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尼崎市長時代の実績①「財政再建」

 このnoteでは、私が考えていることやこれまでの実績などについて、お伝えしていこうと思います。まず、第一弾は尼崎市の財政再建についてです。



市長就任直後から 

私の尼崎市長時代の実績を語る上で、最も大きなことは財政再建だと思います。財政改善はあくまで手段であって、目的ではありませんが、私が市長に就任した当時、尼崎市の財政は非常に厳しく、思うような政策も実施できるような状況ではありませんでした。

 尼崎市は、高度経済成長期にまちが大きく発展する過程で、豊かな市税収入や収益事業収入に支えられ、公共施設の整備や市民サービスの充実に努めてきたが、バブル経済崩壊以降、市税収入や収益事業収入などの減少により、慢性的な収支不足をきたし、厳しい財政状況にある。
 平成14年10月に平成15年度から19年度までの5か年の収支を見通したところ、この5か年における収支不足は約800億円が見込まれる状況にあったことから、直面する財政再建団体転落の危機を回避するとともに、収支均衡を図り、財政の構造的問題を年次的に改善するため、平成15年2月に「尼崎市経営再建プログラム」を策定し、財政の健全化の取組を進めている

あまがさき”行財政構造改革推進プラン

 かつての尼崎市は工業都市として栄え、豊かな税収に恵まれ、多くの公共施設などの整備が進められてきましたが、バブル経済の崩壊などにより、それらの投資が大きな負担となり、2000年代前半には財政再建団体に転落する危機も迎えました。そのため、私の前任である白井文市長の時代から財政再建に向けた取組を始めていました。しかし、なかなか収支均衡を果たすことができず、実質的な赤字状態が続いていました。
 2010年に私が市長に就任したあと、その計画をさらに加速させ、様々な取組を実施しました。私が財政再建のために行ったまず最初に行った取組は下記のようなものでした。

  • 市長をはじめとした特別職の給与カット
    市長  
     給与 25%カット(2013年から10%カット)
     ボーナス 55%カット(2013年から25%カット)
    副市長 
     給与 20%カット(2013年から10%カット)
     ボーナス 50%カット(2013年から20%カット)

  • 職員数の削減
    退職した職員の不補充などにより職員数を削減
    2011年 ▲57人  2012年 ▲50人

  • 職員給与の削減
    2012年まで職員のボーナス20%削減などを実施

  • 公共施設の見直し
    労働福祉会館・労働センター等の廃止

それでも改善しない収支状況

あわせて、それでもなお埋まり切らない収支不足に対応するため、「10年改革を続けても財政状況が良くならない理由は何なのか」を、市職員たちとともに、真剣に考え、議論してきました。

その結論として得たのが、

・過去のまちづくりにおいて発行した多額の市債の償還(借金の返済)が財政を圧迫していること
・財政難の中、収支不足を補填するために発行した財源対策の市債(借金)がさらに後年度の財政を圧迫すること

という、負のスパイラルでした。これを乗り越えるために策定したのが「あまがさき「未来へつなぐ」プロジェクト」という行革計画です。これは、結果として私の市長在任期間とほぼ重なる取組となりました。

借金をコントロールする

これまで尼崎市は、収支不足の解消に重きを置いて、収入と支出の将来見通しを公表し、これに基づいて行革の取組を進めてきました。これはこれで重要なことなのですが、一方で財政運営の足かせとなる「将来負担(借金残高)」をコントロールするしくみがないという課題がありました。

そこで、今後の財政運営では、「将来負担(借金残高)に目標を設定」し、借金が目標の範囲内に収まるよう、計画的にハード事業を行うこととしたのです。なお、この「借金」は、市の借金だけでなく、土地開発公社の債務保証をはじめとした、いわゆる「隠れ借金」も含め、市の財政リスクを見える化しながら進行管理を行うこととしました。

あわせて、基金(貯金)が少ないため、不測の事態に対応できる余力がない、というのも尼崎市の大きな課題でした。在任期間の前半は、特に厳しい財政状況であったため、なかなか基金残高に目標を設定することができませんでしたが、収支が改善しつつあるタイミングで、基金残高にも目標を設定し、積極的な積み立てを行うこととしました。

