東北全県鈍行一人旅、女優からの転落劇
7月5日(水)
宿で起きて、ロビーで待つも、Dに会えない。連絡先も聞いていないし、もう会えないのかと悲観的になるが、一歩進んで探したら、いた!
海の幸満載な虹色市場へ昼ごはんに行く。
これから1週間、弘前の路上で書道をするDと駅で別れ、弘南鉄道(パス使えず)でりんご畑の風景の中、約30分。
隣の女子二人はルーマニアから日本を旅中。日光最高、と言うので大河ドラマ家康の話をしたら流暢に「マツモトジュン?」高校の時にルーマニアで「花より男子」を観ていたそうな。
黒石市到着。弟と仕事をご一緒した役場のNさんが、宿に来て下さる。
名刺の表は役場、裏は町の振興組合。
まずは江戸時代からの木製アーケード「こみせ」の最初にある鳴海酒造へ。江戸からの建物と、素晴らしい庭園。Nさんはこの庭を見ながら新酒を飲んだり町おこしアイデアを語ったりするという。時を重ねた究極のカフェ、と思う。
店の奥さまに「見れば見るほど戸田恵梨香」と言われ、町に女優がやってきたということで!と調子に乗る。
Nさんが庭園会議で提案したという、寿司米を使ったお酒を2本購入。他の店でも餅など買ってしまい、昨日までの「リュックはもういっぱい&重いから荷物増やさない」方針が決壊、限界まで詰める&筋トレとして運ぶ、に変更。
この日は年に一度のお祭りで屋台が並び、Nさんの知り合いに多数会う。「説明が面倒だから『愛人です』でOK」と提案(笑)。故郷が大好きなNさんにとって、役場の仕事も新興組合の仕事も同じく、町を良くする手段。定時で帰れて責任が軽い仕事、ととらえる公務員も多い中、その価値観に共感、安心する。
今回の旅にあたり、ゲバラが旅を経てチェ・ゲバラになった(使命を見つけた)ように私も役割を見つけられたら、と言ったらNさん「革命ですか?」
「言うことが弟さんとそっくり」と言われ驚く。外見も中身も、1ミリも似ていないと思ってきた。
幼い頃から、厳しい母に対しても主張できて逆に可愛がられ(私はひたすら落ち込んで遠ざかり)、感情が安定して仕事も趣味も家庭も卒なくこなす彼は、判断力がひどくて感情も職業も不安定な私(と父親)に、長い間冷たかった。英語力だけは認めてくれて
・・・あれ?2年前に「青森の町で外国人を誘致する仕事に関わらないか」って言われたの、この町のことか!その時はピンと来なかったけど、こうして町や人々に愛着が湧き始めると、話はぜんぜん違う。
ただの観光のはずが視察みたいになったのは、ツバル(温暖化で沈むと言われている国)で首相インタビューや学校で授業をした時に似ている。
仕事として今後この町に関わる確率、10%?運と縁にお任せ。
結局Nさんに6時間もお付き合い頂き、弟が開業に関わった宿「蓬春」で眠る。
7月6日(木)
4時に目が覚め、町歩き。立派なお寺がたくさん。虹を久々に見る。おー。
元女郎屋の宿も通る。先月、「前世は遊女のまとめ役だったと『視える人』に言われた」と言ったら居合わせた友人4人中3人が「私も前世遊女らしい」で、騒ぎになった(笑)。
5時、豆腐屋さんで豆乳を買い、那須・こと葉のみっちゃんがいつも言ってる「豆腐屋さんがあるのはいい町」をお伝えする。
黒石神明宮で出会った年配の方と、宿までご一緒する。この町で生まれ育ち、人口が減っていくのが悲しいとおっしゃる。Nさんに4人お子さんがいるのも、少子化対策かもしれない。那須の同じ問題に、最近関わっている。
電車で弘前に戻る。連絡先知らないけどD、駅に来て!と強く強く念じる。こういう能力をぜひ養ってゆくゆくは、ガラケーさえ不要になりたい。
が!遭遇した相手は!
待合スペースの横長テーブルに座ったら、隣のPC男性が舌打ちしてにらむ。「仕事してんだ、荷物ドスンと置くなこの無神経」。続いて「何ニヤニヤしてんだ、なめてんのか」
あまりの展開に私、思わず笑ってしまったらしい。
「いや、どうしたら許してもらえるのかと思って」と言うと
「このくそババア」。
!!!昨日の女優扱いからくそババアへの、転落ぶりすごい。小公女セーラ並み?以前なら大ショックで何時間も落ち込んでいたはずなのに、あまり沈んでいない。「ご機嫌治れ」ビームを至近距離から送りつつ、お釈迦様の言葉を思い出す。「相手からの悪口を受け取らなかったら、それは相手に返る」。
彼に、くそババアが返品されました。最近自分を好きになって誰からも何からも守る練習をしている、その成果が出てうれしいです。ありがとうくそジジイ!
