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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.260 読書 原田マハ「一分間だけ」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 原田マハさんの「一分間だけ」についてです。


犬好きには堪らない号泣モノ。

大好きな原田マハさんの初期の作品。

もちろん今はアート系小説の第一人者ですが、アート以外で初期でも十分に読みやすく面白い。

それもまだ2冊目なのに、物語の構成力と引き込む力は半端ない。

今原田さんは34冊読んで大体メジャーどころ「カフーを待ちわびて」「本日は、お日柄もよく」「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」などは読んでしまい、

読んでいないものとして、過去の作品を読んでいます。

その中の一つ。

なんだか御涙頂戴ものの予感がして、ペットとの話って映画でも小説でも
やはり亡くなって悲しい話が多い。

読むのが辛いだろうなと思い躊躇していました。

読んでみたら、お話は単なる御涙頂戴の感動モノ形ではなく、割とリアルというか現代風に主人公の仕事も恋愛も描かれていて、あれ?割と平常心で読めて読みやすいと思いました。

まあそれでも最後の方がティッシュ片手に嗚咽しながらでしたが。



物語は、主人公は女性誌の雑誌編集部で働く女性。

アシスタントは編集部のムードメーカー、編集長は雑誌を最先端モード誌に成長させた凄腕。

あるコピーライターと知り合い、やがて二人は同棲するようになりますが、
主人公の彼女は忙しくほとんど家にいません。

取材先のペットショップで殺処分されそうなゴールデンレトリバーを引き取ります。

大型犬と一緒に住めて、散歩のできる良い場所はなかなか見つかりません。

犬を優先して調布の一軒家に落ち着きました。

近所のドックランでミニチュアダックスを飼っている女性と知り合い、コーピーライターの彼とも一緒に食事をする仲に。

彼はダックスの女性の悩みを聞いているといつの間に彼女のことが好きになりました。

そして主人公は朝早く出て、夜帰ってきて、彼は家にいてゴールデンレトリバーの散歩をする、すれ違い。

ついに彼は家を出てしまいました。

主人公は一人で犬の世話をすることに。

朝早く起きて散歩して、一生懸命仕事を終わらせて、夜10時までには帰宅。

編集部で徹夜する時は、ペットホテルに預けたり、アシスタントに鍵を渡して面倒を見てもらったり、

雑誌の特集でセレブとペットの特集を組んだり意欲的に仕事をします。

ある日犬の変調に気がついて、動物病院に診断してもらうと既にガンに侵されて手の打ちようがないと宣告されます。

それから精一杯犬との時間を過ごしました。

しかし看病に疲れ仕事も一杯一杯です。

そこで最後に頼ったのは別れた彼でした。

犬の最後を彼に看取ってもらいました。

犬が大好きだった散歩道で1分間だけ抱き合ったあと、それぞれの道へ。



もう最後は泣きっぱなしでした。

でも、この作品ワンちゃんが可愛くてそしてワンちゃんが亡くなってしまうという安直な感動系ではありません。

現代を生きる女性の仕事の話、男女の恋愛、そしてペットとの生活、ペットビジネスの社会的な問題など。

テーマが現代的なんです。

原田マハさんは大好きでたくさん読んでいますが、アート系以外にこういう現代の女性が抱える人生や仕事や恋愛などをよく書かれています。

お酒を作ったり、政治家だったり、スピーチライターだったり、旅企画をする人だったり、

今回は雑誌編集者の仕事の話。

自分は雑誌やWebメディアのカメラマンなので、よく編集者の仕事は見ていのでとても親近感が湧きました。

まあコンプライアンスを重視する今の時代は、この物語のように朝早く夜遅く徹夜でというのは少なくなりましたが、それでも締切前などはやはり大変なお仕事です。

恋もペットとも一緒にバリバリ仕事するのは昔の時代は難しかったでしょうね。

今は徹夜はないので、逆に癒しを求めて、ペットや恋もできるかもしれませんね。

ただ小型犬なら部屋で飼えますが、大型犬は散歩があるので、暑くても寒くても雨でも大変です。

でもほんとに犬の無償の愛はかけがえないモノです。

会話がなくても、撫でて、匂いを嗅いで、一緒に昼寝して、散歩して。

犬を飼っている人、飼っていた人、飼っていない人にも、犬との生活について考えさせられるお話です。

今日はここまで。



「何それ。医者なんでしょ。なんとかしてくれたっていいじゃない。こんなに痛そうなのに、見てられない。楽にしてあげられないの。楽にしてあげてください。早く」
先生の目が、急に鋭くなった。
「安楽死させたいんですか。あなたは、この子を」
その一言に凍りついた。
「この子を楽にしたいんじゃない。あなたは、自分が楽になりたいだけなんだ」
/P.209「一分間だけ 」より