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インディアンムービーウィーク2023パート1

国語が存在せず、地域ごとに公用語が並立する多言語大国インド。その映画産業もまた、言語ごとに幾つにも分かれ、それぞれが独自の映画的風土をもち、各言語を母語とする観衆から厚い支持を得ています。インド映画の特集上映「インディアンムービーウィーク2023パート1」では、ヒンディー語作品2本、タミル語作品1本を初上映するとともに、タミル語映画界の人気俳優ヴィジャイの主演作品5本を一挙に上映する小特集を行います。

初上映作品

火の道(原題:Agneepath)

©︎Dharma Productions ©︎Eros International

同名のカルト的人気作のリメイク
ムンバイ沖の小島に暮らす少年ヴィジャイは、教師の父から人生訓として、「火の道」という詩を教わりながら育つ。ヴィジャイの父は人々の尊敬を集めていたが、麻薬ビジネスを興そうとした地主の息子カーンチャーに反対したことで、彼に殺害されてしまう。母と共にムンバイに逃れたヴィジャイは、父の仇を討つために麻薬マフィア・ラーラーの手下となり、アンダーワールドでのし上がっていく。

監督 カラン・マルホートラー
出演 リティク・ローシャン、リシ・カプール、サンジャイ・ダット、プリヤンカー・チョープラー
音楽 アジャイ - アトゥル
字幕 日本語
ジャンル ドラマ、アクション
区分 PG12(暴力シーンあり)
2012年/ ヒンディー語/ 174分
※IMW初上映
【字幕協力】東京国際映画祭

〈参考資料〉

1990年公開の『Agneepath』ポスター

オリジナルは、1990年に公開された『Agneepath』(監督:ムクール・アーナンド、出演:アミターブ・バッチャン、ミトゥン・チャクラボルティーほか)。公開時、興収は伸びなかったものの、アミターブ・バッチャンは本作での演技が評価され、1991年のインド国家映画賞最優秀俳優賞を受賞しました。オリジナル版プロデューサーのヤシュ・ジョーハルの息子であるカラン・ジョーハルは、埋もれた傑作を再び世に送り出そうと本作のリメイクを企画。カランは「本作はリメイクというよりもむしろ、(オリジナル作品への)トリビュートである」と企画の意図を語っていました。

本作は第25回東京国際映画祭(2012年10月開催)で「アジアの風」部門で日本プレミア上映されました。今回の字幕翻訳には同映画祭より協力をいただき、上映が実現しました。映画祭上映時の監督によるQ&A記事はこちら。

狼と子羊の夜 (原題:Onaayum Aattukkuttiyum)

©︎Lone Wolf Productions

タミル・ニューウェーブのノワールの極北に震えよ
医学生のチャンドルは、ある夜街路で銃創を負って倒れている男を助け、自宅に運んで手術をする。しかし翌朝男の姿は消えていた。男はウルフという名の殺し屋で、チャンドルは犯罪者を匿ったとして警察の尋問を受け、協力させられる。その後ウルフがチャンドルに接触してきたのを知った警察は、彼に銃を渡し、ウルフを殺すよう命じる。ほぼ全編が夜の街で展開する異色のクライム・スリラー。

監督 ミシュキン
出演 シュリー、ミシュキン、アーディティヤ・メーノーン
音楽 イライヤラージャー
字幕 日本語
ジャンル クライムスリラー
区 分 G(暴力シーンあり)
2013年/ タミル語/ 141分
※日本初上映

【“タミル・ニューウェーブ” 注目すべき監督、ミシュキン】

インディアンムービーウィークでは、これまでに『ピザ 死霊館へのデリバリー』(2012)、『ジガルタンダ』(2014)、『女神たちよ』(2016、すべて監督:カールティク・スッバラージ)や、『途中のページが抜けている』(2012、監督:バーラージ・ダラニダラン)、『カーラ 黒い砦の闘い』『マドラス 我らが街』(2014、以上、監督:パー・ランジット)、『キケンな誘拐』(2013、監督:ナラン・クマラサーミ)、『僕の名はパリエルム・ペルマール』(2018、監督:マーリ・セルヴァラージ)など、“タミル・ニューウェーブ”と呼ばれるタミル語の新感覚作品を上映してきました。今開催では、タミル・ニューウェーブの最も注目すべき監督のひとり、ミシュキンの作品を日本初上映します。

