新宿区議会で不適切指導について質問 山口かおる
「体罰」と聞くと絶対だめ!と思う人はいても、「不適切指導」と聞くと、なんのこと?不適切かどうかはわからない、と思う人もいます。
今回の定例会では、不適切指導を取り上げて、教育委員会へ対策を求めました。
結論を先に言ってしまうと、答弁は不十分なものです。
対応ができていないから、質問をしたのだけれども…。下記に質問と答弁を掲載します。
質問
立憲民主党・無所属クラブ の山口かおるです。
不適切指導について質問します。
教職員のこどもに対する体罰は学校教育法11条で禁止されています。
しかし、直接的な暴力ではなく、教職員が机を蹴る、大声でしかるなど不適切な指導は法律で禁止されていません。こどもにとって、指導者である大人におかしいと声を上げることは難しく、また親に言っても、信じてもらえないことがあります。精神的・肉体的な苦痛を与えるような不適切な指導によって、不登校になるこどもや自ら死を選ぶこどもがいます。
2022年に改定された生徒指導提要には、事例として、大声で怒鳴る、ものを叩く・投げるなどの威圧的、感情的な言動で指導することや、児童生徒の言い分を聞かず、事実確認が不十分なまま思い込みで指導するなどが紹介されています。
東京都の児童・生徒を教職員などによる性暴力から守るための第三者相談窓口には、2023年は都内公立学校の教職員に関する相談が608件あり、そのうち教職員の指導に関する相談が580件で2022年からは約3倍となりました。この相談では、小学校1年生から3年生、特別支援学校小学部用に、大人からされておかしいな、モヤモヤするな、イヤだなと思うことを回答する方法として、電話やメールのほか、紙の「そうだんシート」の利用ができます。ただ、絵がある事例は性暴力が対象で、不適切指導については提示されておらず、何が不適切指導であるのか気が付かないおそれがあります。まず、適切な調査を行い、そこから事例をこどもに示して判断していくことが重要です。
また、不適切指導を未然に防ぐために、教職員の環境を整備することも重要です。
例えば、学習障がい、発達障がいがある子で、授業についていくことが難しい子や、外国ルーツの子で、言語や文化の違いがバリアとなる子などに対し、教員が時間をかける必要があります。担任一人が問題を抱え込んでしまえば、感情をこどもに直接ぶつけることが起きやすくなります。
滋賀県守山市の教育委員会は、体罰・不適切指導防止~教職員による体罰・不適切な指導根絶のためのガイドライン~を今年9月に発表しました。教職員が自分の指導方法について適宜見直し、高い規範意識をもちながら児童生徒に向き合えるように、教職員が職場でお互いに気楽に相談し・相談される、人間的な関係を作り出すことや、アンガーマネジメントについても
ふれられています。こうした、教職員も追いつめられることのない対応が求められます。
そこで、質問します。
1.こども基本法が2023年から施行され、こどもの権利についての意識が高まっています。こどもの権利には、安心、安全に成長していく権利が含まれます。こども大綱のこども施策に関する基本的な方針において、不適切指導も権利侵害と明記されました。こども自身が、不適切指導を理解し、声を上げやすいようにする取り組みが必要です。まず、区では、こどもの権利についてどのように教え、その中で不適切指導についてどのように取り上げているか、ご説明ください。また、イラストなどを使用したリーフレットの作成・配布など、不適切指導について、区独自でこども向けの資料を作成することについて、見解をお聞かせください。
2.不適切指導について、教育委員会では実態をどのように調査しているか、そして問題が起きた場合の対応について説明してください。また、調査票には児童・生徒の理解度に合わせた
分かりやすい事例の提示をしていくことが効果的ですが、不適切指導についてどのように事例を提示しているでしょうか。
3.こどもにとって、身近な相談窓口は東京都よりも新宿区です。「新宿子どもほっとライン」は区のいじめ相談専用電話ですが、こども同士のいじめの問題だけでなく、ここでも不適切指導について相談できることを明確に提示し、さらにLINEなどを使用して気軽に相談ができる体制を作ることができないか、見解をお聞かせください。
4.教職員も追いつめられないよう、組織として対応することが必要です。事例をあげ、感情にまかせないよう組織の対応を明確にするなどの区独自のガイドラインが必要ではないでしょうか。教職員への対応について今後の取り組みを含め、ご説明ください。
以上、ご答弁願います。
山口議員のご質問にお答えします。
不適切指導についてのお尋ねです。
はじめに、子どもの権利をどのように教え、その中で不適切指導についてどのように取り上げているかについてです。
子どもの権利については、社会科や特別の教科 道徳で、「子どもの権利条約」の理念や内容について触れ、子どもは暴力・暴言を含む不適切指導から守られることや自由に意見を表明できることを教えています。児童・生徒が相談したいと思ったときに安心して声を上げられるよう、教職員は日常の教育活動を通して、信頼関係の構築に努めています。
次に、子ども向け資料の作成についてです。
子ども向け資料を作成する予定はございませんが、各校では不適切指導の内容を児童・生徒にも分かり易く説明するとともに、引き続き児童・生徒が声を上げやすい環境作りに努めてまいります。
次に、不適切指導の実態調査と問題が起きた場合の対応についてのお尋ねです。
教育委員会では、不適切指導の実態調査は行っておりませんが、区立学校では児童・生徒に対して、年3回のふれあい月間アンケート調査で教員の不適切指導の有無について確認する項目を設けています。
なお、不適切指導と思われる事案があった場合には、速やかに教育委員会へ報告するよう各校園長に伝えています。
次に、不適切指導についてどのように事例を提示しているかについてです。
不適切指導の事例については、「繰り返しの暴言や心を傷つける言葉」「机を蹴るなどして威圧するなど精神的苦痛を与える行為」等具体例を挙げて説明し、嫌だ、おかしいと思った時には声を上げてよいことを、校長や学級担任等から児童・生徒の発達段階を踏まえて分かり易く伝えています。
次に、新宿区の相談窓口についてのお尋ねです。
相談窓口については「相談機関一覧」を作成し、ふれあい月間や長期休業前など定期的に全区立学校で周知しています。「新宿子どもほっとライン」を含めて、いじめについての相談だけでなく、「先生のこと」や「家族のこと」も相談できることを記載しています。
また、電話での相談窓口に加えて、令和6年5月からは、児童・生徒のタブレット端末を活用した相談窓口を開設しました。電話相談と同様、「教員との関係」についても相談できることを周知しています。
今後も、子どもたちが相談しやすい体制づくりに努めてまいります。
次に、不適切指導のガイドラインについてのお尋ねです。
体罰等の不適切指導のガイドラインは東京都教育委員会が作成をしております。このガイドラインには、児童・生徒性暴力をはじめ、体罰や暴言など不適切指導が示され、教職員が守るべきルールやとるべき行動例等がまとめられているため、区独自にガイドラインを作成することは考えておりません。
なお、不適切指導の防止については、各校での年3回の服務事故防止研修の中で、管理職による講話や事例研究、教員のセルフチェック及び校長との個別面談等を行うことで、教職員等による児童生徒性暴力及び体罰等の不適切指導に関する指導を行っています。
今後もこうした取組を継続的に行うことで、不適切指導が行われないよう、学校を指導していきます。
〈終わり〉