【小説】やっぱり
近所に住んでる友達の口癖は「やっぱり」だ。
「やっぱり上手くいかないと思ってた」
「やっぱりそれは良くないよ」
後出しのように言われるその言葉にイライラすることもあった。
ある日、友達に「やっぱりって言われるの好きじゃない」と伝えると、「やっぱりまたそう言うんだね」と返された。
それでちょっと喧嘩になって「やっぱり禁止」の約束をする事になった。お互いに「やっぱり」という言葉を口にしたら罰としてコンビニでジュースをおごる、というものだ。
ジュースをおごるなんて対して痛くも痒くもない罰だったが、友達はその日からぱったりと「やっぱり」という言葉を使わなくなった。
「なんだできるじゃんか」と初めは思っていたが、代わりに少し不思議な事が起こっている。
友達が時々「今日はこの後いつもの道で事故が起こるから別の道で帰ろう」とか、「今窓を開けると野球ボールが飛んでくるからやめとこう」とか、未来予知のような事を言い出すようになったのだ。
その口調は普段のさっぱりとした感じではなく、なんだか真に迫ったものがあるので、私はついつい言う通り道を変えたり窓を閉めたままにしてしまうのだった。
「この先にある廃墟から男が出てくるからこの道は引き返そう」
今日も友達はそんな事を言い始めた。
私はちょっとイタズラな気持ちになって、少しだけ道を引き返した後
「やっぱりやーめた!」
と引き返すのをやめ、「ジュースおごるんだったらこっちから行く方がコンビニ近いしね!」と跳ねるような小走りでまた道を進んだ。
そして、
……………………
ガヤガヤとした人の声と遠くから迫ってくる救急車の刺さるようなサイレン音に包まれながら、私は道に倒れていた。
近くで友達が嗚咽をあげる声が聞こえる。その方を見ようとするけど、何故か視界が靄がかっていてちゃんと見る事ができなかった。
「やっぱりダメだった」
友達の言葉に「どういう事?」と聞き返したいのに声は出なくて、私の意識はぷつんと途切れた。
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何か書きたい衝動から予測変換で出てきた言葉をタイトルにちまちまと。
ホラーを書くつもりはなかったのに最近読んだ本に引っ張られてホラー(?)になりました。
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