菊花賞
回顧
62.0-61.7-60.4。
過去平均(点線)と比べ段違い。
序盤5Fよりも中盤5Fが速いのは史上初。メイショウタバルが控え、逃げ馬不在で押し合い引き合い。気性難のピースワンデュック(2走前まで逃げ)が途中から抑えきれず先頭。乱ペースの始まり。
中盤は過去平均よりも2秒近いラップ。ここを先行した組は2桁着順。1,000m~2,000mの区間がどれだけ緩むかがテーマだったが、激流になって底力戦。上がり40秒以上が出るほど。
上位5頭は3~4角で2番手以上順位を上げた馬。3歳の未知の距離。最後は底力勝負&バラける前提で、勝負できる位置(5番手以内)にいれること。順位を上げる経験があること。熟知している騎手であること。
今年は前走2,200m戦が台頭。なかでも条件戦組はいずれも後半5Fすべて11秒台+上がり34.5秒以内。ピースワンデュックとへデントールの差は、気性とスピードのリズム(ピースは前半速め型、へデンは後半型)。リビアングラスとドゥレッツァと同じ構図。
逆に、北海道2,000mや小倉2,600mなど12秒前後持続経験だとスピード不足。似たところで、王道中距離戦では後方だったショウナンラプンタやビザンチンドリームが浮上。気性難な分、最後のひと押しが甘くなる。
ダノンデサイルは乱高下の中盤で一定のペースを刻み続けた。内で窮屈になり、外に出すタイミングはなかった。それを差し引いても、ペースに惑わされない典さんの経験値の高さも感じた。4角では先行馬の減速に巻き込まれ不利に。そこで終わらず段違いの急加速をグラフで確認してほしい。
京都外回りの下り坂ラップメモ。レースラップは残り800mから緩やかな加速が始まるが、個別ラップでは4角の直角カーブを曲がるためにW型のラップになる。イメージは加速→減速→加速→維持。アーバンシックやソールオリエンスのようにコーナーで膨れる馬は直線向いた加速力の違いで挽回する。アーバンシックとヘデントールのL2Fのグラフ差がそれ。
予想
未知の距離3,000m。京都外回りを2周する。その間に2度の坂越え。
全体のラップは急→緩→急の山なりラップで、1,000m毎の平均は 61.5-63.7-59.6。2回目の坂の頂上からスパートが始まるL4Fの持続力戦。
1,000m~2,000m区間でどれだけ緩むかが鍵。1F13秒台が連発し、緩んだ23年・18年・17年は上がり勝負。逆に締まった20年・19年は、3冠馬コントレイルが大苦戦し、長距離質のワールドプレミアが制覇。
そしてもう一つ大事なのが通過順の推移。
スパートが始まる3~4角で番手(スピード)を上げて最後まで維持できる持続力。菊花賞に臨む戦歴で、同じような通過順歴からの連対実績があると心強い。
ポイント
1,000m~2000m区間が緩むのか?
過度な緩みは考えづらい
逃げ想定のメイショウタバルは肉切骨断タイプ
結果、中長距離志向の馬が台頭か
戦歴に3~4角で番手を上げて好走した実績がある馬は?
■ 条件
通過順が2つ以上アップ
2勝C以上
ラスト4Fが菊花賞平均47秒以内
■ 該当馬
ダノンデサイル(東京優駿)
ビザンチンドリーム(きさらぎ賞)
コスモキュランダ(セントライト記念・弥生賞)
メリオーレム(西部スポニチ杯)
前哨戦ふりかえり
セントライト記念
前日夜の雨の影響少なく、良馬場ク値 9.5。中山外回りの2,200m戦らしく、向正面から緩やかに加速し続ける中速持続戦。
勝ったアーバンシックは、テンが遅かったものの、中盤に押し上げて好位。L2Fから自慢の加速力とトップスピードを披露し完勝。
コスモキュランダはいつもの捲り。底力が売りの馬が珍しくL1Fで大きく失速。状態の悪さ以上に距離の壁がちらつくが果たして。
エコロヴァルツは、気性の成長を見せて番手追走。ライバルとは馬場と展開利で優位に立っていたものの、後半力の違いを見せられて完敗。
神戸新聞杯
前日からの雨の影響があり稍重。また、阪神改修工事に伴う中京連続開催7週目、Bコース替わり2週目。その割にはクッション値は10.7で、今開催最高だった。
メイショウタバルがやや離した逃げ。序盤のリードを最後まで保った。川田騎手が「馬場の得意不得意が大きく出た」と語るように、適性と底力が求められる展開。勝負どころでは、脚色が逃げ馬と同じになった。
東京優駿
好天が続き、今開催最高のクッション値9.9。1000m通過62.2、前後半 74.8-69.5 の超スロー後傾戦。ただ、ラスト1200mから1秒以上ペースアップし、ゴールまで11秒台前半連発のロングスプリント戦。
ダノンデサイルは、最内4番手からの追走。たしかに前半は恵まれたものの、ラスト2Fの持続力はメンバー最上位。今回、鈍足なメンバーが多いだけに、ダノンデサイルを捉えるのは至難の業。
日本海S・阿賀野川特別
新潟2,200m内回り戦は、後半のロングスパート勝負になりやすく、同質の菊花賞とリンク。今年と去年の個別走破タイム(クッション値)を比較。
ドゥレッツァは、最も中盤が厳しく終いに遜色なし。格を補い、底力を示して菊花賞を制覇。ピースワンデュックは、緩めの馬場でテンのスピードが魅力。へデントールは、脚が遅いものの後半最速で距離延長向き。
隊列想定
メイショウタバルの逃げ想定。幸い、内の先行馬とは距離と初速差があるので、神戸新聞杯のように気分よく進んで行けそう。
ダノンデサイルは絶好枠で、テン実績では1番。ただ、逃げはメイショウに譲るでしょう。その他人気のアーバンシック・コスモキュランダ・へデントールは後方から。初速差はおよそ1秒。後方勢はこの1秒をどうやって埋める?