尼崎市の基金と将来負担残高の推移

削減するだけではなく

一方で、これまでから続けてきた、人件費の削減や職員数の適正化、事務事業の見直しといった行革にも取り組んできましたが、それらについては単に「とにかく減らせばいい」という短絡的なものではなく

・多面アンケート(いわゆる360度評価)の導入を含めた、新たな人事評価制度の構築
・アウトソーシングやデジタル化など、業務執行体制の見直しを通じた職員数の適正化
決算査定(施策評価)を通じたPDCAサイクルの中で、事務事業をより効果的なものへ転換

と、「行政の、そして政策の質を高める」といった視点も合わせ持った改革に取り組んできました。

下のグラフは、私の在任期間における人件費の推移です。在任期間の前半は、特に厳しい財政状況に対応するために大きく人件費を抑制しましたが、一方で在任期間後半には新たな行政課題に対応するための職員増などにも取り組んでいます。とはいえ、在任期間を通して見ると、着実に人件費を抑制できているのがお分かりいただけるかと思います。

尼崎市人件費総額の推移

市営バスの民営化と公共施設のマネジメント

また、任期中の特に大きな改革として、2つ、具体的に紹介したいと思います。
 
1つは、「市営バス事業の民営化」です。もともと尼崎市には「尼崎市交通局」があったのですが、市からの支援がないと経営ができないほどの状況にあり、そのあり方が大きな課題になっていました。そこで、市の支援がなくとも、市民にとって必要なバス路線を持続可能な形で維持できるよう、市営バス事業を民間企業へ譲渡したものです。当時は大きな議論となりましたが、最終的に2016年3月、市営バス事業の民営化を実現することができました。
 
もう1つは、「公共施設マネジメント」です。尼崎市の公共施設は、その大半が老朽化しておりますが、今後の人口減少社会を見据えると、そのすべてを保有し、更新し続けることはできません。そこで、
・廃止・集約・複合化する「再編」
・適切かつ計画的に保全し、長寿命化を目指す「予防保全」
・管理運営コストの削減やサービスの向上を目指す「効果的・効率的な運営」

という3つの方針から成る「公共施設マネジメント」に取り組みました。尼崎市では、こういった考え方に基づいて、既存施設を集約して、旧支所と地区会館を合築するとともに、そこに学びの拠点(公民館)の機能を付加して、新たな生涯学習プラザの整備を行いました。

新たな施設整備も伴っていますので、財政負担が気になるところではありますが、そこは施設集約の中で生まれた余剰地を売却して財源に充てるなど、後年度の財政運営にも十分に配慮しながら新たな施設整備を進めています。これも、尼崎市の公共施設マネジメントの大きな特徴です。
 
こういった、さまざまな視点から成る財政改革の取組を、私の尼崎市長在任3期12年の間、市民の皆さん、職員の皆さんと対話を繰り返しながら進めてきました。

収支均衡の達成 

その結果、尼崎市は私が市長就任時に苦しんでいた慢性的な赤字体質から脱却し、実質的に収支が均衡した予算を編成できるようになったのです。

尼崎市の実質的な収支不足の推移
※実質的な収支不足:収支不足から先行会計繰出金及びコロナ対策に係る財政調整基金の活用分を除いたもの

そして、尼崎市の将来負担…すなわち借金の金額は、就任した2010年度の3,090億円から、退任した2022年度の1,950億円と、1,000億円以上も減少しました。合わせて、基金…すなわち貯金の金額は、就任した2010年度の58億円から、退任した2022年度の369億円と、実に300億円以上も増加

借金に依存し、その返済で首が回らなくなっていた尼崎市の財政状況は、この3期12年の間に劇的に改善しました。そして今、尼崎市はこの改善した財政状況の中で、新たなまちづくりを進めることができています。
 
兵庫県と尼崎市には、県と市の財政構造の違いがあることは、もちろん理解しています。しかし、兵庫県における財政状況の本質的な課題は、かつて尼崎市が直面していたものと同じです。
 
兵庫のみらいを、ともにつくるために。私は、尼崎市での実績を活かし、対話と信頼による行財政改革を進めます。

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