難産
思えば人生で一度も「良いスタート」を切れた試しがない。
保育園の入園初日では自分のクラスの帽子の色が気に食わなくて駄々をこねる。
小学校入学初日はランドセルの色が不服で駄々をこねる。
中学校は小学生のメンバーと同じだったから何もなかったものの、中3の頃に『部活中にガムを噛んでいた』という何とも情けない理由で母親の逆鱗に触れる。
「罰として坊主頭にしてこい。するまで帰ってくるな。」
となんともおっかない言葉と共に家を突き出され、びょおびょお泣きながら近所の1000円カットで坊主に仕立て上げられる始末。
亀頭髪のニキビメガネ陰キャ男の爆誕である。
もちろん、高校入学はニキビ亀として入学してしまう。
大学入学はおばさんみたいなパーマを当てた丸メガネだったのでここでも初日は躓く。
日々の中でもそうだ。
朝が弱くて遅刻はするし、なぜか会社のPCが立ち上がらない事だってある。作詞も作曲も書き出しにいつもあり得ないくらい時間がかかってしまう。この記事だってそうだ。意識が足りないだとか、インプットが弱いだとか、全部お前が悪いだとかいうやつがいるが、それは違う。
母曰く、僕は難産だったそうだ。
とにかく子宮から出るのを嫌がり、母も僕もその日に死んでしまう可能性だってあったらしい。
そもそも生まれた時から「良いスタート」なんて切れていないのだ。
不思議と人には恵まれている。
帽子やランドセルの色が嫌で駄々をこねても、ニキビ亀になっても、おばパーマ丸メガネでも、大切な友人や先輩後輩、恋人や家族がいる。「良いスタート」なんて切ってしまっていたら、寂しい人生を送っていたに違いない。
明日は会社に遅刻していこう。
上司には明るく難産であったことを報告しよう。
inari
せんしろう