メイショウタバル
評価:B
初速:12.53/中盤:11.86/持続:94%
逃げ馬候補。にしてはややスタートが遅め。皐月賞のように、内で窮屈に逃げ争いすると、闘争心に火がつき制御不能に。
逆に、神戸新聞杯のように、自分のリズムで外から先頭に立てれば終いに繋げられる。稍重で2F目11.0からの逃げ残りは見事。枠と先行候補との位置は上々。菊花賞は2F 24秒台で進みたい。
能力は上位。毎日杯のパフォーマンスは、単純な時計比較で優秀。過去の名馬に肩を並べられるか。
ダノンデサイル
評価:A
初速:12.72/中盤:12.35/持続:100%
今年のダービー馬。ダービーまでの4戦はすべて加速ラップでゴールする持続力の持ち主。
続くダービーも、自身L5F 56.3 (11.6-11.2-10.9-11.0-11.5) のロングスプリントを披露し、距離が伸びても持続力を証明。
特にL2F (11.0-11.5) は、14番手追込のアーバンシック・ミスタージーティーと同等。テン良し終い良し。メイショウタバル以外が、圧倒的な持続力を持つこの馬を追い抜くシーンが想像しづらい。
コスモキュランダ
評価:C
初速:13.39/中盤:12.08/持続:96%
総合力の高い馬。中盤からゴールまで速いスピードを維持する底力の持ち主。中山小回りで良績があるように、鋭角コーナー力で減速しない。
半面、一気の加速や瞬間的なトップスピードは劣る。ダービーやセントライト記念のように、終盤に 11.0 付近まで踏み込むと、L1Fで一気に減速する。
今回もおそらく捲る競馬。京都外回りはこの馬の特徴「中盤力・コーナー力」とは逆ベクトルで、距離が持つイメージも沸きづらい。ただ、このメンバーならそれを補って余りうる底力がある。
アーバンシック
評価:D
初速:13.39/中盤:12.14/持続:98%
セントライト記念の加速力、京成杯の持続力が示すように、緩い流れをL2Fで突き放すのが得意。
逆に、全体的にハイラップだった皐月賞やロングスプリントのダービーはL1Fでしっかり減速。コスモキュランダとは逆の淡白なタイプ。
ハイレベル皐月賞4着は世代上位。能力と鞍上で馬券内になっても不思議じゃないものの、皐月・ダービーの激戦を見る限り狙いは下げ。個体イメージは緩いソールオリエンス。
ショウナンラプンタ
評価:D
初速:13.42/中盤:12.25/持続:96%
スタートが遅く、加えて気性難。春は結果を残せなかった。夏を越して神戸新聞杯では気性面が成長。それでもメイショウタバルと0.3秒差は決定的。
ビザンチンドリーム
評価:D
初速:13.62/中盤:12.28/持続:94%
スタートが悪い。1F目はいつも13秒台後半。加えて、気性の悪さもあり、抑え込んで最後方が定位置。
その分、ラストの瞬発力で補いたいが、道中の折り合いに力を使ってしまうため、終いが甘くなってしまう。
L1Fの失速率は、日本ダービーのダノンデサイル・神戸新聞杯のメイショウタバルよりも高いです。これでは勝負になりません。気持ちの成長を待ちましょう!
へデントール
評価:C
初速:13.72/中盤:12.23/持続:99%
前走日本海Sの後半の持続力はたしかで、ドゥレッツァを思わせる走り。ただ、彼との違いは中盤の緩さ。格は中盤に現れ、ドゥレッツァ自身は中盤がタイトだった。また、スタートの速さも大きな違い。この馬はさすがに逃げれない。
ピースワンデュック
評価:D
初速:13.10/中盤:12.23/持続:98%
気性難で自分との戦い。前走は馬群に入れて制御効かず、距離延長は不安。臨戦は前走新潟2,200m組。へデントールの日本海Sよりも馬場状態が悪いのに走破タイムが速かった。それでも評価が上回らないのは、折り合いとクラスの差か。
まとめ
◎ダノンデサイル
▲メイショウタバル
注コスモキュランダ
本命はダノンデサイル。
テン1F実績トップの先行力、ダービーで見せたジャスティンミラノを上回るトップスピードとL1Fの持続力、京都2歳Sで敗れた中盤激流経験。京成杯やダービーで感じた「どこまでいっても追いつけない」感覚をここでも。
大きく離れた2・3番手に、超大物が逃げて追いつけずのメイショウタバルと、前哨戦を使った上積みと秘めた底力があるコスモキュランダまで。
強い馬が勝つ菊花賞は精神力、精神力(気性)・格(中盤の速さ)・底力(L1Fの失速量)の良さが必要。それを示してくれた3頭を評価します。
最後までご覧いただきありがとうございました!