Chithiram Pesuthadi poster

2006年に『Chithiram Pesuthadi』(未)で監督デビューしたミシュキンはニューウェーブの映像作家の中でも孤高の人。本名はシャンムガ・ラージャーですが、ドストエフスキーの『白痴』の主人公・ムイシュキン公爵の名前をアレンジしてミシュキンを名乗っています。このペンネームがすでに作品世界を予告しているとも言えるでしょう。

Anjathe poster

第2作目の『Anjathe』(2008、未)がヒットを記録したものの、あまりにエッジのたった作風のため主演オファーに応えてくれる男優を探すことに苦労し続け、本作を含む多くの監督作で主演もこなすことになりました。その目は常に社会の底辺に向けられますが、『マドラス 我らが街』のパー・ランジット監督のように、政治的メッセージを明確に打ち出すことはせず、無明の中を生きる人々の悲惨と極限下の尊厳とを、夜の街を舞台に描くことに専心してきました。黒澤明監督と北野武監督の大ファンだそうです。

本作では、キリスト教徒の路上生活者家族と共にある孤独な殺し屋が主人公で、その「贖罪」の道行きが語られます。バックグラウンドスコアは、南インドを中心に活躍する映画音楽の巨匠イライヤラージャーが手がけた、ボーカルなしの管弦楽曲で、テーマを引き立てています。

『狼と子羊の夜』インド版ポスター ©︎Lone Wolf Productions

「不本意ながらの俳優」と自ら語るミシュキンは、ヴィジャイとローケーシュ・カナガラージ監督の、『マスター 先生が来る!』以来の再タッグとなる『LEO』(2023年10月インド公開予定)に、脇役として参加したことが伝えられています。

Rラージクマール(原題: R... Rajkumar)

©︎Eros Worldwide ©︎Next Gen Films ©︎Rough Copy Films

恋と死闘のミュージカル
風来坊のロミオ・ラージクマールが流れ着いた田舎町は、麻薬王とマフィアの対立で荒れていた。ロミオは麻薬王の手下となる。ある日銃撃戦に巻き込まれた女性チャンダーを助けたことで、ロミオは彼女に好意を抱く。だが、麻薬王がチャンダーを見初めて彼女の意思を無視して娶ろうとしたことから、ロミオは麻薬王に対峙する。伝説級ダンサー&コレオグラファーのプラブデーヴァー監督作品。

監督 プラブデーヴァー
出演 シャーヒド・カプール、ソーナークシー・シンハー、ソーヌー・スード
音楽 プリータム
字幕 日本語
ジャンル アクション、ロマンス、コメディ
区分 G(暴力シーンあり)
2013年/ ヒンディー語/ 146分

本作の魅力は、超絶ダンサー、シャーヒド・カプールと、ソーナクシー・シンハーによるダンスシーン。『ムンナー・マイケル』のマヒのソロダンスの元ネタはこちらです。

アンコール上映作品

兄貴の嫁取物語(原題:Veeram)

©Vijaya Productions Pvt. Ltd.

カタブツ兄貴の婚活大作戦
マドゥライ地方の村に暮らす暴れ者の5人兄弟。長兄のビナーヤガは腕っぷしが強く、村人たちからも尊敬されていたが、異性関係では超硬派で、女性との付き合いは全くなかった。それぞれの恋人とゴールインしたいのに長兄に言い出せない4人の弟たちは、策略を巡らし、村にやってきた美術修復家の女性コーペルンデビとビナーヤガとの間に恋を芽ばえさせようとする。しかし彼女の一家は全員が徹底した非暴力主義者だった。「タラ(お頭)」の冠タイトルをつけて呼ばれるアクションスター、アジット・クマール主演のアクションコメディ。

監督 シヴァ
出演 アジット・クマール、タマンナー、サンダーナム、ナーサル、アトゥル・クルカルニー、プラディープ・ラーワト
音楽 デーヴィ・シュリー・プラサード
字幕 日本語
ジャンル アクション、コメディ
区分 G(暴力シーンあり)
2014年/ タミル語/ 160分

私の夢、父の夢(原題:Kanaa)

©SK Productions

農村から世界を目指すスポーツウーマン
カルール地方の農村に育ったカウシは、父の影響で少女時代からクリケットが大好きで、男子に交じって草クリケットをプレーし、豪速球の投手として一目置かれていた。しかし、成長した彼女を受け入れるチームは地元にはなく、インドのナショナルチーム入りを目指すことになる。全国から集まった選手たちの中で揉まれるカウシとそれを見守る家族や地元の人々の奮闘を描き、同時に農民が直面する困難な状況にもスポットライトをあてる。人気俳優シヴァカールティケーヤンが、タミル語映画界で注目される俳優アイシュワリヤー・ラージェーシュを主演に製作したスポーツドラマ。

