趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.212 読書 澤村伊智「ずうのめ人形」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 澤村伊智さんの「ずうのめ人形」についてです。
「ぼぎわんが、来る」に続いての比嘉姉妹シリーズ第二弾。
「ぼぎわん」は怖くて面白くて、一気に澤村伊智さんのファンになりこのシリーズを読み始めました。
霊能力者の姉妹が出てきます。
今回は「リング」のように、呪いが伝播する系のホラー。
それも読んだら4日後に死んでしまう小説の話。
その呪いにかかった編集者と、小説の内容が交互に進んでいく構成。
前回のモンスター系とはまた違ったホラー(伝播する呪い)のジャンルで、
澤村伊智さんのホラーの幅広さや構成力の凄さに舌を巻きます。
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物語は、オカルト雑誌で働く主人公。
その雑誌で締切が来ても連絡がつかないライターさんの自宅へ後輩と共に行く。
部屋に入るとそのライターは不審死をしており、後輩は勝手に残された原稿を持って帰った。
その後後輩から何度も原稿を読むように言われてコピーしたその原稿を読み始める。
その小説は中学生の女の子が主人公で、暴力を振るう父親から逃げて母と弟と幼い妹と暮らしている。
学校でもリングの貞子と呼ばれいじめられていて、唯一図書館でホラー小説を読むのが、救いだった。
図書館の交換日記から同じホラー小説が好きな子と、交換日記上で交流を始める。
そして現実の編集者の話に戻る。原稿を読めといった後輩が来なくなり、自宅に行くと彼の両親と共に亡くなっていた。
そして、黒髪の喪服を着た日本人形が遠くに立っていることに気が付く。
次第に時間が経つにつれ、その人形は近づいてくる。ただし誰にも見えない。
ライターの死、後輩の死、不気味な人形、変な原稿
「ぼぎわん」に出てきた先輩ライターとその恋人の霊能力者に、その原稿と人形について相談し、一緒に謎を調べていくと
その小説を読んだ4日後にずうのめ人形に呪い殺されることがわかる。
タイムリミットは数日。小説は実はノンフィクションのようで、なぜならその登場人物に霊能力者の下の姉(上の姉は「ぼぎわん」に出てくる)が出てくるのだった。
そしてその姉は呪い殺されている。
自分の姉の死に関することなので、先輩ライターも霊能力者も一緒に、その小説を読むことに。話の中にヒントがあるかもしれない。
けどこれで三人とも呪い殺されることに。
散々調べてやっと物語の中の一人に出会えることに。知的障害を持った彼を訪ねるとテレビにある女性が映り必用に恐れ慄く。
物語の中の主人公の彼女がテレビに出ていた・・・・。
呪いを解くには彼女に会わなくては・・・。
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もう澤村伊智さん、本当にスラスラとグイグイと読ませる筆力がある。
もう京極夏彦か宮部みゆきかキングかジェフリーディーバーか。
ホラー界にこんなに面白い作家がいたのですね。
自分がまだ知らなかっただけだと思います。
そしてただ面白いだけでなく本当に構成力が半端ないのです。
今回は現実と小説の中を交互に描いていく。
編集者が呪いの小説を読んでしまう話と、いじめられた少女がホラー小説が好きになり交換日記を通して同じホラー好きの小学生女の子と交流していく話。
最初はあまり関係なさそうですが、少女が学校で霊能力者の姉に会っていたり、小学生の女の子からずうのめ人形の話を聞いたり、次第に2つの話が重なっていくところがお見事。
前作の「ぼぎわん」も三人の語り部からなっていて、語り部が変わると人物の印象が180度変わるところが見事でした。
今回も同じように、その人間から見た世界と、他の人から見た世界が違う様子が描かれています。
そして何と言ってもちゃんと怖いw
日本の伝統的なホラーをしっかりと継承をしている。
伝播していく恐怖。
ビデオを見たら貞子が来て死んでしまうように。
ぼぎわん、ずうのめのように語感からの怖さも。
そして幽霊や化物が怖いだけでなく、お約束の人間が一番怖いw
この比嘉姉妹シリーズ、5巻出ているので今後も楽しみです。
いろいろなホラーを見せて欲しいです。
今日はここまで。
孤独は理解できた。ホラーやオカルトは肩身が狭い。容認してくれる人、放置してくれる人はいるけど、理解してくれる人は今でも、決して多くはない。
いわゆる「いい人」でも、ホラーは不健全だ、異常だ、有害だなどと、びっくりするほとベタな偏見を持っていたりする。
/P.71「ずうのめ人形」より