東在住の数名の藍染仲間にも万祝を知っているか尋ねましたが、誰も知りませんでした。まだまだ知らないままでいることが各地にありそうです。
万祝の概要について、千葉県教育委員会の資料から引用します。
万祝とは、大漁の際、祝いの引出物として出された漁師たちの晴れ着のことである。幸運にも思わぬ大漁があると、船主や網主などは、船子や網子などを集め、その労をねぎらって祝いの席をもうけた。もともとは、この祝宴のことをマンイワイ、マイワイなどと称していたが、この席上で揃いの半纏や反物を引出物として出すようになり、やがてそれが慣習化すると、この祝い着そのもののことをマイワイと呼ぶようになった。
他の記述も当たってみると、藍色の地の色は黒潮を表現しているとも伝えられていました。イメージが膨らんでワクワクします。
千葉県立中央博物館 令和6年度特別展
1800年代の江戸時代に千葉から各地に広まったそうです。江戸時代といえば、木綿が普及し、町民の暮らしに藍染が浸透した時代です。この万祝の生地も主には木綿のものが使われているようです。さまざまに展開されていた藍染文化の一端に、このようなハレの装束もあったのですね。
時代の変化につれて、万祝の文化も変わっていき、昔ながらの万祝が新たに作られることも減っているそうです。昔に作られた状態の良いものは、少しずつ各地の博物館や美術館に保存されているようですが、今回そうした各地の万祝が一堂に揃う初めての博覧会が、千葉県立中央博物館で開催されています。
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会期中のイベントのバリエーションも素晴らしいです。オンラインで参加できるシンポジウムもあるので、私も申し込みしました。各イベントへの申し込み方法など詳細はこちらの千葉県立中央博物館の公式ページからご覧ください。
<千葉県立中央博物館 令和6年度特別展 万祝博覧会 ー海をまとうー>
また、期間中のミュージアムショップに、拙著『伝統色藍 7つの秘密』をラインナップしていただいております。本当に嬉しいです。万祝を堪能された皆さんに、藍への興味を深めていただくきっかけとなれたら幸せです。
本当に興味深く貴重な機会ですので、私も足を運ぶ予定でいます。夏のひととき、黒潮と暮らす漁村の祝いの文化に触れられるなんて、幸運です。ぜひ、たくさんの方にお運びいただきたいと思っています。
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