形骸化する「経営理念の唱和」。効果を発揮するための3つのステップ。
会社に新たな仲間が加わるこの時期、新入社員の最初の仕事と言っても過言ではないのが、「経営理念」を覚えることではないか。
会社によっては、「経営理念」ではなく、「社是」や「社訓」、「企業理念」など表現の仕方は異なることもあるであろう。
どの会社でも、経営上の方針や信念、行動指針や心構えなど、経営者の思いが「経営理念」として短い文章に凝縮されている。
仰々しい字体、難しい言葉で綴られた「それら」は、立派な額縁に入れられオフィスに掲げられたり、カードサイズにして携帯させるなど、浸透方法もさまざまであろう。
そして、毎日もしくは毎週の朝礼で、大きな声で「唱和」を行っている会社も、まだまだ存在しているだろう。
私が以前勤めていた会社でも、朝礼で経営理念を唱和していたのだが、棒読みであることも多く、「込められた想いや信念をかみしめながら唱和している」といった感じではなかった。
慶應義塾大学大学院教授の高橋俊介氏は、経営理念の唱和についてこう述べている。
「マニュアルの読み合わせなど、言葉で理解し記憶するための効果としては期待できるが、経営理念などの抽象的なものは『文字面として覚える』で止まり、理解して腹落ちするまでには至らない。」
では、どうすれば経営理念を浸透させ、その効果を十分に発揮させることができるのだろうか。
そのためには、次の3つのステップを通して、「自らの判断軸」として捉えることが大切である。
1つ目は、「一言一句に込められた想いや考えを知る。」
言葉の意味や解釈をひも解き、言わんとすることの把握に努める。
ここで大切なのが「行間まで読む」ということだ。
経営理念は短い文章でまとめられ、時には主語などが省略されていることもある。それも踏まえて読み込むことで、込められた想いや考えを知ることができる。
2つ目は、「個人やチームとしての『理想の理解』についてディスカッションをする。」
経営理念などは会社の創業時に合わせて制定されることも多く、中には数十年前から見直されずそのままといったこともある。
「こう理解できたら腹落ちする」といった視点で、従業員同士でディスカッションし、より現状に適した意味合いを生み出していく。
「経営理念そのものを変える」となるとハードルは高いが、既存のものを「理想の理解」として定義付けることは可能である。
3つ目は、「判断に迷ったときの『拠りどころ』となるかを確認する。」
経営理念が「拠りどころ=自らの判断軸」となれば、初めて「唱和する」という行為が意味を成すのではないか。
「経営理念の唱和」という行為は目的ではなく、あくまで理念を浸透させるための手段である。
上述した3つのステップを通して、「自らの判断軸」として捉えることが出来ると、本当の意味での浸透となり、効果を発揮することにつながるであろう。
※上記内容は、2015年4月3日付の琉球新報_論壇に掲載された記事のリメイクです。
*INAZUMAN*