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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.068 読書 月村了衛 「欺す衆生」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 月村了衛さんの 「欺す衆生」についてです。


月村了衛さんは「機龍警察」シリーズで近未来警察小説、「土漠の花」で自衛隊が活躍する戦争小説、そして今作で詐欺師の犯罪小説。

もう圧倒的な筆力で濃密な世界観を描かせたら間違いがない月村さん。

どんどん人を騙す詐欺のダークな世界へハマっていく。

そして実際にあった豊田商事事件をモデルに、

あらゆる詐欺犯罪「原野」「水資源」「和牛」「上場会社」「海外ファンド」「オレオレ詐欺」など、次から次へと出てくる。

こんなに犯罪者がいっぱいの世界なのに、どんどん立派な詐欺師として成長していく主人公が段々応援したくなる。

まあとにかくおいしい話には乗らないようにしなくては。



物語は、戦後最大の組織詐欺事件を起こした横田商事(豊田商事がモデル)。

そこの末端の社員だった主人公隠岐は目の前で横田商事の会長をヤクザに殺される所を目撃し、もちろん会社も潰れてしまった。

元横田商事だったことを隠しなんとか平凡な会社で過ごす主人公だったが、

ある日元横田商事の同僚の因幡が声をかけてきた。

二人で会社を作りまた詐欺をしようと。

嫌々ながら再び悪事に手を染めるが、最初は原野商法。

次第に詐欺の才能に開花させて、二人は時代の寵児になっていく。

二人の成功を嗅ぎつけて、ヤクザや元横田商事の社員が集まってくる。

犯罪集団の彼らはより大きな犯罪まで手を出すようになる。



豊田商事事件は高校生の頃にテレビの前で会長が殺されたショッキングなニュースを覚えている。

この小説はそこの社員だった人間がのし上がっていく物語で

単に架空の犯罪小説だけでなく、実際にあった事件も混じって、妙なリアリティがある。

犯罪も「水資源」なんてつい最近までニュースで聞いたことがある話だ。

詐欺師としての成長物語、二人の男の共犯性、犯罪のリアリティが重なって、この小説を圧倒的なドライブ感をもたらし、まさに徹夜必至の読んだら止まらなくなる作品でした。

誘拐や殺人や銀行強盗や偽札の犯罪小説はありますが、詐欺の小説ではこれは日本を代表する作品なのでは。

さてこういう犯罪小説は魅力的で面白いが、主人公はまた俺は一線を超えていない、と自問していく。

ただその線を誰が決めるのか、その目測が狂っていないか。

俺はまだ超えていないと。

どんどん犯罪にハマっていき、

人間の欲望は絶対止まらない。一線はどんどん後退して行く。

人を騙して、自分まで騙すのは簡単だと因幡は言い、

主人公は隠岐はいつの間にか自分まで騙すように。

到底真似できない世界ですし、ハマったら絶対抜け出せない世界。

そういう世界があるということだけ知っておこう。

漫画「闇金ウシジマくん」も大好きでこれも犯罪を知るために勉強になる。

今日はここまで。





業界人の習性として、偶然は容易に信じない。
むしろ偶然を装って何かを仕掛けるのが業界人というものだ。
/P.243「欺す衆生」より