#03【北インド古典音楽盤文庫1】:レコード
RECORD:1877年トーマスエジソンが発明。
言葉や音楽を記録する技術が生まれ、19世紀末から20世紀初頭にかけ世界中に広まる。日本やインドも例外ではない。当時は録音時間も二三分と短く高価であったが、20世紀半ばになると録音時間の長いLPレコードが開発され広く世間に普及、音楽が世界規模で開花し流通する。
幸運にも、私たちの世代はその恩恵を受けた。日本にいながら、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、南米やアフリカなど、世界中の好きな音楽を手に入れられる時代に育った。
音楽の窓口は主にラジオだったが、好きな時間に好きな音楽を聴くとなるとレコードしかなかった。当時レコードは私にとって高価だったので、1枚のシングル盤を何度も何度も聞いた。
レコードは宝だった。
インド古典音楽界においても、何百年何千年ものあいだ口頭伝承や、わずかな記述のみで伝えられてきた音楽をレコードに録音し、始めて世に知らしめた。
インド古典音楽は、各ガラナ(流派)において門外不出の形態をとり、むやみに他人に教えることはしない。
それ故に、これらのレコードは、インド古典音楽の神髄を切り取った文化遺産である。
これまで、各ガラナに秘伝として伝えられたラーガ(インド古典音楽の旋律)、精緻に極められた歌唱法、演奏法を後世に残した至宝と言っても良い。
レコードに刻まれているインド古典音楽は、どれ程の長い期間、どれ程の厳しい練習に耐え、どれ程の人数の音楽家に継承され歌い継がれてきたものであろうか?
歌が、楽器の一音一音が、何千年も前から伝えられてきた音楽であると感じ入る。
伝えたい。
インド古典音楽の魅力を
インド古典音楽の美しさを
レコードを通じて、音楽から湧き上がる思い出と共に
伝えたい。