本建て正藍染展 INDIGO SESSION vol.1
本建て正藍染に携わる人が集い繰り広げた、貴重なトークを記録しました。
INDIGO SESSION vol.1 伝統とは何か
同じ師匠から「本建て正藍染」の技術を教わり、継承しようと真摯に取り組む仲間たちで開催した藍染展示会。2023年の暑い夏の日のことでした。その会場で開催したトークイベントの記録を電子書籍として出版いたします。
発売予定日は12月8日(金)です。
パネリストはこちら。
左から、兵庫県で養蚕から染色、織りまで手がける原田さん。静岡県で大判のオーガニック生地に、正藍染で型染めに取り組まれている南馬さん。東京在住で、私たちの師匠の書籍出版のために、ヒヤリング・編集・ライティングに取り組まれてきたライターの西川さん。栃木県で真摯に正藍染に取り組まれている、デニムデザイナーの齋藤さん。そして、ファシリテーターの透野。
このメンバーで1時間半は短すぎました。
6時間あってもいいくらいのメンバーです。
壮大なテーマ「伝統とは何か」と銘打ち、ファシリテーターを任され、内心冷や汗をかきました。
「これ、収拾つくんかな。。。」
どうなったのかは読んでいただくのが一番かと思います。
内容的には、昔ながらの藍染に携わることへのさまざまな体感が語られていて、貴重な記録になっていると思います。
それぞれの現場で起こっていること
私たちが学んだ「本建て正藍染」は、一年草のタデアイを堆肥状に加工した染料を使います。そのまま水に投入しただけでは染まらないので、木灰で作った灰汁を使って染められるように調整します。こうして染められるように甕を調整するための一連の作業を、藍染に携わる人は「建てる」と呼んでいます。
蒅と灰汁だけで調整し(石灰は使いません)、蒅に含まれている菌やその作業場に住んでいる菌が活性化して甕の中で発酵し、その菌の働きかけで甕の中の藍色に染まる成分が染められる状態に変化します。
だから、重要なのは「菌」。菌が喜ぶ環境を甕の中で作り続けることがとても大切なことになります。
これはとても面白い反面、厄介なことでもあります。甕を設置した作業所ごとに菌の種類や生育状況など、条件が変わるから。もっと言うと、同じ作業所の中の隣り合った甕ですら、同じ条件で管理しても同じようには染まりません。
だから、基本的に押さえておくべき技術があったとしても、その後の状況を見ながら施す手立ては、その現場にいる人が見極めなければなりません。
その「見極め」の根っこにどんな考え方を持つか、ということが私たちの教わったことの核であったように思います。
自分の染め場でうまく行ったことが他の染め場では機能しない。そういったことも珍しくありません。逆に、思いもよらぬ手立てを見つけた染師の話が大いに役立つこともあります。
だから、時々でもいいから、こうして藍染に携わる人同士でそれぞれの現場の体感を話し合うようにするのは、とても大切なことだと思っています。
何を見てどう感じ、どう考えてどんなことをしたのか。その結果どうなったのか。そういったことを膨大なケーススタディとして分かち合い続ける仲間がいると言うことは、染色の精度を高め合うためにもとても重要なこと。そんな思いもあって、こうした展示会とトークセッションを続けていけたらいいなと考えています。
パワーポイント + 補足画像多数(全ページカラー)
このトークイベントはインスタライブとしてInstagramで配信されました。本建て正藍染の概要を説明するために用意したパワーポイントをスクリーンに映しながらお話ししましたが、Instagramでご覧くださっていた方には見えづらかったのではないかと思います。
今回、当日使用したパワーポイントも全て収録しました。更に、トークの内容に合わせて必要と思われる画像を多数掲載しました。染色に関連する話題でもあるため、全ページカラーに踏み切りました。
リアルタイムで配信をご覧くださっていた方にも、会場まで駆けつけてくださっていた方にも、十分にお楽しみいただける内容に仕上がっています。
拙著『伝統色藍 7つの秘密』では十分に語れていない、「本建て正藍染」の魅力を垣間見ていただけるような語らいの記録にもなっています。拙著は「藍」という色を「素材」として捉え、藍農家の私なりの体感を書き連ねたものですが、今回の記録は明確に「伝統的な染色に取り組む」という角度を持った語らいなので、全く違った面白さを感じていただけると思います。
やっぱり腹を括らねばと感じたこと
ここからは、私自身についての個人的な話です。
今回の出版にあたって、パネリストでもある西川さんが全面的に編集にあたってくださいました。個人的に、プロのお仕事を垣間見させていただく良い経験になり、本当にありがたいことでした。
以前の記事で、「大川さんの取り組みを文章にして残そうとされている西川さんも、まさしく「文筆家としてのあり方」を引き受けた姿。」と書いて、私も自分のあり方に腹を括ろうと気持ちを引き締めておりました。
今回、初めてお仕事として(といっても西川さんとしてはかなり手加減してくださっていると思います)共同作業にあたらせていただいて、「うん、やっぱり括ったつもりの腹をもう一度括り直したいな」と感じました。
最初の原稿が送られてきた時から書籍としての仕上がりの確認に至るまで、とても勉強になりました。キリキリに括った腹で、しばらく西川さんの後ろをついて行かせていただこうと勝手に企んでいます。素敵な先輩がそばにいて、超ラッキーです。
そしてINDIGO SESSION vol.2 へ
2023年12月8日(金)〜10日(日)に、群馬県桐生市にて第2回本建て正藍染展を開催します。
そして、会期前日の7日(木)19:30〜 INDIGO SESSION vol.2 をインスタライブで配信します。
今回のテーマは一気に専門性が高まって「藍と絹」。vol.1 のパネリストから再び原田さんをお招きして、「難しい」と言われている絹の藍染についてみっちりお話しを伺うことにしています。こちらの内容も電子書籍化する予定ですが、お時間の合う方はぜひライブでトークの「熱量」を体感してください。
本建て正藍染展のInstagram公式アカウントから配信予定ですので、ぜひフォローしてくださいね。
展示会会場では、INDIGO SESSION vol.1 のペーパーバック(紙に印刷した書籍)をどこよりも早く販売する予定です。
もちろん、Amazonで購入可能ですので、リンク先を改めてお知らせいたします。どうぞ、ご期待ください。