行動変容を促すメカニズム
皆さま、初めまして!
昨年11月にINDEE Japanに入社したコンサルタントの内海です。
INDEE Japanに入社して驚いたことの一つは、役員の皆さんの運動ガチっぷり!トライアスロンやフルマラソン、テニス、スキーなど、その競技は様々ですが、仕事ができる人は文武両道というのは本当かもしれません。
これまで自堕落な生活を送っていましたが私ですが、刺激を受けてランニングを始めてみました。
しかし!新しい習慣を生活に定着させるのは本当に難しい…。特に運動習慣のない人間にとっては、ランニングはつらい苦行のようなもの。
私は花粉症持ちなのですが、最近は『今日は花粉がひどいから走るのやめておこう』と自分への言い訳に使っています。
花粉の季節が終わっても、
6月は梅雨だし、走れないな
7月からは暑すぎるから危険
10月からは秋花粉が・・・
こんな言い訳をしている未来がすでに目に見えています。
なぜ、生活習慣の見直しはこんなにも大変なのでしょうか?身体にいいことは頭ではわかっているのですが…。
今日はサービス提供側の視点に立って、ユーザーに行動変容を促す方法について触れてみたいと思います。
▶「ヘルスケア」を前面に押し出しても人の行動は変えられない!?
世の中には『これをすると身体にいいんだよ』とか、『病気に負けない身体が手に入りますよ』などという謳い文句の商品やサービスがたくさんあります。
でもこれでは人はなかなか動きません。動いたとしても継続につなげるのはとても難しいものです。なぜなら健康的な習慣は、おおよそ何かを我慢する、努力を続けることを意味するからです。
皆さんもこんな経験をしたことはないですか?
お正月を実家で過ごしたら体重が増えてしまい、焦って近所のジムに入会!
週に2回は行こうと意気込んだけど、気づいたら3か月間放置してお金だけが無駄に出ていく…。
”正月太り”という一時的に自身の健康や体形の意識が高まったタイミングであれば、ヘルスケアサービスを取り入れるきっかけとなります。でも喉元過ぎれば熱さを忘れるというように、こうした危機感はすぐに薄れていってしまいます。そして健康的な習慣はツラさを伴うもの。「今日は諦めちゃいなよ」と悪魔が耳元で囁き、気づいたら甘いものを手に取っているのです(体験談)。
とにかく、ユーザーの行動を変えるのは超大変!
新規事業を担当している人からはこんな声が聞こえてきそうです。
「じゃあ、ヘルスケアのサービスを普及させるのって無理なの?」
無理ではございません!
行動変容を促すメカニズムを『ヘルスケアキャンパス』を使ってひも解いてみましょう。
▶『ヘルスケアキャンバス』でサービスを考えてみる
こちらの図は、INDEE Japanが開発した『ヘルスケアキャンパス』というフレームワークです。これを使えばヘルスケア関連のビジネスを考える際に押さえておくべきポイントをデザインすることができます。
以下の5つのSTEPで整理していきます。
STEP1:商品・サービスを購入する理由となる「ジョブ」を考える
STEP2:ユーザーについて何らかの計測(例えば歩数、心拍数など)を行い、情報を取得する
STEP3:計測された結果をもとに、ユーザーに対して何らかの働きかけを行う
STEP4:働きかけに応じてユーザーが体験する
STEP5:STEP2~4のサイクルを継続して回したアウトカムとして、健康状態の改善という結果につながる
まずはSTEP1のジョブをしっかり考えることが大事!
※ジョブとは、人がある特定の状況下で片づけようとしている用事・課題のことで、このジョブを片付けるために、人は製品やサービスを購入します。詳しくはこちらで。
▶きっかけは「ヘルスケア」ではないかも?
アップルウォッチを例に考えてみましょう。
アップルウォッチには、「心拍の異常など健康リスクを見つけ出す」や、「座りっぱなしでいると体を動かすように促す」、「睡眠の質を測定する」などといった、いわゆるヘルスケア機能がついています。でもこの機能を理由にアップルウォッチを購入している人は少ないのではないでしょうか。
購入の動機はもっと別なところにあります。
スマホを見なくても、LINEやメッセージを確認できる
大きなスマホをポケットに入れておかなくても、通知を受け取れるのってとても便利ですよね。会議中でもサッと確認することもできます。洗練されたデザインで身に着けるだけでおしゃれに見える
ウォッチフェイスやバンドを変えることができるので、個性も演出できるっていうのが大きな魅力の一つだと思います。
「スマホを出しにくい環境にいながら、タイムリーに連絡を受け取りたい」というジョブを抱えている人にとっては、アップルウォッチは代替手段のない必需品になっています。あくまで、ヘルスケア機能はおまけ的な位置づけとも言えます。
▶いつの間にか健康的な生活を意識させられている
アップルウォッチを身に付けていると、健康へのフィードバックが目に入るようになります。歩数が基準を達成したり、座ったままの姿勢を続けなかったり、ワークアウトをしっかり行うと、アップルウォッチは褒めらてくれるのです。機械から褒められているだけなのに、なんだか嬉しくなってしまいますよね。
人は褒められると、何となく歩くことを意識したり、座り続けないよう努力するようになります。ユーザーは健康的な行動を取るためにアップルウォッチを購入したわけではないのにもかかわらず、結果として健康的な行動変容が促されているということです。
この一連の流れをヘルスケアキャンバスに落とし込むと、以下のようになります。
アップルウォッチのキャンバスを眺めると、購入の際の採用基準となるジョブに、健康とは無関係のものをターゲットにしている点が特徴といえます。また、さりげない小さな「ナッジ(行動をそっと後押しする)」とも呼べるような介入によって、ユーザーに喜びを与えて体験を高め、継続的な利用につながげることができています。そしてこの継続的な利用促進が、運動習慣の定着や、転倒や心拍異常の早期発見を可能としているのです。
▶視野を広げてキャンパスを描こう
ヘルスケアビジネスをこれから始めようとする人は、「正しい健康法」を提供することへの意識が強すぎることがあります。ユーザーが望んでいるものが「正しい健康法」であることは極めて稀で、そのためにお金を支払おうとする人はほとんどいないにもかかわらず、正義感から「正しい健康法」を売りたくなってしまうのです。ソリューションの入口となるジョブを正しく設定するためにも、ユーザーがお金を支払ってでも解決したいことは何か、を視野を広げて考えてみるといいかもしれません。
こういうヘルスケアの記事を書いていると、自分も何かしないとなーって気がしてきました。
花粉症にめげずにちょっと走ってきます!