監督 アルンラージャー・カーマラージ
出演 アイシュワリヤー・ラージェーシュ、シヴァカールティケーヤン、サティヤラージ
音楽 ディブ・ニナーン・トーマス
字幕 日本語
ジャンル ドラマ、スポーツ
区分 G
2018年/ タミル語/ 145分

シャンカラーバラナム 不滅のメロディ(原題:Sankarabharanam)

©︎Poornodaya Art Creations

デジタル・リマスターで蘇る古典
南インド古典声楽の巨匠シャンカラ・シャーストリと、彼を崇めるトゥラシ。娼家に生まれたトゥラシは神前の巫女のようにシャンカラに仕えたいと望んでいたが、残酷な運命はそれを許さない。二つの純粋な魂の彷徨の道筋を彩る古典音楽と古典舞踊の饗宴。ひたすらに芸を磨く求道と神への無私の信仰が一つになる圧巻のクライマックス。※2015年にデジタルリマスターされたタミル語吹替版にて上映。

監督 K・ヴィシュワナート キャスト J・V・ソーマヤージュル、マンジュ・バールガヴィ、トゥラシ・シヴァマニ、アッル・ラーマリンガイヤ
音楽 K・V・マハーデーヴァン
字幕 日本語
ジャンル ドラマ
区分 G
1979年(2015年リマスター版)/ タミル語/136分

ジャパン・ロボット(原題:Android Kunjappan Version 5.25)

©Moonshot Entertainments

現代社会への鋭い皮肉を散りばめた、SF寓話
ロシア経由でケーララ州の片田舎にやってきた日本製ロボット、クンニャッパン。便利な機械を拒む頑固老人の心は、お手伝いロボットの登場によって変化していき、ロシアに働きに出かけた一人息子との関係も揺らぎ始める。着ぐるみ感満載のロボット、中国風BGMと共に登場する「日系」ヒロインなど、脱力系コメディーに見せかけて、現代のケーララ社会への鋭い皮肉を随所に散りばめる。サウビン・シャーヒルとスラージ・ヴェニャーラムード、二人の性格俳優の演技も見もの。

監督 ラティーシュ・バーラクリシュナン・ポドゥヴァール
出演 サウビン・シャーヒル、スラージ・ヴェニャーラムード、ケネディ・シルド
音楽 ビジバール
字幕 日本語
ジャンル ドラマ、コメディ、SF
区分 G
138分/2019年/マラヤーラム語

ヴィジャイ特集

タミル語映画界のスター俳優、ヴィジャイ(1974年6月22日生まれ)のBirthday Monthに合わせ、特集上映を行ないます。

ビギル 勝利のホイッスル(原題:Bigil)

©︎AGS Entertainment

女性エンパワメントを描く、スポーツドラマ
チェンナイの下町に住み、地域の人々から慕われているマイケルには、花形サッカー選手としての過去があった。込み入った経緯から、彼は友人の代わりに女子サッカーの州代表の監督となり、全国大会に臨むが、そこで過去の宿敵と再会する。女性のエンパワーメントを中心的なテーマに据え、サッカーチームの女性たちの人生を共感を持って描きながら、スーパースター・ヴィジャイのダンス、アクション、一人二役演技などの見どころも惜しみなく織り込んだ大作。

監督 アトリ
出演 ヴィジャイ、ナヤンターラ、ヨーギ・バーブ、ジャッキー・シュロフ
音楽 A・R・ラフマーン
ジャンル アクション、ドラマ
区分 R15+(殺傷シーンあり)
2019年/タミル語/177分

サルカール 1票の革命(原題:Sarkar)

©︎SUN Pictures

社会を変える1票。痛烈な政治ドラマ
米国在住の大富豪スンダルは、タミルナードゥ州議会選挙への投票のため一時帰国でチェンナイを訪れる。投票所で彼が知ったのは、何者かが彼に成りすまして既に投票を終えていたということだった。スンダルは司法に訴えて再投票の権利を勝ち取るが、その過程で既存の政治家たちの腐敗を目の当たりにして、さらなる行動に打って出る。「1票の重み」のテーマから始まり、現実世界の既成政党への批判を縦横に繰り広げたため、現地での封切り時には物議をかもした。強面なヴァララクシュミ・サラトクマールの迫力ある悪役ぶりも大いに注目された。IMW2019上映の人気作品。

監督 A・R・ムルガダース
出演 ヴィジャイ、キールティ・スレーシュ、ヴァララクシュミ・サラトクマール、ラーダー・ラヴィ
音楽 A・R・ラフマーン
字幕 日本語
ジャンル  ポリティカル・スリラー、アクション
区分  PG-12(焼身自殺のシーンあり)
2018年/タミル語/162分
※6/24(土)は、 マサラ上映を開催!