先月は、意地悪をされたその日に、愛着のあったバイトを辞めた。
大事な人(自分)を、粗末な場所に置いてはいけない。
さて、次に向かうのは仁賀保市。芭蕉関連ということで弟に紹介された、見知らぬ町。探しても「開業予定」の記事ばかり出てきて、営業しているかもわからず。盛岡の宿からメールしてもらい、携帯に返事が来て、予約が取れた。那須に帰るのはまだだよ、と旅の神が言う。
乗った電車が急行だった→急行料金を支払って乗り直し→駅到着、13時の予定が17時に。うーむ、仕方なし。秋田駅で3時間の電車待ち。秋田出張中の弟に連絡するが、カタギの方はそりゃあ仕事されてます。
芸能伝承館へ。1階に竿燈や提灯の展示。係の年配の方と話す。祭りの前日の競技会に向けて、毎日ジムで鍛えている。祭りの前日にある競技会で優勝すると祭りの先頭で演技ができる。手も額も壊れていて、祭りは楽しみではなく戦い。武士を感じた。
この方、弟が秋田にいた時に竿燈の手ほどきをしてくれた方だったと後で知る。
隣の金子家住宅の若いスタッフにもインタビュー。この地区に生まれても、竿燈を始めるのはクラスで5人くらい。7月になると夜に外で練習が始まるが、最近はうるさいという苦情も来るという。
この地に生まれることの意味。
伝承館での事件は、3階無人の「和太鼓体験コーナー」にハマったこと。ちょっとのつもりが30分も、画面に合わせて叩いていた。
家に何セットもあるドラムは触ることないのに。
忘れていた体験:10年ほど前、八丈太鼓の個人指導を受けていた。師匠は電気ガス水道携帯のない山の上の館に住む、ストイック坊主頭30代男子。私は、何か楽器ができれば、という軽い気持ちだったと思う。「恋愛感情は持たないこと、持っても表さないこと。」を先に言い渡された。
!!師匠、恋愛感情隠すの、プロです(涙)。
東京の師匠の家で合宿したり友人の結婚式で2人で叩いたり。ヴィパッサナ瞑想に共に参加した後、「師弟関係は親子より強い」と言っていたのに彼は、出家のために旅立った。
以上、回想シーン。和太鼓、やってみようかな。
梅雨なのに毎日晴れてありがたいけど、暑い。重いリュックで駅に向かい、「旅中いつでも電話して」という仙台deliciousのS君の言葉を信じて電話してみる。1秒で出てくれた。店に来たフランス人の話、外国人とは言葉より心を開くこと、本当にそう。
伊香保市の象潟(きさかた)駅到着。芭蕉が寄った最北の地、らしい。碑など見ていたら、宿からお迎え到着。東京育ちの男子2人が、理想の田舎、で開いたゲストハウス麓〼(ろくます)。
ヒッチハイクなど3年間旅をしたというR君(もう一人は出張中)に案内され、足だけ海水浴、今年初海。夏休みといえば気仙沼ー理想の田舎ーだったので、海なし栃木ではいつだって、海欠乏症。
宿のある集落、景色と空気がすばらしい。加えて、学校はないけど地域の人で50年も運動会をしているという地域性。
今日のゲスト、医療系の同僚である登山女子2人に会う。なんと、Rさんは大田原の大学(私が辞めたバイト先そば)出身、Sさんも研修で住んだそう。一気に盛り上がり、3人で川と夕日を探しに行く。「コミュ力すごい」と言われる。那須、栗駒、白馬、彼女たちから出てくるおすすめ山情報どれも「そこ住んでました」(+ユタ)で、「名山のそばに住んでて登らない人」の称号をもらう。
今年の私の大きな目標は「女装して歌う」と「登山を趣味に」。女装の方は先日のライブで達成し、今は登山目指してジムに通い始めた。その後押しをするように、夕食中も登山プレゼンを繰り出してくださる。
山の上での楽しみ(彼女はビール)があるといい、という提案に宿主R君「歌うのは?」→採用!
仕事の仕方に疑問があるという彼女に、私からは自由生活をプレゼン。
私が登山をしたり、彼女が会社を辞めたら、勝負あり!
宿のR君が元サッカー部だったせいで(笑)この夜は私の「サッカー部男子の謎」で盛り上がる。ここには書けないような深い考察が、登山チームが早寝する22時まで続いた。
その後、うっかりやっちまった。Dで練習した「話したいけど眠くなったら言って」を使わず、R君が眠そうだと勝手に判断して部屋に引っ込んだ。もっと深掘りしたかった。自分、ごめん。次はふんばる。