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出会って2年、はじめて名前を呼んだ日。
「あの・・・、名前の呼び方を決めませんか?」
2年間通っている美容室で、僕は勇気を出して言ってみました。
本来、名前の呼び方は、当人同士の距離感とともに自然と決まるものなのですが、僕は名前の呼び方を自然と変えるのが得意ではありません。
「名字にさん付け」なのか、「下の名前にさん付け」なのか、「名字と下の名前」をミックスした愛称なのか、それとも呼び捨てなのか。
僕は、こういった「呼び方問題」にずいぶんと悩まされてきました。
はじめは、みんなで名字呼びしていたのに、ある一定の期間を過ぎると、その人のことを下の名前で呼び始める人が少しずつ増えてきます。
そのタイミングで、僕も下の名前呼びに移行すればいいのですが、その人に許可されてもいないのに、いきなり下の名前呼びするのは気が引けます。
とはいえ、1人だけ名字呼びしていると、常に距離をとっている感じになるし、下の名前呼びが定着するにつれ、「えっ、それってだれのこと?」と言われる回数も多くなります。
悩みに悩んだ僕は、最終手段をとります。
それなら、呼ばなければいい。
最近では、名前を呼ばないことが上手くなって、「話の流れに沿って、2人称を決める」という技も使うようになりました。
例えば、出身地の話をしているときは、「茨城出身としては、どうですか?」と、相手の出身地を二人称に使う。
趣味の話をしているときは、「K-POP好きとしては、どうですか?」と、相手の趣味を二人称に使う。
そうやって、名前を呼ぶ機会が訪れそうになれば、何度も何度もそれで逃げてきました。
しかし、それでは相手との距離が縮まりません。
どんなに深い話をしても、名前を呼ばないなら、相手との距離は縮まらないし、逃げの呼び方を考えなきゃいけないので、ちょっとしたストレスにもなります。
相手と仲良くなりたい気持ちが自分の中にあるなら、ちゃんと相手の名前を呼ぶことにしよう。
そう心に決めた僕は、美容師の方とアシスタントの方の呼び方を、しっかりと決めることにしました。
店員と客という関係は絶妙で、親しくなればなるほど、なんて呼んでいいかが分からなくなります。
こんなことを聞くのは、少し野暮ったいとも思いましたが、二人は意外な反応をしてくれました。
「お客さんからは、下の名前で呼ばれているかなー。名字と下の名前のミックスで呼んでもいいよー」
「スタッフからは、名字で呼ばれているので、お客さんからは下の名前にちゃん付けで呼ばれたいです!」
意外にも、二人とも「こう呼ばれたい!」という希望があって、その希望を僕にぶつけてくれました。
できたら、二人のリクエスト通りに呼ぶのがベストですが、周りの人が認識できない呼び方で呼ぶのは混乱を招くので、結局、二人が希望していない呼び方で呼ぶことに決めました。
おかげで、2年間のもやもやが、すっきり溶けていきました。
不思議と、以前よりも二人のことを近く感じるようにもなりました。
こんな気持ちが良いなら、もっと早く勇気を出せばよかった。
名前を呼ぶことに2年もかけるなんて、バカバカしいですね(笑)。
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