語源あそび⑥:え!?シュークリーム食べた!?
突然だがシュークリームというお菓子をご存じだろうか。ってみんな知ってると思うんだけど、福沢諭吉が読者をサルと思えと言ったと言う伝説に基づいて一応問うてみた。どうでもいいけど結局京大に来てしまったのでお布施的何かになってしまった慶應と早稲田の入学金各20万円は有効活用してもらえたんだろうか。払ってくれたてておやに感謝。
さて2文目からいきなり激しく脱線したけれども、シュークリームとは英語ではcream puffとか言ったりする洋菓子である。焼成された薄い生地の中にクリームが入ったもので美味。100円ローソンで売ってるヤマザキのやつが一番コスパに優れる(※2021年現在。筆者調べ)。
このシュークリームの語源はフランス語のchou à la crèmeで、「クリーム入りキャベツ」のような意味。見た目がキャベツっぽいから付いた名らしい。
キャベツのことをフランス語でchouというわけだけど、これはラテン語のcaulisに由来する。これが名前にモロに残ってるキャベツの変種を皆さんはご存知かな?
…正解はcauliflowerカリフラワーで、flowerの部分は花っぽいから、もしくは花の部分を食べるから付いたものだろう。
コールスロー(coleslaw)というアメリカンなサラダがあるが、そのコール”cole”も語源はcaulisに求められる。ラテン語のcaulisがオランダ語のkoolになり、それが同じくオランダ語のsla(salade「サラダ」の省略形)と合体したのがkoolsla(コゥルスロー)である。アメリカ料理じゃなくてもとはオランダ料理なのだ。
オランダ語のkoolslaと英語のcoleslawは、異なる発音体系を持つ二言語の間で音写が行われたとは思えないほど再現度が高く、音声学徒の間で話題だと言う(2021年現在。筆者調べ)。
ちなみに日本語の「サラダ」もオランダ語の”salade”も本をただせばラテン語の”sal”「塩」が語源である。つまりコールスローは「キャベツ塩」となり、急に居酒屋の食べ放題メニューみたいな印象になる。
さっきから当たり前のように「キャベツ」と言っているが、カタカナ語を避ければ確か「甘藍」とか「玉菜」とか言ったはずだ。「キャベツ」は英語の”cabbage”の音写であり、先ほどの"coleslaw"と比べるとややお粗末な音写である。
"cabbage"の語源は古い北フランスの言葉で「頭」を表す"caboche"である。アクセサリー好きである私のカボシュには「カボシュ」という言葉を見ただけで別の単語が浮かぶ…それは「カボションカット」
宝石を丸くカットする技法のことだが、調べてみるとこれも中期フランス語で「頭」を意味するcabochonが語源となっているらしい。冴えてるぞ、わたし。
私の冴えたカボションの回転は止まることを知らない。柑橘偏愛者である私の耳には「カボシュ」と「かぼす」はよく似て聞こえる…ひょっとしてフランス語と同じくロマンス語であるポルトガル語とつながりあるんじゃないか?例えば「ポン酢」を知らぬ日本人はいないと思うんだけれども、これはオランダ語の"pons「柑橘ジュース」"が18世紀ごろに日本語に入ったものとされる。大分県名産のかぼすも、ひょっとしてポルトガルあたりから持ち込まれたものだったりして…そのまん丸い形が頭みたいだから、というような語源があるのでは…?
と思って調べてみたらこれは完全に見当はずれで、昔その皮をいぶして虫除けにしたため「蚊いぶし」が訛って「かぼす」となったという説が有力だとか。調子乗ってすいませんでした。
なにはともあれ、英語でシュークリームっていうと靴磨きクリーム(shoe cream)だと思われるので気を付けてくれよな!