『まばたかない瞳 バンガロール連続誘拐殺人』トリヴィア/ インディアンムービーウィーク2021
インディアンムービーウィーク(IMW)2021パート1にて上映のナヤンターラ主演『まばたかない瞳 バンガロール誘拐連続殺人(原題:Imaikkaa Nodigal)』のトリヴィアを紹介します。初見でも十分楽しめる作品ですが、知っておくとより作品を楽しめる内容です。決定的なネタバレはありません。
[作品あらすじ]
バンガロールを震撼させる連続誘拐殺人事件。富裕層の子弟が誘拐され、身代金が払われるにもかかわらず惨殺されるのだ。捜査に当たる中央捜査局のアンジャリは、犯人を自称するルドラという男に肉薄しながらも取り逃がしてしまう。犯人、警察、中央捜査局が三つ巴となっての息詰まる追跡劇。クライム・スリラー。
[トリヴィア]
◼️『まばたかない瞳 バンガロール連続誘拐殺人事件』は、カルナータカ州バンガロール(ベンガルール)を主な舞台とし、タミルナードゥ州チェンナイのシーンも一部含むタミル語作品。作中で話される言葉はタミル語と英語がほとんど。これは必ずしもご都合主義ではなく、バンガロール市の人口の約2割がタミル語話者と言われている。
◼️ストーリーは、バンガロール在住タミル人で中央捜査局(CBI)捜査官であるヒロインと、チェンナイに住む医師であるその弟を中心に展開する。その背景には国の上級機関であるCBIとカルナータカの州警察との確執も。CBIは、州の警察では手に負えないと判断された難事件や、地元警察がしがらみで手を下せない恐れのある政治的な事件の捜査にたずさわることがある。
◼️キャストは、『マーヤー』『永遠の絆』『ビギル 勝利のホイッスル』のナヤンターラ、アタルヴァー、ラーシー・カンナー、アヌラーグ・カシャップ、拡大カメオ出演でヴィジャイ・セードゥパティという異色の組み合わせ。監督のニャーナムットゥはデビュー作『デモンテの館』が日本で紹介済み。本作は第二作目。
◼️アタルヴァーは、カルナータカ出身でタミル語映画で活躍したムラリ(『ポルカーラム 愛のたからもの』)の息子。デビュー8年目の本作で、メジャー作品のヒーローとして脚光を浴びることになった。また、『ビギル』で悪役を演じたダニエル・バーラージの甥にもあたる。
◼️キャストで最も意表をつくのが、冒頭でいきなり殺人犯として登場するアヌラーグ・カシャップ。『血の抗争』二部作によって日本でも知られる、ヒンディー語映画界で最もクリエイティブな監督の一人。『アキラ』(16)での悪役に続き、本作でもサイコな犯罪者を演じる。
◼️アヌラーグ・カシャップはタミル語のニューウェーブ映画のファンとしても知られ、自身の代表作である『血の抗争』二部作は、タミル・ニューウェーブ初期の有名作『Subramaniapuram』(08)を見なければ生まれなかったとさえ言明している。
『Subramaniapuram』(2008)ポスター
◼️本作でそのアヌラーグ・カシャップのセリフを吹き替えているのは、何と『双璧のアリバイ』の監督であるマギル・ティルメーニ。深みのある低音ボイスが不気味なサイコ殺人者のビジュアルとぴったりマッチして効果倍増となっている。
◼️170分の本作は、監視カメラ映像と携帯電話の音声がキーとなり、どんでん返しの揺さぶりが続く。タイトルの「まばたかない瞳」は劇中と、エンドロールのソング「Imaikkaa Nodiyil」に現れる。この歌詞は、とある作中人物の心情と解釈できるもので、ここに最後の種明かしが隠されている。このエンディングのバラードは、外国の配信サービスにあるプリントでは英語字幕がない。また、インドの劇場では、エンドロールになると席を立ってしまう観客がほとんどなせいか、このソングに関して言及するレビューも見当たらない。これを字幕付きで味わえるのはIMW上映だけ。しんみりとしたこのソングを劇場で味わってほしい。
[作品情報]
監督:R・アジャイ・ニャーナムットゥ
出演:ナヤンターラ(ビギル 勝利のホイッスル)、アタルヴァー・ムラリ、アヌラーグ・カシャップ、ラーシー・カンナー/ヴィジャイ・セードゥパティ(特別出演)
音楽:ヒップホップ・タミラー
2018年/ タミル語/ 168分
映倫区分:PG-12(暴力シーンあり)
©Cameo Films India, ©Drumsticks Productions