マジック(原題:Mersal)

© Sony Music India © Sri Thenandal Films

医療をめぐる社会派スリラー
チェンナイの低所得者層地域で開業するマーラン医師は、低額で患者を診る人徳者で、国際会議でも表彰される。しかしその周りで医療関係者の不審死が起こり、警察は彼を拘束して尋問する。そこで浮かび上がったのは、ヴェトリという名の彼と瓜二つの奇術師だった。V・ヴィジャエーンドラ・プラサード(『バジュランギおじさんと、小さな迷子』)が脚本に加わり、娯楽性がある社会派スリラーに仕上がっている。インディアン・シネマ・ウィーク2018上映の人気作品。

監督 アトリ
脚本 アトリ、V・ヴィジャエーンドラ・プラサード、ラマナギリーヴァーサン
出演 ヴィジャイ、サマンタ、カージャル・アグルワール、ニティヤ・メーノーン、S・J・スーリヤー、サティヤラージ
音楽 A・R・ラフマーン
字幕 日本語
ジャンル スリラー、アクション
区分 R15+(肉体損壊の描写あり)
2017年 / タミル語 / 169分

ジッラ 修羅のシマ(原題:Jilla)

©︎Supergood Films

マフィアの右腕が警察官に
マドゥライを支配するマフィアの首領シヴァンに育てられ、その右腕として地域を仕切るシャクティのあだ名はジッラ(縄張り)。ある時シヴァンは、新しく着任した警視総監から犯罪集団の取り締まり強化を宣言される。危機感を感じたシヴァンは嫌がるシャクティを、介入抑止のため警察官にさせる。だがそれは、親子断絶の始まりだった。タミル語映画界の人気俳優、ヴィジャイ(ビギル 勝利のホイッスル)と、〝完璧俳優〟と称されるマラヤーラム語映画界の大スター、モーハンラール(ザ・デュオ)が共演。ギャングものでありながら、コメディ満載、ダンスもあり、家族のドラマにほろりとする。京都や鳥取で撮影されたソングシーンが含まれる。

監督 R・T・ネーサン
出演 モーハンラール、ヴィジャイ、カージャル・アグルワール
音楽 D・イマーン
字幕 日本語
ジャンル ドラマ、コメディ / アクション
区分:PG12(殺傷・出血の描写あり)
2014年/ タミル語/ 176分

マスター 先生が来る!(原題: Master)

©️B4U Motion Pictures ©️Seven Screen Studio ©️X.B. Film Creators

少年たちの更生のため立ち上がる、激アツ教師
名門大学で心理学を教えるJDはアル中気味の名物教授。彼が実施を強く主張した学生会長選挙で暴動が起きたため、責任をとり休職し、地方の少年院に赴く。そこではギャングのバワーニの支配の下、少年たちが薬物漬けにされて犯罪行為に従事させられていた。バワーニは、運送業という表向きの商売の裏であらゆる犯罪に手を染め、敵を粛清し、支配を固めるため政治家になろうとしていた。JDはアルコールを断ち、バワーニの支配を終わらせ少年たちを更生させようと立ち上がる。『囚人ディリ』のローケーシュ・カナガラージ監督によるマルチスター・ノワール作品。

監督 ローケーシュ・カナガラージ
出演 ヴィジャイ、ヴィジャイ・セードゥパティ、マーラヴィカ・モーハナン、アルジュン・ダースほか
音楽 アニルド
字幕 日本語
ジャンル ドラマ
2021年/タミル語/179分
区分:PG12(暴力シーンあり)

《区分について》

G:どなたでもご覧になれます
PG12:12歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要 R15:15歳以上(15歳未満は観覧禁止)

開催日程

2023年6月16日(金)〜7月13日(木)

上映劇場

キネカ大森(JR京浜東北線 大森駅下車 徒歩3分)

上映スケジュール

料金

特別興行 1900円(税込・均一)
※株主優待券、各種招待券、鑑賞券使用不可
※全席指定、入替制

チケットご予約

劇場窓口ではご鑑賞日の2日前から、インターネットでは、ご鑑賞日の2日前から上映20分前までご予約を受け付けます。


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